コラム

【宝石の逸話】翠玉白菜:台湾・故宮博物院で最も有名な翡翠の彫刻

きっと世界で一番有名な翡翠、「翠玉白菜(すいぎょくはくさい)」

じつは日本でも度々展示されており、宝石に興味はなくとも知っている!見たことがある!という方も多いのではないでしょうか。

しかし、なぜ翡翠で白菜を表現したのか、作られた目的などはあまり知られていません。

今回は不思議な魅力を放つ翠玉白菜にまつわる逸話をお届けします。

翠玉白菜とは。どんな意味がある?

翠玉とは日本語でエメラルドと翡翠のことを指します。
この翠玉白菜は翡翠を彫刻したものです。

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翠玉白菜の大きさと色。白菜に込められた意味とは

なんだかみたことがある!と驚かれる方でも、意外と知らないのがサイズ。

白菜くらいの大きさかな?と思いきや、手のひらより少しだけ大きいくらい。
高さ19cm幅は約9cmです。

作りの細やかさと水分を含んだような瑞々しさからは圧倒的な存在感が。

その独特な色も着色ではなく、翡翠本来の色味を活かして彫られています。
白から緑へ移ろうさまは、翡翠だからこそ引き出せた美しさといえますね。

でも、なぜ白菜なのでしょう。

中国の王朝のひとつ、宋の時代(960年〜1279年)から、白菜をモチーフにした美術品が誕生していました。
なかでも翡翠で白菜を表現することは、硬玉が中国で普及をし始めた清時代(1644年〜1912年)に流行。
白菜は「清廉潔白」や「めでたい兆し」を意味すると考えられていました。

翠玉白菜はどこに展示されている?

現在、翠玉白菜は世界四大博物館のひとつである台湾台北市にある国立故宮博物院に展示されています。
翠玉白菜は国立故宮博物院の3階に展示されており、翠玉白菜と同じく鉱物で食べ物を表現した「肉形石」も並びます。

翠玉白菜にまつわる3つの逸話

その名前や展示されている場所から、台湾で産出したものと思われていますが、じつは中国の雲南省からミャンマーあたりで採れた翡翠ではないかと考えられています

ほかにも知られざる謎を秘めた翠玉白菜。
ここでは3つの逸話を紹介しますね。

白菜の上部にはキリギリスとイナゴが!

 

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翠玉白菜で表現されているのは白菜だけではありません。
よく見てみると、葉先にキリギリスバッタが乗っているのです。

キリギリスは緑の濃い部分に彫刻されており、比較的わかりやすいのですが、バッタは少し色の薄くなった部分にいるので、ぜひ探してみてくださいね。

翠玉白菜は嫁入り道具だった?

鉱物ならではの空洞や傷を活かすことでより本物らしさをまとった翠玉白菜。
気になるのは誰が作ったの?ということですが、現在まで作者不明のまま。

ただし、元の持ち主は知られています。
清の第11代皇帝、光緒帝(こうしょてい)の妃であった「瑾妃(きひ)」です。

瑾妃の寝室にあったことと、嫁いでからその存在が明らかになったことから、嫁入り道具として瑾妃が紫禁城に持参したと考えられています。

翠玉白菜はほかにもある?

世界的にも有名な翠玉白菜は、清時代に流行した際にたくさん誕生しました。

群を抜いて美しいのが「翠玉白菜」ですが、じつは故宮博物院には別の翠玉白菜が存在するのです。

小ぶりだけれど風に揺れるような葉の動きを表現した「翠玉小白菜」は、白と緑のまだらな模様も印象深く、「翠玉白菜花播」は、白ベースにところどころ混ざった緑が柔らかく花のような可憐さ。

どちらも翠玉白菜よりも小さいのですが、造形の美しさには目を見張るものがあります。
故宮博物院秘蔵の品なので、直接見る機会がないのが惜しまれますね。

POINT

  • 翠玉白菜は翡翠(硬玉)の色と天然の傷も活かし彫刻された
  • 翡翠で白菜を表現するのが、硬玉が中国に普及した清時代に流行
  • 白菜の葉先にはキリギリスとバッタが佇んでいる
  • 故宮博物院には秘蔵の翠玉白菜がある

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