2021年SS(春夏)のファッショントレンドはどうなるのでしょうか?
昨年末、2020-2021年AW(秋冬)トレンドの記事では地球規模での変わり目となる「サステナブル・ファッション」を取り上げました。
その後2020年に入り新型コロナウイルス感染症が世界的に流行、私たちの社会に大きなインパクトを与えています。
大きな変革期の渦中にあることを踏まえながら、社会情勢や素材の展示会などから2021年に向けたトレンド情報、今後のヒントをお届けします。
2021年はグレート・リセットの時。ニューノーマルが本格化
グレート・リセット…変革の時の「ニューノーマル」
新型コロナ禍で、私たちの社会環境やライフスタイルが大きく変化している現在。
withコロナの時代はまだまだ続くと見られ、テレワークやソーシャルディスタンスといったニューノーマル(新しい常態、新しい生活様式)が求められています。
見方を変えれば、資本主義の負の側面やテクノロジーの進展と現実のズレなどからずっと積み重なってきたさまざまな世界の課題について、この新型コロナ禍がより早い解決をせまるトリガーになったとも言えるでしょう。
2021年1月に行われる世界経済フォーラム(ダボス会議)のテーマは「グレート・リセット」だそうです。
グレート・リセットとは「経済的・社会的基盤の壮大な再起動」といったニュアンスでしょうか。
世界的な危機をきっかけに、より良い社会にしていくためのムーブメントは、この「グレート・リセット」というキーワードに集約されるかもしれません。
「ニューノーマル」や「グレート・リセット」は、2011年のリーマンショックの頃から概念として使われていた言葉ですが、新型コロナ禍によってより幅広い使われ方をしていきそうですね。
サステナブルなど注目のキーワードは?
そんな大きな変革の潮流の中、「ニューノーマル」の着地点を模索するのが2021年なのではないでしょうか。とくに広義のファッションに関わる方が意識していきたいキーワードを探ってみましょう。
サステナブル sustainable
地球環境を考えSDGsの実現のためにサステナブル(持続可能な)であることは、モノの生産から流通、そして回収まで巻き込んだ重要な視点。何がサステナブルかはそれぞれの立場によっても違うのですが、作り手側のサステナブルアクションは引き続き重視されるでしょう。
サステナブルファッションについてはこちらの記事に詳しく書かれています。
プロテクティブ protective
2020年の新型コロナ禍によって、私たちは未知なる感染症の大流行(パンデミック)の脅威を改めて思い知らされました。
また近年、地球温暖化が原因と思われる自然災害の深刻化も。環境白書では「気候危機」という新たな表現が使われています。
地球環境に対し、サステナブルが産業界のキーワードとすれば、個人レベルの意識は「プロテクティブ(保護する)」に。ニューノーマルの基準もあって、人々の「身を守る」意識が高まっています。
マスクやフェイスシールドはもちろん、新しい抗菌作用・抗ウイルス作用の素材や加工も登場しています。機能や実用性を重視する傾向、「安心したい」「基本に立ち返る」といった心理から、クラシック志向も注目されそうです。
チルアウト chill out
感染予防やテレワーク進展の流れの中で、ステイホーム生活が重視されるようになっています。
もともと働き方改革が推奨されていたわけですから、この傾向は加速しそう。
チルアウトとは「落ち着く」「ゆっくりする」「のんびりする」といった意味。
通勤のペースは緩やかになり、「ストレスフリーでリラックス感があり、そこそこきちんと見える」スタイルがニューノーマル時代のファッションのひとつの流れになりそう。
一方で、自分らしさを大切にできる生活になっていくので、自分の「愛着」にこだわる、オーダーやカスタマイズといった方向性も注目されるのでは。
バーチャルリアル virtual real
DX(デジタルトランスフォーメーション)が進展、ファッション×テックも大きく進化していきます。
衣服や装身具の買い方も変化します。ステイホーム期間にオンラインショッピング比率が増加したと言われていますが、その便利さはリアルとも融合、デジタルとリアルの境目がなくなるシームレスなショッピングが可能になっていくでしょう。
一方、今みんなの「おしゃれ心」に火がつくのはどこでしょうか?例えば「バーチャルな世界でのおしゃれ」にお金をかけるといった、ファッションの意味やタッチポイントが変化している傾向にも注目したいです。
「あつまれ!どうぶつの森」でコーデを楽しんだり、デザイナーが着せ替えアプリ内のファッションをデザインする時代です。
丸山敬太×軍司彩弓対談 服を売らないファッションビジネスを考える
必ずしもリアルなモノでなくてもいいのか、バーチャルに夢中になった先にまたリアルのモノが求められるのか…柔軟な発想もますます大事になっていきますね。
2021SSのファッショントレンドは?
提案はサステナブル&スローに
さて、サステナブル志向に加えて新型コロナショックもあり、特にアパレルを主体とするファッション業界では、課題となっていた過剰な大量生産・大量廃棄のサイクルから脱却する動きが本格化しています。
各企業・ブランドは、これまでより提案はゆるやかに(スロー・ファッション)、あるいはシーズンレスな提案、アーカイブの再利用といったアイディアを実践すると共に、オンライン展示会など新たなチャレンジも。コロナ禍の影響でスケジュールの延期や変更なども多く、混沌とした転換期ですね。
テキスタイル展示会の方向は?
2月に行われた2021年SS(春夏)向けのテキスタイル展示会・プルミエール・ビジョン。
キービジュアルの写真は淡い空のブルーとイエローのTシャツ、金魚鉢からこちらを見通す目が印象的でした。
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カラーはソフトな方向、自然からのインスピレーション。ペールブルーを基調にしたブルーのレンジや、イエロー、グリーン、ラズベリー、バイオレットなど…上記の写真も含め、「空」や「光」のイメージ、2021年に向けての希望の色合いでもあるのかもしれません。
2021S/S PremierVision Color 2 カラー(Apalog)
素材では引き続きサステナブル素材を重視しています。薄く透ける、軽やかな素材は引き続き重要、よりパリっとしたオーガンジータイプなど張りのあるシルエットを作る方向。またとろりとした光沢素材やテクスチャーのある素材、リネンライク素材にも注目。エレガンス基調は継続しているようです。
日本の素材メーカーの展示会もオンラインで行われていましたが、やはりサステナブルやエコ視点でのテック素材を、ヴィンテージ加工などでこなれたデイウェアに着地させるような提案がされていました。
2021年SSコレクションはオンライン開催!
なおすでに2021年春夏メンズのパリコレクションがオンラインで開催されています。
例えばエルメスの提案はやはりブルー基調でスマートな軽やかさがあり、動画は舞台裏を映してドキュメンタリー風のライブ感覚。
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春夏メンズパリコレは、新型コロナ禍以降のクリエイティビティとして興味深いコレクションが多いのでぜひチェックしてみてくださいね。
POINT
- 2021年はグレート・リセットの時。ニューノーマルの着地点が模索されそう
- 変革期なのでサステナブルなど大きな視点でのキーワードが引き続き重要
- もの作りはよりサステナブル&スローに変化しつつ、オンライン提案など新しいチャレンジへ
【あわせて読みたい】より具体的な2021年春夏のファッショントレンドはこちら!
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。