ちょうど一年前、30歳を迎えた記念にVCAの指輪を購入して以来、私のアクセサリーの選び方はガラリと変わったように思う。
指輪に合わせてゴールドに惹かれるようになった、というだけでなく、より上質な素材と普遍的なデザインを好むようになった。それに購入する回数もぐっと減った。それは、今この時に身につけたいものというより、この先何十年と身につけたいものに視点が変わっていったからかもしれない。30代らしい視野の広がりとも言えるのだろうか。
そういうわけで突然気になるようになったのが、マリーエレーヌ・ドゥ・タイヤック(Marie-Hélène de Taillac)。
MHTは、インドのジャイプールの色石と職人の手を用いて女性のためのジュエリーをつくるパリ発のブランド。地金には主に22金を採用していて、その柔らかなあたたかさと、色鮮やかな石たちとの溶け合いが、なんともうっとりと私たちを虜にする。デザインはパリジェンヌらしい遊び心を持ち、どれもユニークでカラフルだ。
|新婚旅行で訪れたジャイプール
以前から素敵だなと思いつつも、買うには至らなかったブランド。けれどもこの一年、その世界に不思議と魅せられ、一つ、また一つと集め始めたのだった。
透明でカラフルなときめき
イエロークォーツのピアス。ローズクォーツのリップの形をしたリングと、雲の形のペンダントトップ。指輪は「Tender Kiss Ring 」という名前も可愛い。頑張る自分への、文字通り優しいキスのような、特別なご褒美となった。
MHTのジュエリーは、どれも上品なカッティングが施され、光を受けてキラキラと輝く。
けれどその輝きは、ただの装飾品のきらめきではない。
カラフルだけれど、どこまでも透明。
色がありながらも、ずっと向こうまで見通せるような、不思議と澄んだ輝き。
その色合いを見ていると、自分のさまざまな一面を、そのまま認められるような気持ちになる。
私もまた、いつだってカラフルに、色づく向こうを生きてみたい。MHTは、私に人生のワクワクを与えてくれるのだった。
61歳のパリジェンヌに魅せられて
そういえば、Netflixオリジナルドラマ「エミリー、パリへ行く(Emily In Paris)」のシルヴィーも、素敵にMHTを身につけていた。エミリーの上司、シルヴィー・グラトーを演じているのは、61歳のフィリピーヌ・ルロワ=ボリュー。ヘルシーに、そしてセクシーに年齢を重ねる彼女は、まさにパリジェンヌ、いやパリマダムか。MHTは、そんな彼女の魅力に本当にマッチしていて、私も歳を重ねてあんなふうに身につけたいと思った。
画面の中の61歳のパリジェンヌは、私に「何を身につけるか」でなく「どう身につけるか」を問うてくれる。
20代の私は「何を身につけるか」ばかりだったが、最近はむしろ「どう身につけるか」、生き方の方にフォーカスできるようになった。買い物は少しでいい。ほんとうに素敵なものを少しだけ、それが、私のこれからをつくる気がしている。
30代って、大人って、楽しい
ジュエリー界の革命家とも言われるマリーエレーヌ・ドゥ・タイヤック。その革命という言葉の裏には、ジュエリーは男性が女性に贈るものという固定概念を覆した功績もあるのではないかと思う。女性が本当に楽しく身につけられるジュエリーをコンセプトにするMHTが提案するのは、どこまでも自分のためのジュエリー。
男性から贈られるのではなく自分のために選ぶジュエリーを、一つずつ迎えるたびに、私はちょっと強くなるのだ。
これからどういう経験をして、どういうふうに年齢を重ねていくだろう。31歳を迎えてやっと30代らしくなってきた私は、これからの人生が楽しみで仕方がない。
透明でカラフルなときめきが、私の心を今いっぱいに満たしている。
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芸術大学卒のフリーランスライター。AJINOMOTO PARK 主催の投稿コンテスト、新しい働き方LAB主催の書きものコンテストなどで、エッセイ入賞。ピアノ講師でもあり、画家の妻としての一面も持つ。ここでは、暮らしのなかで見つけた 美しさ にまつわるエッセイをお届けします。