研磨をすることにより艶やかな銀色の輝きを放つ「ヘマタイト(Hematite)」。
一見シルバー?と見紛うこともあるこの不透明石は、宝飾品以外にも工業用としても用いられるポピュラーな素材。
宝飾品としてのヘマタイトは、見惚れてしまうほどの光沢の美しさが魅力。
ブラックからグレー、レッドブラウンといったシックなカラーリングが、光沢の美しさをより引き立てています。
今回はヘマタイトの基礎知識についてお届け。
ヘマタイトの意味、和名、石言葉は?
ヘマタイトの意味と和名
宝石の多くは磨かれることでその美しさを引き出されます。
ヘマタイトもそのひとつであり、「研磨」が欠かせません。
その研磨の工程で、ヘマタイトのユニークな部分を見ることができます。
それは、研磨の際に真っ赤な粉が生じること。
この特性からギリシャ語で血を意味する「hemo」と、石を表す「ite」が合わさって「Hematite」となりました。
モース硬度は5から6、三方晶系の酸化鉱物。
劈開はなし。
和名は「赤鉄鉱(せきてっこう)」。
金属光沢の強いものは「鏡鉄鋼(きょうてっこう)」と呼ばれます。
また、原石が腎臓に似た形で産出することから、別名「腎臓石」とも呼ばれています。
ハリー・ポッターにもベゾアール石という、しなびた腎臓に似た解毒効果のある石が登場しますが、石の形状を臓器で表現するのは面白いですよね。
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ヘマタイトの石言葉
ヘマタイトの石言葉は「密かに燃える思い」。
研磨や切断の際に生じる赤色を愛の情熱に見立てているなんて、とても素敵ですよね。
秘めた熱い感情を心に宿す人のお守りになってくれることでしょう。
なぜ「赤鉄鉱」?ブラック・ダイヤモンドと呼ばれるのは?
「軍神マルスの石」ヘマタイト
地球上でもありふれた鉱物であるヘマタイトは、主に製鉄原料として採掘されています。
主成分は酸化鉄。
錆びた鉄の色を思い浮かべてください。
多くの方が黒や茶、赤と答えるのではないでしょうか。
JISの色彩規格でも「錆色」は、鉄錆のような赤茶色を指すとされています。
ヘマタイトは鉄の含有率が他の製鉄原料と比べても高いことでも知られ、粉状に、またプレート状に薄く研磨することでも赤色を発色します。
この「赤」が勝利を導く「軍神マルスの石」として崇められていた古代ローマ時代。
少しでも負傷を避けるために、ローマ神話の戦いの神であるマルスの加護を得ているヘマタイトを体に擦り付け、戦士たちは戦場に赴いたと伝えられています。
また、血を連想される色から止血効果も期待され身につけられていたとも。
ブラック・ダイヤモンドと呼ばれるヘマタイト
ここまで赤のイメージが強いヘマタイト。
けれど実際私たちが手に取るヘマタイトは、シルバーみたいな輝きのものや光沢の強いブラック。
多くはカボションやカメオ、ビーズにカットされますが、ローズカットやラウンドブリリアントなど、面をつけてカットされることも。
古代ローマ、エジプト時代から装飾品として用いられてきたことはもちろん、モーニングジュエリーが流行した19世紀。
黒い宝石としてジェットジュエリーが人気を博す傍ら、ヘマタイトジュエリーもまた多く生み出されたのです。
面をつけたカットの輝きの良さは、ブラック・ダイヤモンド(または黒ダイヤ)とも称されます。
しかしこれはフォルスネーム。
見た目が似ていてもヘマタイトとブラック・ダイヤモンドはまったく異なる鉱物。
誤って購入しないように気をつけて。
取り扱い時の注意点は?
硬度が低く、傷がつきやすいため取り扱いには充分に注意しましょう。
着用時はもちろん、保管時にも他の宝石や金属と触れ合わないように個別に保管を。
また、酸化鉄という性質上水分に弱い特性を持っています。
使用後は水分が残らないよう、柔らかい布での乾拭きを忘れずに。
POINT
- 研磨、切断の際に出る赤い粉が名前の由来となったヘマタイト
- 古代ローマ時代には身を守る「軍神マルスの石」と信じられていた
- 水分を避け、使用後は乾拭きをしてから保管
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。