「人がその美しさに干渉できるのは『カット』だけ」といった言葉があるように、研磨技術が発達していなかった古代から愛されてきた宝石。
そのままの姿で美しい「真珠(パール)」も、長く愛されてきた宝石のひとつ。
さまざまな国で親しまれてきたからこそ、たくさんの逸話が残されています。
神話や歴史上の人々とも関わりが深く、ココ・シャネルにも愛された真珠。
クウェートと日本の歴史にも大きな影響が?!
今回は真珠にまつわる数々の逸話をお届けします。
歴史からみる真珠の意味
冠婚葬祭に欠かせない真珠は、どちらかといえば女性的な印象を与える宝石の代表でもありますよね。
丸みを帯びた形状から女性らしさを感じるのでしょうか?
それとも別の理由があるのでしょうか?
「美」を司ると信じられてきた真珠
ギリシャ神話では、愛と美を司る女神「アフロディーテ」の誕生とともに生まれたとされている真珠。
女性の美を象徴する宝石として、真珠を酢に溶かして飲んだと言われるクレオパトラをはじめ、歴史上の美女たちにまつわる話も多く残されています。
世界三大美女のひとりに数えられる楊貴妃のため、唐の玄宗皇帝が真珠の風呂を作ったというお話もあります。
また、不老不死の薬になると信じられていたため、西太后が愛飲していたとか。
このように真珠と女性にまつわる話は多く存在します。
真珠が母貝の体内で育まれる様子を、子を宿す母親と重ねることで女性性を見出したのかもしれませんね。
富と地位の象徴としての真珠
現在ではあまり想像ができないですが、男性にも愛されてきた真珠。
とくにネックレスが好まれ、ヨーロッパ・インドなどの王族や貴族男性が好んで身につけたとされています。
エメラルドやサファイアと同様、その希少性から真珠は権力の象徴でもあったのです。
また、古くから日本でも皇族や貴族の衣装に欠かせない装飾品のひとつでした。
古事記や日本書記などの文献に「しらたま」「あわびだま」といった真珠を表す言葉がたくさん登場します。
【参考記事】
真珠の基礎知識1:真珠の種類とは?
真珠の基礎知識2:良い真珠の選び方、見分け方とは?
真珠にまつわる3つの逸話
クンツァイトの名付け親であるクンツ博士が“The Book of The Pearl”で述べた印象的な一文があります。
「自然のままで、その完璧な美しさを誇る真珠は、人類が最初に出会った宝石である」
いきものから生み出される神秘的な美しさは、宝石のなかでも格別です。
そんな真珠にまつわる逸話を3つご紹介します。
最高の真珠を表す称号
「珠(たま)」とも呼ばれる真珠。
ほかの宝石に比べて、最高級の真珠や、てり・色がひときわ美しい真珠を指す言葉がたくさんあるのです。
「花珠(はなだま)」巻き・色・てりの要素が揃っているピンクの真珠。
「ピーコック」深い緑に赤がさしてみえる黒蝶真珠。
「スターダスト」白蝶真珠のバロック珠で、青みが強くいぶし銀のような輝き。
「ヴィーナス」てりが良い白蝶真珠でキズが少なく、真円に近いラウンド。
「紫金」紫系の淡水真珠のなかでも最高品質の真珠に与えられる名称。
「朱金」橙系最高品質の淡水真珠で、朱肉の「朱」が由来。
「茶金」ゴールド系の白蝶真珠のなかで最高品質。
真珠を愛したモードの女王「ココ・シャネル」
ファッション界に新しい風を吹き込んだシャネルの創業者、ココ・シャネル。
彼女が愛した宝石は、黒に映える真珠。
恋人にダイヤモンドのティアラを贈られても、真珠のロングネックレスとイヤリングに替えてしまったほど。
遊び心溢れるジュエリーコーディネートを楽しんでいたシャネルは、模造真珠をあえて天然真珠とあわせてつけていたことでも知られています。
「すべての女性はたとえ模造品のパールでもつけるべき」といった彼女の言葉からは、ファッションをより楽しむためのヒントを得ることができますね。
「クウェート」と「日本」の歴史を作った真珠
現在では真珠といえば日本を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
古くから日本でも真珠は採れましたが、養殖に成功するまでは産出量も少なく、真珠といえば他の国でした。
その国のひとつが「クウェート」。
1920年代まで真珠はクウェートの国家産業だったのです。
真珠王と呼ばれたミキモトの創業者・御木本幸吉が真珠の養殖に成功してから、クウェートの真珠産業は衰退。
それがきっかけで新たな国家の資源「石油」を得るきっかけとなったとされています。
新たな資源を得るため石油探索をはじめ、1930年代に油田が見つかりクウェートは一大産油国となったのです。
また、石油が国家の資源となった背景には、日本の養殖真珠が直接影響したというわけではないという説もあります。
フランスの銀行がクウェートに対し、養殖真珠の出現を理由に天然真珠に対する融資を断絶させたため、真珠産業が衰退していったとも。
天然だけでなく、コットンパールやガラスパールなど、イミテーションも愛されている真珠。
ほかの宝石にはない楽しみ方ができるのも真珠の素晴らしさですね。
シャネルのように混ぜて身につけたり、一生を彩る逸品を探したり。
あなただけの真珠の魅力を見つけてください。
POINT
- 真珠は女性だけのものではなく、権力者の男性にも愛されてきた
- 他の宝石よりも最高品質を表す名称が多い真珠
- 御木本幸吉により真珠養殖がはじまる前も、日本で真珠は採れていた
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。