目が冴えるほどのマスカットグリーンの印象が強い「スフェーン(Sphene)」。
ダイヤモンドに負けないファイアを持つ、色石の中でも個性の強い宝石です。
2021年に新しく追加された誕生石のひとつで、夏の誕生石でもあります。
今回はスフェーンの基礎知識についてお届け。
カラーバリエーションや輝きの秘密、ファイアとは?
スフェーンの意味。和名、石言葉は?
スフェーンの意味と和名
ギリシャ語で楔(くさび)を意味する「Sphenos」が由来のスフェーン。
くさびのような板状の結晶形を示すことから名付けられたとされています。
鉱物名はチタナイト。
チタニウムを含むことから名付けられました。
主な産出地はヨーロッパ・カナダ・マダガスカル。
モース硬度は5から5半、単斜晶系の珪酸塩鉱物。
劈開は一方向に明瞭。
スフェーンの和名は「楔石(またはチタン石)」。
英語名と由来は一緒ですね。
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スフェーンの石言葉
スフェーンの石言葉は「永久不変」。
角度を変えてきらきらと光る七色の光が特徴のスフェーン。
毎日昇る太陽の輝きをスフェーンの中に見た人が、この石言葉をつけたのかもしれませんね。
7月の誕生石
スフェーンは7月の誕生石。
2021年12月に新しく制定されました。
もともと7月の誕生石であるルビーと比べ、カラーに幅がある宝石なので好みの色味がきっと見つかるはず。
スフェーンはダイヤモンドの輝きを持っている?
カラーレスからグリーンイエロー、レッドブラウン、ブラウンイエローなど、ニュアンスのあるカラーが魅力的なスフェーン。
そこに炎が揺らめくような特徴的な輝きが加わることで、唯一無二の個性を放ちます。
スフェーンの輝きの秘密は光の分散と屈折率の高さ
透明度が高いものは、ダイヤモンドよりも輝くとされているスフェーン。
それはダイヤモンドより高い光の分散率を持っているから。
この分散率はディスパーションとも呼ばれます。
品質の良いダイヤモンドを傾けると、七色の光がチラチラと輝くあの輝き。
ファイアと呼ばれ、ダイヤモンド以外ではあまり見ることができません。
品質の高いスフェーンはダイヤモンドを凌ぐ強い輝きを見ることができるのです。
この特性は太陽光下でより顕著に現れます。
カラーとしては、濃いグリーンよりもライムイエローなどの薄い色味の方がファイアを確認しやすいとされています。
また、ファイアが強いものや大きな結晶で産出することが珍しい宝石なので、ふたつの条件を満たすものはとても希少と言えるでしょう。
スフェーンのダブリングとは。光が二つに分かれる?
もうひとつスフェーンの特性として挙げたいのがダブリング。
複屈折と呼ばれるこの特性は、カルサイトにも見ることができます。
入ってきた光がスフェーンの中で分かれる現象は、外観の美しさにも影響を与えます。
たとえばファセットカットを施したスフェーン。
光を受けるとファセットの輪郭が二重に見え、美しいモザイク模様が確認できることも。
取り扱い時の注意点は?
ダイヤモンドに負けない強い輝きを放つことから、硬そうに見えるスフェーン。
しかし、硬度は5から5半と低いため、超音波洗浄器は厳禁です。汚れが気になる場合にはセーム革などの柔らかい布で拭いましょう。
太陽光に長時間晒すと退色のおそれがあるため、保管は冷暗所で行うように。
POINT
- ダイヤモンドにも負けない輝きを持つスフェーン
- スフェーンの輝きは分散率と屈折率の高さから
- ファイアを確認しやすいのは濃いグリーンよりも薄いカラーのスフェーン
- 硬度が低いため、日常での取り扱いには注意が必要な宝石
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。