すくった海水がそのまま宝石になったと言われても不思議ではないほど、透き通った青が目をひくアクアマリン(aquamarine)。
海に投げ入れると溶けて込んで見えなくなるとも言われており、古くから船乗りたちがお守りとして身につけていたと伝えられています。
今回は誕生石にも制定されている透明感のある美しい宝石、アクアマリンの基礎知識をお届けします。
アクアマリンの意味、和名は?いつの誕生石?
アクアマリンの意味と和名表記
ラテン語で「海の水」を表す「アクアマリン(aquamarine)」。
約2000年前に、ローマ人によって名付けられたと伝えられています。
鉱物名は「天然ベリル」。
アクアマリンの色は、ベリルに混入した鉄由来のものです。
モース硬度は7半から8で、六方昌系の珪酸塩鉱物。
アクアマリンの和名は「藍玉(らんぎょく)」。
緑がかった青を指す「藍(あい)」が使われていますが、アクアマリンは透き通った青のイメージが強いので、「海珠」や「青空石」の方がしっくりくるかも(字面はさておき…)。
しかし、じつは多くのアクアマリンの原石は緑がかった水色をしています。
名付けた方が手に取ったアクアマリンは、藍のような深みのある水色だったのかもしれませんね。
参考記事:宝石の和名が知りたい!名付けに役立つ宝石の名前や漢字のヒント一覧
石言葉
アクアマリンの石言葉は「幸福に満ちる」。
すべての生命の源である海の水にたとえられ、「永遠の若さを象徴する石」「子宝に恵まれる石」と信じられていました。
3月の誕生石
アクアマリンは3月の誕生石。
アメリカやイギリス、オーストラリア、カナダでも3月の誕生石で、フランスでは10月の誕生石に制定されています。
参考記事:知っておきたい!誕生石の一覧と意味
アクアマリンはエメラルドと同じ鉱物?
カラーバリエーション豊富なベリル
アクアマリンはエメラルドと同じ「ベリル」と呼ばれる鉱物。
ルビーとサファイアが「コランダム」という同一の鉱物であるのと同じですね。
意外と知られていませんが、ベリルはカラーバリエーションに富んでおり、アクアマリン、エメラルドのほかにも、黄色のヘリオドールやピンクのモルガナイト、無色透明のゴッシェナイトが含まれます。
鮮烈な赤の印象のレッド・ベリルを除き、パステルカラーのような淡い色味が多いベリルは、複数色の宝石を用いたカクテル・リングのようなコンビネーション・ジュエリーの素材としても活躍。
なかでもアクアマリンは大きな結晶が見つかりやすいため、比較的気軽に手に入れられる宝石といえるでしょう。
アクアマリンはエメラルドと違ってインクルージョンが少なく、ファセット・カットが施されたものの多くは、インクルージョンが肉眼では見えないアイクリーンです。
しかし、インクルージョンをまったく含まないかというと、そうではありません。
針状のインクルージョンが規則正しく並んだものは、カボション・カットを施してキャッツ・アイ効果を示します。
アクアマリンの青に浮かぶ一筋の光はとても幻想的。
アクアマリンの加熱処理
原石は緑がかった青が多い傾向にあると述べたように、アクアマリンは青から青緑まで色の幅があります。
しかし、私たちが目にするアクアマリンの多くは涼しげな水色ですよね。
原石の状態では青緑が多いのに、なぜ手に取るアクアマリンは透き通った青なのでしょう。
それはアクアマリンに施される加熱処理が関係しています。
緑や褐色味を帯びたアクアマリンは、一般的に余分な色味を取り除くために加熱が行われます。
アクアマリンの加熱による色の変化は、着色などで品質そのものを変えるのではなく、宝石の魅力を引き出す処理と考えられているのです。
そのため、加熱処理で価値が下がることはないと言われており、アクアマリンの加熱・非加熱の有無を鑑別することも現在の技術ではできません。
「サンタマリア・アクアマリン」と「サンタマリア・アフリカーナ」
アクアマリンで最高品質のものは、ブラジルのサンタマリア鉱山で産出される「サンタマリア・アクアマリン」と呼ばれる深い青のアクアマリン。
現在では産出がなくなってしまったため、マダガスカルやモザンビークで採れる鮮やかな青の「サンタマリア・アフリカーナ」が貴ばれています。
緑がかったアクアマリンも、純粋な水色が爽やかなアクアマリンも、それぞれ違った魅力があるので、お好みで選んでくださいね。
取り扱い時の注意点は?
硬度も高く、傷もつきにくいアクアマリン。
比較的耐久性があるため、適切な注意を払って扱えば同じベリルであるエメラルドよりも手入れは簡単です。
ただし、インクルージョンがあるものは超音波洗浄器は厳禁。
洗浄の際は、中性洗剤やぬるま湯を利用し、ほかの宝石とぶつからないように保管しましょう。
POINT
- アクアマリンはエメラルドと同じ「ベリル」の一種
- 一般的にファセット・カットはインクルージョンが少ない
- 現在最高品質と呼ばれるものは「サンタマリア・アフリカーナ」
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。