コラム

「アッパッパ」とは?大正~昭和に関西で生まれた、懐かしの夏ワンピース

「毎日毎日こうも暑いと、コーディネートなんて考えていられない…」

思わずそう言いたくなるような猛暑の日は、1枚でパッと着られて、風の通る涼しいワンピースが重宝しますよね。

実は今から約100年も前の女性たちも、同じことを思っていたのです。

今回は、大正時代から昭和初期にかけて大ブームになり、現在のワンピースやサンドレスの原型ともいえる「アッパッパ」という洋服のルーツをご紹介します。

「アッパッパ」とはどんな服?

「アッパッパ」は、次のような形が基本といわれます。

  • 襟なし
  • 半袖または袖なし
  • ウエストにギャザーが入り、スカートの裾が広がるシルエット

当時の写真がなかなか手に入らず現代で見つけてきたものですが、以下のような形がアッパッパにあたります。


今見ると「ごく普通のワンピース」という印象ではないでしょうか。

しかしアッパッパが生まれた大正~昭和初期は、まだ多くの女性が和服で過ごしていたため、当時としてはかなり珍しい装いだったんです。

アッパッパの語源

それにしても「アッパッパ」とはいかにも変わった名前ですよね。

語源は諸説ありますが、有力なのは「裾がパッと開いた服」だと言われています。

他にも、「着替えるときに頭からかぶってパッと顔を出したら終わりだから」とか、英語の「Up a parts(1つの部品だけ)」という説もありますが、はっきりとした記録は残っていません。

ただ、関西の女性たちの間からこの呼び名が広まったことは分かっているそうです。いかにも「アンタ、今日はえらい涼しそうなアッパッパ着てるやんか!」という会話が聞こえてきそうですね(笑)。

名古屋の一部の地方では、玄関のドアやカバンの口が開けっぱなしになっている様子のことも「アッパッパ」と言うそうですし、建築業界では、天井や壁の中に障害物がなく空間が広がっていることを「アッパッパ」と呼んでいるといいます。

どれも開けっぴろげで広がった様子を指していて、アッパッパの持つ開放感がよく分かりますね。

アッパッパは猛暑で生まれた「簡易服」だった

現代の東京の気温は100年前でいうと鹿児島くらいに相当すると言われていて、今よりもずっと涼しかった時代とはいえ、真夏に着物で家事や育児はさぞ暑かったことでしょう。

特に昭和4年の東京は記録的な猛暑で、この年に「清涼着」として売り出されたアッパッパが流行し、洋装化が進む一因になったそう。

こういったワンピース型の洋服はそれ以前からあり、遡れば大正時代の関東大震災後に、木綿などの安価な布や浴衣地で簡単に作れて動きやすい「簡易服」が生まれたといわれています。

一説では仕事に追われる髪結い(美容師)さんが最初に考案したともいわれ、面倒な帯も下着もいらず、汗をかいてもざぶざぶ洗えるのも人気の理由だったとのこと。

文豪・永井荷風の随筆にも「女子がアッパッパと称する下着一枚で戸外に出歩く奇風については~」と書いており、俳句の季語にもなっているというのだから、かなりの大流行だったことが伺えます。

その後も、夏を少しでも涼しく過ごしたい女性たちの間では、ハワイ発祥の「ムームー」、胸元にシャーリングを施しおしゃれ感のある「サンドレス」なども流行。

春に注目の「シャーリング」とは?ギャザーやタック、プリーツなどとの違い

近年ではすっかり忘れられた感もある「アッパッパ」でしたが、2019年にはアパレルブランド「ONIGIRI」から現代風の「アッパッパ」が商品化されヒットしました。


街のブティックやオンラインショッピングでも、「アッパッパ」と名乗りこそしないものの、よく似たスタイルのギャザーワンピースはよく見かけるため、時代を超えて夏を少しでも涼しく、らくちんに過ごすアイテムとして手に入れてみてはいかがでしょうか。

口に出して「アッパッパ」と言ってみるだけで、なんだか少し楽しい気分になりそうですよ。

POINT

  • アッパッパは、半袖や袖なし、衿なしで、広がるギャザースカートが特徴のワンピース
  • 大正~昭和に、関西から全国に広まった
  • 「ギャザーワンピース」で探せば手に入るので、アッパッパ気分を楽しんでみて