コラム

ジュエリーの歴史とは?古代から現代で変化した装飾品の役割

ピアスにネックレス、リング。
私たちが日常的に身につけるジュエリーは、生活の一部として欠かせない存在ですが、その意味や役割は時代によって大きく変化してきました。

かつては権力の象徴として。
または信仰を表すものとして。

限られた人々だけが身につけていたジュエリーは、やがて誰もが手に取れる身近なアイテムに。
古代から現代で、どのようにジュエリーの意味が変わってきたのでしょうか。

今回はジュエリーの歴史をたどりながら、装飾品の意味や役割の変化をみていきましょう。

古代から中世へ:権力と信仰の象徴としてのジュエリー

エジプト・ギリシャ・ローマ文明における装飾品

加工品の中でも最も古い歴史をもつ装飾品。
その起源は約5000年前まで遡ります。

布を留めるためのブローチのような機能性を重視したものから、お守りのようなものまで、さまざまな用途で装身具は身につけられていました。

たとえば古代エジプト。
王族や神官が身につける権威の象徴として、太陽神ホルスをモチーフにした胸飾りが出土しています。

同じく太陽神と同一視されたスカラベ(甲虫)をモチーフにした装身具が、死者とともに埋葬されることもありました。
また、宝石は霊的な力を持つと信じられ、魔除けとして身につけられました。

古代ギリシャやローマでも、権威の象徴として装身具が身につけられていましたが、「見せるための美しさ」も意識されるように。
特定の意味を表すだけでなく、ファッションとしての役割も果たすようになってきたのがこの時代の装身具の特徴です。
宝石の加工技術の向上により、さまざまな宝石が宝飾品に用いられていました。

日本の「勾玉」

一方、日本における装飾品の始まりは縄文時代とされています。
装飾品の素材は、おもに貝殻や土、動物の骨、鉱物。
翡翠や水晶、琥珀を加工し、腕輪や耳飾りに加工されていたのです。

その中でも首飾りとして着用されていた「勾玉(まがたま)」は、生み出された当初とは異なる意味を持つようになった装身具のひとつです。

単なる装身具であったものが、徐々に王権を象徴するものに変化したのです。
「三種の神器」のひとつである「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」は、神の力が宿っていると信じられています。

このように、縄文時代から日本には装身具文化がありましたが、中世から近代にかけて装身具の発展は停滞。
第二次世界大戦後まで、日本から「ジュエリー」が姿を消すこととなるのです。

近代から現代へ:個性と物語を語るジュエリー

「芸術としてのジュエリー」が誕生したヨーロッパ

さて、話を世界に戻してみましょう。
産業革命を経た19世紀後半のヨーロッパでは、ジュエリーが芸術として評価されるように。

アーツ&クラフツ運動の流れを汲んだ1890〜1910年代のアール・ヌーヴォー期。
植物や昆虫、女性などがジュエリーのモチーフとして用いられ、有機的な曲線やアシンメトリーなデザインが特徴的でした。
エナメルやガラスといった素材も登場し、ジュエリーは身につけるアートへと変化。

続く1920〜30年代のアール・デコ期。
アール・ヌーヴォー期のジュエリーとは対照的に、直線的で幾何学的なデザインが流行。

用いられる素材も変化し、プラチナやダイヤモンドをあしらった洗練されたジュエリーへ。
どこかロマンティックな雰囲気が漂うアートジュエリーから、実用的でありながら豪華なジュエリーへと変化したのです。

戦後日本におけるジュエリーの普及

アール・デコ流行時、日本は大正時代。
実は日本でもアール・デコの様式が取りいられていましたが、おもに建築やインテリア。

ジュエリーが一般層に普及し始めたのは、戦後の高度経済成長期から。
洋装化が進み、欧米の慣習が取り入れられるようになると、ジュエリーも日常生活に浸透。

1960年代には、ジュエリーの百貨店での取り扱いが増え、1980年代にはファッションジュエリーとしての消費も拡大したのです。

現代:自己表現ツールとしてのジュエリー

そして現代。
素材や価格、デザインの幅が広がったジュエリーは、誰もが気軽に楽しめるアイテムとなりました。
役割や意味も多様化し、ジュエリーは「自分を表現するひとつのツール」としての役割も持つように。

価値観やライフスタイルを反映させた「ジュエリー」は、ファッションのように自己を表現する方法のひとつといえるでしょう。

ジュエリーの歴史は、単なる流行や消費の変遷ではありません。
「何を大切にして生きてきたか」というこれまで生きてきた人たちの価値観の記録です。

かつては権威や神への信仰を示すものだった装飾品が、今では人ひとりの物語や感性を表現するジュエリーとなりました。

手元のジュエリーに、どんな想いがあるか。
ふとしたときに、あなただけの物語に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

POINT

  • ジュエリーの役割は、権力の象徴から自己表現のツールへと変化
  • 日本では、戦後に洋装文化とともにジュエリーが普及
  • 現代ではジュエリーの素材やデザインが多様化し、自分らしさを表すアイテムのひとつとなった