ある温度以下になると、固体から液体へ姿を変える「アンタークチサイト」。
「液体なのに鉱物」といった変わった性質を持つこの鉱物は、「宝石の国」で一躍有名になりました。
皆が寝静まるなかにひとり、冬を見張る「アンターク」は、どのような鉱物なのでしょう。
今回は不思議な鉱物、アンタークチサイトの基礎知識についてお届け。
アンタークチサイトの意味、硬度は?
アンタークチサイトの意味と和名
英語で南極を表す「Antarctic」に、石を表す「cite」が組み合わさり「Antarcticite」に。
モース硬度は2から3、三方晶系のハロゲン化鉱物。
劈開は完全。
和名は「南極石(なんきょくせき)」。
その名の通り、南極で発見されたことが由来です。
色は無色透明。
主な産出地は南極大陸、アメリカ、南アフリカ。
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アンタークチサイトは液体?意外な日本との関係とは。
アンタークチサイトのジュエリーがない理由
すべての鉱物が宝石に加工されることはありません。
それは硬さの問題であったり、外観の美しさであったり、またそのどちらも満たさない鉱物の方が多いのです。
ただし、アンタークチサイトは加工できないため、宝石として扱うことができないといった性質を持ちます。
加工できない理由は「25℃」になると液体化してしまうから。
室温でも固体から液体にその姿を変えてしまうその性質は、「宝石の国」でも描かれているように「寒くなるほど強くなる」を体現していますね。
このほか室温程度で溶けてしまう固体には、氷と自然水銀があげられます。
液体になってしまうのに鉱物なのでしょうか?
鉱物は「固体の結晶物質」という定義があります。アンタークチサイトは発見された場所が南極という低温環境下。そこでは固体として産出するので、鉱物の定義にあてはまっているのです。
アンタークチサイトを発見した日本人
「宝石の国」で一気にその名を知らしめた「アンタークチサイト」。
「南極石」は単に和名ではなく、日本人の探検家が発見し名付けたのです。
その探検家の名前は「鳥居鉄也(とりいてつや)」。
日本における南極調査研究の第一人者である鳥居氏が1963年に、南極大陸のドンファン池で発見したのが「アンタークチサイト」。
そのため、「ドンファン石」といった候補もありましたが、1965年に「南極石」として登録されました。
アンタークチサイトは作れる?
アンタークチサイトの成分は塩化カルシウムと水。
塩化カルシウム45%に⽔55%を混ぜ合わせて冷やすだけで結晶化します。
家庭でも簡単にアンタークチサイトを作ることができますが、南極で発見されたアンタークチサイトはカンブリア紀の海洋水の結晶だと言われています。
カンブリア紀とは動物が爆発的にその種類と数を増やした、約5億4,200万年前から約4億8,830万年前の時代です。
まだ陸に生物がいない時代の、私たちの先祖にあたるさまざまな海洋生物が生きていた時代の鉱物であると考えると、天然のアンタークチサイトには古代のロマンが詰まっているとも言えるのではないでしょうか。
POINT
- 25℃以下になると液体になるアンタークチサイト
- 和名は「南極石(なんきょくせき)」
- アンタークチサイトは、日本における南極調査研究の第一人者鳥居鉄也が1963年に発見
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。