「クンツァイト(kunzite)」。
あまり聞き慣れない宝石かもしれませんが、宝石好きの方やコレクターから熱烈な支持を集めている宝石のひとつ。
1902年に発見されてからわずか100年あまりの比較的新しい宝石でもあります。
今回はライラックピンクが美しいクンツァイトの基礎知識についてお届けします。
クンツァイトの意味、和名、石言葉は?
クンツァイトの意味と和名
宝石の名前の多くは、見た目から名付けられたものと、発見者にちなんで名付けられたものに分類できます。
クンツァイトは後者で、鉱物学者の「George Frederick Kunz(ジョージ・フレデリック・クンツ)」から。
アメリカのカリフォルニアで発見されたクンツァイトとアメリカ人であったクンツ。
なんだか縁を感じますね。
別名「カリフォルニア・アイリス」とも呼ばれます。
モース硬度は6半から7、単斜晶系の珪酸塩鉱物。
劈開は二方向。
カットの際には細心の注意を払わなければならない宝石で、角度を違えてしまうと劈開方向に沿ってナイフのように細長く裂けてしまうことも。
クンツァイトの和名は「リチア輝石(りちあきせき)」。
スポジュメン(またはスポージュメン)という鉱物の、淡い紫から紫がかったピンクまでをクンツァイトと呼びます。
この儚げな色はマンガン由来。
強い多色性を持っているため、その魅力を引き出すためにファセットカットが施されます。
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クンツァイトの石言葉
クンツァイトの石言葉は「恋人到来」。
柔らかい色味は、穏やかな愛情を約束してくれるかのようですね。
クンツァイトの逸話と希少性
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クンツ博士が発見したクンツァイト。
実はこのクンツ博士、ただの鉱物学者ではなくティファニーと深い関係を持ち、ティファニーを世界有数のジュエラーにまで押し上げた立役者の一人なのです。
ティファニーとクンツ博士
1876年。
クンツ博士がティファニー創業者のチャールズ・ルイ・ティファニーにトルマリンを販売したことが歴史のはじまり。
独自で鉱物収集を行なっていたクンツが、ティファニー社に自身のコレクションを披露。
当時のアメリカでは、ジェムストーンがジュエリーに採用されることが少なく、ティファニーも例外ではありませんでした。
現在、ティファニーといえばダイヤモンドの印象を強く持たれている方も多いですが、クンツ博士のティファニー加入以降、数々の新種のカラーストーンの発見に貢献してきたのです。
ツァボライトやモンタナサファイア、モルガナイト、タンザナイトなど、絶大な人気を誇るこの宝石たちはティファニー社によって世に送り出されました。
ティファニー社でなくても他の誰かが発見していたかもしれませんが、今のような美しさを讃えていたかはわかりません。
そう考えると、クンツ博士が現代の宝飾業界に残した軌跡に感謝せずにはいられませんね。
ティファニー・ダイヤモンドのカットの指揮はクンツ博士が行なったとも。
クンツァイトの希少性は?
この美しく希少な宝石は、その知名度のなさもあって手頃な価格で入手できるものも多いです。
また、カラットの大きなクンツァイトも珍しくはありません。
スミソニアン協会が保有する880カラットのハートシェイプ。
パロマ・ピカソがデザインしたバロックパールのネックレストップには396.3カラットのペアシェイプクンツァイトがあしらわれています。
クンツァイトの価値は、色が鮮やかさとインクルージョンが少なく透明度が高いかどうかで決まります。
大きいほど色が良いとされているため、カラットが大きく華やかな宝石をお探しの方におすすめです。
取り扱い時の注意点は?
硬度は低くないものの、劈開性を持つため超音波洗浄器は厳禁。
また、紫外線や経年で退色の恐れがあります。
天然だけでなく、加熱処理を施されたクンツァイトにも当てはまるため窓際に放置したりせず、暗所で保管してくださいね。
POINT
- 鉱物学者のクンツ博士にちなんで名付けられたクンツァイト
- 二方向に劈開あり。衝撃には十分に注意する
- 熱や光で退色の恐れあり。暗所で保管するように
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。