「ヒカリモノガタリ」読者の中でもジュエリーの制作や販売に関わる方にとっては、ビジネスの進め方もお悩みのひとつではないでしょうか。4月からスタートした「小さなブランド&お店のマーケティング物語」では、ちょっと気になるマーケティングについて、わかりやすくお話ししていきます。
物語の舞台ははとある町、小さなジュエリーショップのユイさんが主人公です。不思議な猫との会話から、マーケティングに関心を持ち始めました。今日は、路地を通る猫を待ち構えています。
「いたいた!前回の続きを聞かせてください。それでマーケティングって具体的に何をすればいいんですか?アンケート?インスタ?LINE@?あと○○マーケティングっていっぱいあるんですけど、どれを勉強すれば?」
猫は散歩中だったようです。ちょこんと座って、前足をなめました。
『まあまあ、そんなに慌てずに。少し整理したほうがよさそうですね。』
「あれから、本やネットを見ていたら、疑問ばかり増えてしまって…」
『枝や葉を見るのではなく、木の幹を見ていきましょう。ユイさんは、具体的に何をしていけばいいのか。手段ではなく、まず基本的な仕事のプロセスを把握しましょう』
マーケティングの仕事の進め方を分解してみる
『たとえば、猫が港の魚市場からお魚をとるには、何をするでしょうか?(この際、愛とか倫理的・法律的な問題は抜きにしてくださいね)』
- 魚市場で、好きな魚のありかや、ライバル猫の動きなどを調べる
- 爪をとぐ
- 狙う魚や、近づく経路、どのタイミングがベストかなどを考える
- 魚をとるために動く
- 成功や失敗を見直して、次に生かす
「たくさんありますね。猫も、いろいろがんばっているんだ…」
『もちろんこれは仮の話です。私が実施しているかどうかはご想像にお任せします。』
猫はつんと澄ました顔をしました。
『一連の行動を分解すると、やることが明確になります。マーケティングの仕事の進め方として言葉を置き換えると、例えばこのようになりますね』
- 市場調査・分析をする
- 自社の価値や機会を発見する
- マーケティング戦略・戦術を立案する
- 実施する
- 検証して修正または再チャレンジする
「なるほど。…これ、何とかサイクルっていうのと似ていませんか?」
『PDCAサイクルですね』
PDCAサイクル:PLAN-DO-CHECK-ACTの略。業務改善などの管理手法のひとつ。
『上記の項目は、PDCAをマーケティングの視点で表現したものとも言えます。』
「前回言っていた、<考えて、実行、その繰り返し>をもっと具体的にした感じですね。」
『はい。PDCAについてはまたいずれお話しましょう。なお、わかりやすくするために猫の例を出しましたが、実際にはお客様、前回の話で出た“誰か”は、お魚ではありません。特に今の時代はね。このこともまた改めてお話しします。』
小さい組織はマーケティングを実践しやすい?
「自分で調べて、何か立案して、実施する…ちょっと大変そう、できるのかなあ」
『でもマーケティングを実践していくには、ひとりや少人数の組織のほうが有利かもしれませんよ。』
猫の言葉に、ユイさんは、ちょっと驚きました。
「なぜですか?」
『まさに今言った、自分たちで調べて、立案して、実施できることがメリットです。私は大きな会社に入り込むこともありますが…マーケティング担当者といっても調査しか担当していないケースもありますし、企画と営業、店舗とWeb部門がばらばらだったりすると、このような仕事の流れを俯瞰できていなかったり、足並みが揃わなかったりするものです。』
ユイさんは、ふとあることわざを思い出しました。
「…船頭多くして船山に上る、って言いますもんね。」
『はい。小さい組織であるメリットを生かしていきましょう。』
考えをまとめるのに便利なフレームワーク
「私は、プロセスに沿ってポイントを学んでいくといいのでしょうか?」
『そうですね。それぞれの段階で、3C、STP、4Pといった有名なフレームワークもあります。』
フレームワーク。苦手とする謎の横文字。ユイさん、ちょっと心配に…。
『代表的な考え方の型を知っていると、もやもやした思考がまとめられたり、世の中の見方に新しいヒントが得られます。自分の理解しやすい型を便利に使えばいいんですよ。』
「はい…」
「大丈夫。そうそう、小さい組織のほうが有利という話ですが、もう1点、現代ならではのメリットもあります。』
猫はユイさんの手元を見つめました。
『ユイさん、今スマートフォンを持っていますよね。』
「もちろん。ほとんど肌身離さず持ってます。」
『まったく人間というのはもの凄いことを考え出しますよね。…とにかく小さいブランドや会社にとってなかなか面白い時代になってきたと、私は思いますよ。』
「えっ、本当に?」
ユイさんもドキドキしてきました。この続きはまた次回!
POINT
- マーケティングの手段に気を取られすぎず、やるべき根幹を意識しよう
- マーケティングの仕事のプロセスを理解していこう
- 現代は小さいブランド・会社にとって面白い時代(個猫的見解)
「小さなブランド・お店のマーケティング物語」は月1回連載予定です。次回もお楽しみに!
Text by officenovel
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。