コラム

朝ドラ「おむすび」衣装:結(橋本環奈)と平成ギャルファッション

2024年下期のNHK連続テレビ小説、通称朝ドラ「おむすび」。

平成生まれの主人公・米田結(橋本環奈さん)が、栄養士として人の心と未来を結んでいく物語です。

ドラマのキーワードは「栄養士」「ギャル」「平成」…ということで、開始以来ギャルが話題になっているこの朝ドラ。

今回は朝ドラ「おむすび」に登場する平成ギャルファッションをチェックしてみました!

そもそもギャルとは?平成ギャルファッション史

ギャルの意味と平成ギャルの歴史

そもそもギャル(GAL)とはガール(GIRL)が語源で、若い女性を意味する米国の俗語。

日本でも同様の意味で使われ、1970年代には、サーファーの女の子などを指していました。

1980年代末のバブル期にはワンレン・ボディコンの女性を「イケイケギャル」などと呼んでおり、女子大生~OLだった彼女たちに対して1990年代に登場したのが「コギャル」。
高校生などより若い世代で、ルーズソックスが流行。このあたりが平成カルチャーを担うギャルファッションの源流といえそうです。

90年代半ばには安室奈美恵さんの影響で「アムラー」スタイルが大人気に。
ストリート雑誌が全盛期を迎え、また1995年頃登場したプリクラが仲間意識を高めるツールとして大流行。厚底ブーツが流行、茶髪(ちゃぱつ)も一般的に。渋谷109のカリスマ店員が人気を博しました。
1990年代末にはより過激な「ガングロギャル」「ヤマンバ/マンバギャル」も話題に。
一方、美白ブームや浜崎あゆみのブレイクで2000年代は「白ギャル」(肌を焼かない)化、ヒョウ柄やデコ電(携帯電話をデコレーションする)が流行。

平成の中でもトレンドがこまやかに変化しながら、概念としての「ギャル」イメージが醸成されていったんですね。

…で、ギャルって何?

で、結局ギャルって何なのでしょうか?

最初に書いた通り、広義では若い女性。

デジタル大辞泉(小学館)によれば

ギャル(gal)
女の子。若い女性。特に、明るく社交的で、流行のファッションを取り入れるなどの行動を通じ、感覚を共有しようとする女性についていう。

実際に2004年頃にギャルであり、「おむすび」のパラパラ振付指導でもあるRumiさんによれば

  • 自分の“好き”をとことん貫く
  • 自己肯定感は常に高く
  • 礼儀正しく仲間思い

…これらを見ると、大事なのはマインド

思い切ったおしゃれも、ノリも、ギャルサー(ギャルサークル)などの仲間作りも、根底にはポジティブなギャルマインド、ギャル魂があるようです。

結(橋本環奈さん)も「ギャルの掟(おきて)」を聞かされました。

結は姉に比べられ、家庭内の調整や人助けのほうに動く、周囲に心を配るタイプ。
振り切っているポジティブなギャル魂に影響されて、より明確な自分の夢、自分らしさを見出していくのかもしれません。

平成ギャルファッションとハギャレンの着こなし

平成ギャルファッションのアイテムは?

Y2K(2000年)ファッションが話題になったり、平成レトロと言われたり、平成時代のファッションは今改めて注目されています。

平成ギャルファッションの代表的なアイテムは、例えばこんなところでしょうか。

  • 厚底ブーツ/サンダル
  • ルーズソックス
  • クロップト丈トップス
  • ヘルシーな肌見せ、重ね着
  • 大きい花柄、ヒョウ柄
  • 濃いめのアイメイク、派手なネイル、茶髪~金髪
  • サングラス、アクセじゃら付け、デコ電、ファーの尻尾

ハギャレンメンバーの一人ひとりの個性ある着こなし

そして、ハギャレン(博多ギャル連合)のギャルファッションを見ると、実はひとりひとり個性があるのですよね。

  • ルーリー(みりちゃむさん)…元祖ギャル。派手目花柄、肌見せ、アルバローザ系。夢は社長!
  • タマッチ(谷藤海咲さん)…ダンサーなのでクールなモノトーンのパンツコーデ
  • スズリン(岡本夏美さん)…ピンク主体のカワイイ系。ネイルが重要
  • リサポン(田村芽実さん)…隠れギャル。ギャルの歴史を学ぶ学究肌で、その都度系統が違う、ちょっとコスプレ感のあるタイプ

1990年代のギャル文化を超えてきた2004年という設定だからこそ、時代を総括したような衣装セレクトになっているのも興味深いです。

ギャルは苦手という人もいます

…今後、ギャルと共に踊る結として登場するであろうマンバギャル風の装い。この画像は放送前に公開されてちょっと世間に驚きが走りましたよね。

平成時代は1989年~2018年。
「おむすび」の現在(結が高1)は2004年(平成16年)なので、ちょうど平成の真ん中の地点です。

平成は、バブル崩壊からの景気低迷、1995年に阪神・淡路大震災地下鉄サリン事件が起きるなど、“失われた30年”と言われる時代でもありました。

この同時代を生きて、でもギャルではなかったという人も多いはず。

特にマンバギャルのような過激なギャルは、ほんとうにごく一部だったことを皆さんご記憶ですよね。

そして陽太(菅生新樹さん)が「ギャル=不良」と言ったように、記号的なギャルはひとくくりにされがちでもあります。

苦手という方もいらっしゃるでしょう。またドラマという意味では、振り返るには時代が近すぎて、ギャルを変に強調されるのも変に美化されるのもどっちも違和感…という方もいらっしゃるのでは。

ただこの「おむすび」は、記号的な扱いにされがちなギャルを、個として描こうとしている姿勢が見えます。
結はもちろん、ハギャレンの皆も、それぞれ背景や未来があるのですよね。

まだ登場していないけれど、伝説のギャルと言われる結の姉・歩(仲里依紗さん)、その友人も今後登場予定。
平成ギャルがその後どんな生き方をしていくのかも描かれるのではないかと期待しています。

POINT

  • 朝ドラ「おむすび」は「栄養士」「ギャル」「平成」がキーワード
  • ギャルはガールからの俗語。平成ギャルファッションと根底のマインドに注目
  • 「おむすび」のギャルは一人ひとり個性があり、衣装もそれを伝えている

「おむすび」は、これからさかのぼって震災の神戸が描かれる様子ですし、また結は栄養士になることも公表されています。

おそらく橋本環奈さんのギャルファッション(装い)は、ひとつの通過点。
むしろハギャレンで培ったマインド、ギャル魂が今後の心の支えになるのでは。平成を生きる結たちを見守っていきたいですね。

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