NHK朝の連続テレビ小説「スカーレット」(月~土曜朝8時~)。
朝ドラの前作「なつぞら」とほぼ同じ、戦後の昭和時代を背景とした女性陶芸家の物語。世界観やキャラクターを丁寧に表現する衣装にも注目です。
スカーレットってどんな色?タイトルの「スカーレット」という色名の意味から、主人公・川原喜美子(戸田恵梨香さん)を始め、さだ(羽野晶紀さん)、ちや子(水野美紀さん)など個性的な登場人物の衣装と色使いの魅力を探ります!
ドラマタイトル「スカーレット」の意味とは?
「スカーレット」は火と土につながる色
スカーレット(scarlet)とは「緋色(ひいろ)」という赤色の名前。
伝統的に炎の色とされ、黄色味のある鮮やかな赤。緋=火にも通じ、陶芸作品に現れる理想の色のひとつである。
主人公の生業(なりわい)である陶芸では、窯をたく炎が勝負。熱く燃えるような、情熱的な人生につながる。(NHK「スカーレット」公式Webサイトより引用)
スカーレットは窯の中で燃える火の色であり、ドラマの舞台となる滋賀県・信楽の赤土…この土の色も意味しているようです。
映画ファンなら「風と共に去りぬ」の主人公スカーレット・オハラを思い出す方もいらっしゃるのでは。
実を言うとこの朝ドラが始まる前は、華奢な印象、刑事や医師役のイメージがある戸田恵梨香さんと「スカーレット」という言葉のイメージがあまり結びつかなかったのです。
でも現在、その印象は変わりました。スタート時の炎と立ち向かう力強い表情にはじまり、子役(川島夕空さん)の好演を受け継いだ戸田さんは明るくたくましい「きみちゃん」そのもの!熱く、時に切なく、頑張る姿を応援したくなってしまいます。
きみちゃん!「Tomorrow is another day」ですよ🌬🌬🌬#スカーレット pic.twitter.com/b93NuYix88
— 朝ドラ「スカーレット」第5週 (@asadora_bk_nhk) October 11, 2019
戸田恵梨香さんの衣装、「赤の表現力」と「ていねいな暮らし」
「赤」はこんなに豊かな色だったのか
「スカーレット」の美術や照明、衣装は、タイトルに通じる「赤系の色合い」をとても丁寧に配しているように思います。
衣装を見ていても、ああ、赤ってこんなに幅広い色味なんだ、着こなしでこんなに変わるんだ…と、色の持つ表現力を再認識させられるのです。
喜美子の衣装は、赤いセーター、褪せた赤系チェックのシャツ、作ってもらったとっておきの小花柄ブラウスにスカート…決して派手ではなく、柔らかな温もりを感じる赤系の衣装の数々。
子役時代最後のエピソードの鍵になっていたのが「赤い手袋」だったのも素晴らしいですね。いずれ登場するであろう陶芸の世界につながる「赤」「手」「温もり」の強い印象が心に残っています。
きみちゃん「ぬくいなぁ~🤗」
直ちゃん「ぬくいなぁ~🤗」きみちゃん&直ちゃん「ええなあ〜🤗🤗」#スカーレット pic.twitter.com/vsNPyj9OOM
— 朝ドラ「スカーレット」第5週 (@asadora_bk_nhk) October 9, 2019
貴美子の「ていねいな暮らし」を感じる衣装の味
さらに喜美子の衣装からは、生活の中から、工夫してお直しをしながら服を使い切る様子も伝わってきます。
シャツの身頃と袖をつないだり、肘や膝のパッチ、セーターの袖を使ったマフラー…リメイクの仕方も愛らしい。
近年注目されている「ダーニング」(繕う、という意味)に通じる「繕いを楽しむ」「ていねいに暮らす」姿勢に魅かれます。
喜美子の衣装は素朴なのに見飽きない深さや面白みがあります。それは戸田恵梨香さんの持ち味…毎日見ているとしみじみ惹き込まれる、きめ細やかな表現力にも通じるのではないでしょうか。
喜美子を囲む人々の衣装にも注目!
お仕事中のさださんとちや子さんは、荒木荘にいる時とは違った雰囲気です。かっこいい…👏#スカーレット pic.twitter.com/yaUmaqHCQo
— 朝ドラ「スカーレット」第5週 (@asadora_bk_nhk) October 18, 2019
さだ(羽野晶紀さん)のおしゃれな「赤」
貴美子が大阪で働くことになった荒木荘の主人、下着デザイナーの荒木さだ(羽野晶紀さん)。下着デザイナー・鴨井羊子さんがモデルと言われていますが、ドラマ中の下着は「ワコール」の商品にも近そうでした。
ワコールの元の社名は「和江商事」、滋賀県・近江の呼び名「江州」にちなんだもの。
創業者が滋賀県出身のワコールは戦後アクセサリー販売からブラパッドの取り扱い、ブラジャーの自社生産を始め、ドラマの時代で言えば婦人洋装下着メーカーに大きく成長する道を歩んでいるところです。
(→詳しく知りたい方は「ワコールの歴史」へ!)
荒木商事の吸収先は和江商事なのかも?滋賀県、近江商人つながりでワコールや下着ショーのエピソードが取り入れられたのかもしれません。
「スカーレット」はブラジャーやストッキングなど、戦後の女性の洋装化や社会進出を支えた「縁の下の力持ち」アイテムに焦点を当てているのも面白いですね。
お嬢さん気質ながら働く女性の先駆者でもあるさださんの衣装は、とてもエレガントでファッショナブル!
赤の大胆な幾何柄、赤×黒のドラマティックな配色、ボウタイブラウスと赤いカーディガンのコーディネート…同じ「赤」でもこんなに違う、喜美子に新しい世界を与えてくれた人らしい衣装です。
ちや子(水野美紀さん)の頼れる「茶色」、実はトレンド⁈
いっぽう、荒木荘で出会った新聞記者の庵堂ちや子(水野美紀さん)。豪快でちょっととぼけた風情、その奥の心優しさが魅力的。
彼女の衣装は「ブラウン系」「チェック」のジャケット主体のマニッシュコーデ。当時のことですから、紳士服のテーラーで仕立ててもらっているのかもしれませんね。
クラシックでありながらなぜかこの秋冬のトレンドっぽい!バンドカラーのシャツ×ジャケットにパンツ…おじさん風?レトロマニッシュちや子コーディネート、参考にしたいです。
ちや子が現在基調としている茶色(ブラウン)は赤の近似色であり、土や大地の色。きみちゃんが相談できる、頼れる先輩女性として地続きの色です。
ちや子自身が頼れる上司を失った後、これからどんな変化があるのかにも注目したいですね。
「金」髪×「赤」タートルネックのインパクト!ジョージ富士川(西川貴教さん)
と、ここに来てまたインパクトのある衣装の方が登場しました。
「自由は、不自由やで…✋」#スカーレット pic.twitter.com/4qOiftn26L
— 朝ドラ「スカーレット」第5週 (@asadora_bk_nhk) November 1, 2019
世界的な芸術家、ジョージ富士川(西川貴教さん)!岡本太郎さんがモデルだそうです。
金髪、赤のタートルネックニットにジャケット、ルイ・ヴィトンもびっくりの華やかな小紋柄スカーフ…さすが、アーティスティック(しかもボンジュール&関西弁)!
ところでなぜ芸術家ってタートルネックのイメージがあるのでしょう?
元は労働者階級の服だったタートルネック。実は1924年にノエル・カワードが舞台で着たことからファッションアイテムになったのだとか。ノエル・カワードは劇作家で俳優で音楽も映画監督も…という多才でお洒落な方で、1920年代のファッションに大きな影響を与えたそうです。
その後現代まで「かっこいい」「芸術的」イメージが定着しているのはすごいですよね。
この先、信楽メンバーの衣装にも期待!
信楽時代の友達・照子も、「赤」を使いながら立場の違いが伝わってくるような衣装でしたよね。お嬢様らしい赤のコートやピンクのマフラー…この先、大人編(大島優子さん)の衣装も楽しみです。
さらに気になるのが妹の直子。写真(桜庭ななみさん)を見ると、緑(グリーン系)のシャツやニットを着ている様子。
「赤」と「緑」は補色の関係です。
補色とは、色相を環にした時に対面になる色のことで、お互いをもっとも目立たせる反対色。
姉妹は対立するのか補い合うのか?これからのドラマの展開にも注目です。
POINT
- 「スカーレット」とは「緋色」(黄色味がかった赤)のこと
- ドラマ「スカーレット」主人公の喜美子(戸田恵梨香さん)の赤を基調にした衣装に注目
- さまざまな登場人物も赤やカラーを表現豊かに使っているのが「スカーレット」衣装の魅力
父親の常治、幼馴染の信作、草間さん、大久保さんなど、個性豊かで生き生きした人物が次々に登場してくるのも楽しい「スカーレット」。
主題歌「フレア」(Superfly)もドラマにぴったりです。「いつの日も」「今日の日も」の「日」は「火」でもあるのかなと感じました。
さまざまな人と出会い、別れ、時にシビアな現実に直面しながらも「雨に、涙に負けるもんか」と力強く生きていく貴美子の姿。今後どんな風に陶芸の道に進んでいくのか、家族との関係は、恋は…これからも毎朝見逃せません!
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。