冬から春へ、季節の変わり目を感じる時期。
季節といえば「四季」…春・夏・秋・冬ですが、最近「五季」という表現を聞くようになりました。
五季とは?今回は、五季という言葉の意味と背景を古来・最新それぞれに紹介。また、近年の気候変動がファッションに与える影響についても考えてみましょう。
五季とは?古来の区分と、いま提唱されている区分
古来の五季
古代中国思想や東洋医学では「五行説」といわれる、物事を5つの要素に分ける考え方があります。
季節については以下の区分。
- 春
- 夏
- 土用
- 秋
- 冬
この土用は、厳密にいえば、春夏秋冬それぞれの季節の変わり目にある十八日間を指すのだそう。
「土用の丑の日にうなぎを食べる」というのは、夏の土用の時期を指すのですね!
季節と、季節の変わり目を意識して最適な生活をすることで、病気にならないようにしようという考えがベースになっています。
(なお「五節句」など、季節を五つにわける考え方は他にもあります。)
いま提唱されている五季の区分とは
新たな「五季」は現代の地球環境とビジネスの視点から。
近年のアパレルメーカーでは、気候変動や異常気象に対応するため、商品の提案シーズンを見直し・調整する動きが出てきています。
もともと内部ではかなりこまやかなシーズン区分で企画開発されていると思われますが、外への発信として注目されたのが大手アパレルメーカー三陽商会の提唱。
従来のシーズンMD区分を見直し、「五季」という新たな季節区分を提唱しました。「春・夏・猛暑・秋・冬」の5つの季節区分で、特に夏の長期化と猛暑の厳しさを考慮しています。
- 春 3月~4月
- 夏(初夏・盛夏) 5~7月
- 猛暑 8~9月
- 秋 10~11月
- 冬 12月~2月
今の日本において「5月から9月は夏」とはっきりさせることで、より気候の実情にマッチしたものづくりや商品展開をしていく考えが土台になっていますね。
8月のうちに売り場が秋物になり「まだ暑いのに…」となっていたユーザーの心理に呼応した変化と言えます。実際、8月・9月に夏物を販売し続けて売上アップした実績も出ているそうです。
気候変動がファッションに与える影響とは?
「ファン付きウェア」がファッションになる
「五季」が改めて提唱されたことで、夏の長期化がより明確になった現代。
もちろん、地球環境を守るためのさまざまな施策も生産者・消費者ともに対策する必要がありますが、いっぽうでこのような気候変動がファッションの進化に影響していることも見逃せません。
例えば、ファン付きウェア──電動ファン内臓の通気性機能を持った衣服。
(※「空調服」は、(株)セフト研究所・(株)空調服の登録商標です。)
服自体にファンを付ける!その発想と見慣れなさに、最初はちょっと驚いたものです。
もともと作業服として2010年代に普及したファン付きの服は、機能重視の現場向けであり、当初「人目が気になる」「服が膨らんでしまう」点がデメリットとされていました。
しかし、10数年の月日は、人の感覚も変えていきます。
アンリアレイジ2025春夏コレクションではテーマ「WIND」として、電動ファンの特性を活かしたファッションを提案。時代に即して進化した技術とデザインの融合といえそう。
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そして、この「膨らみ感あるシルエット」は今やデイリーなトレンドアイテムにも影響!
ファンそのものをアクセサリーのように使うスタイルも人気ですし、暑さ対策で開発された機能が、ファッショントレンドや人々のデイリーファッションにまで発展しているのです!
このほか、接触冷感素材など、気候変動や暑さに対応するアイテムやコーデはこれからもバリエーションが拡大しそう。
長い夏の時期を過ごすのは大変ですが、「五季」が提唱されたことで、また新たなファッションが生まれてくるのか注目したいですね。
POINT
- 「五季」は、東洋医学などで言われていた言葉
- 現代の気候変動にともない、アパレル(三陽商会)が提唱した「五季」の区分が注目される
- ファン付き衣服の進化を見ても「五季」発想のファッションに注目したい
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。