ジュエリーの基礎知識

超音波洗浄機でジュエリー・宝石のお手入れを。使用厳禁な宝石の特徴5選

ジュエリーのお手入れに欠かせないクロスやクリーナー。
気軽にジュエリーのお手入れができるのがメリットですが、たくさんジュエリーをお持ちなら「超音波洗浄機(※)」でのお手入れを検討されたことがある人も多いのでは。

ただし、宝石の割れといったリスクがあるため、ジュエリーのお手入れ方法としてはハードルが高めですよね。

今回は、そんな「超音波洗浄機」を用いたジュエリー・宝石のお手入れ方法について。

正しい扱い方を知ればいつものお手入れをより簡単に、お手持ちのジュエリーを美しく保つことができます。

まずは「超音波洗浄機」の使用ができる宝石と、できない宝石をみていきましょう。

(※)一般社団法人日本ジュエリー協会「ジュエリーコーディネーター検定3級」テキストなどの表記は「超音波洗浄器」ですが、検索では「機」を使われる方が多いため「超音波洗浄機」と表記しております。

超音波洗浄機でのお手入れが厳禁なジュエリー・宝石

「超音波洗浄機」は、その名の通り「超音波」を利用する洗浄方法。
洗浄する仕組みを簡単に説明すると、超音波によって水を振動させた時に生じる「気泡」が弾ける衝撃で汚れを剥がしているのです。

この短い時間で気泡の発生と消滅が起きる一連の現象を「キャビテーション(Cavitation)」と呼びます。

こびりついた汚れを簡単に除去できるのが特徴。

眼鏡屋さんの店頭で超音波洗浄機を見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。

眼鏡以外に腕時計のメタルベルトなど様々なアイテムを洗浄でき、もちろんジュエリーの洗浄にも用いられています。

特に目の詰まったチェーンなど、汚れが溜まりやすいアイテムの洗浄に適しています。

ただし、すべてのジュエリー・宝石が超音波洗浄機を使用できるわけではありません

では、超音波洗浄機の使用を注意するべきなのは、どのようなジュエリー・宝石なのでしょうか?

外観でわかる特徴から二点、宝石の性質から三点の注意点をご紹介します。

【外観】インクルージョンやクラック(亀裂)がある宝石

インクルージョンがある宝石や、クラック(亀裂)が入っている宝石の超音波洗浄機使用は厳禁です。

小さなインクルージョンやクラックでも、振動を加えることで亀裂が広がり宝石自体が壊れてしまいかねないからです。

キャッツアイ効果スター効果のある宝石にも注意が必要です。

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その効果の正体は微細なインクルージョンの集まりのため、ルビーやサファイア、クリソベリルといった硬度が高い宝石でも使用を避けた方が良いでしょう。

【外観】石留めがゆるくなっているジュエリー

石留めがゆるくなっているジュエリーも、超音波洗浄機の使用を避けてください
宝石を留めている爪が劣化していたり、元々留まりが甘いと宝石が外れてしまいます。

ジュエリーの基本デザイン:石留め編

大きな宝石の場合は留め直しを依頼することができますが、メレダイヤモンドとなると紛失のリスクも伴います

そのため、メレダイヤモンドを留めたエタニティリングやテニスブレスレットを超音波洗浄機を用いて洗浄する際には、必ず小さな袋に水とジュエリーを入れてから、超音波洗浄機を使用してください

【性質】コーティングされている宝石

プラスチックやガラス、樹脂などの物質でコーティングされた宝石も超音波洗浄機の使用は厳禁。

たとえばエメラルド

エメラルドは基本的にインクルージョンがみられる宝石であり、クラリティと透明度を改善するために無色または有色のオイルによる含浸処理が施されています。

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超音波洗浄機の使用によって亀裂が広がる危険があるだけでなく、含浸加工されたオイルが流出してクラリティと透明度が損なわれてしまいます。

【性質】有機質の宝石と多孔質の宝石

パールサンゴといった有機質の宝石と、オパールなどの多孔質の宝石は、そもそも水分でテリや色が損なわれてしまうため、超音波洗浄機の使用は避けた方がベター

パールやサンゴは水分を一度含むと乾燥してヒビ割れを起こしたり、変色の恐れもあります。
遊色効果のあるオパールであれば、その効果が失われてしまうことも。

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また、これらの宝石はそもそも脆く、超音波の振動でも破損の恐れがあるため、基本は乾拭きでのお手入れと考えてください。

【性質】劈開がある宝石

タンザナイトペリドットトパーズムーンストーン
これらの宝石の共通点は「劈開がある」ということ。

劈開(へきかい)とは、特定方向からの力に弱いという性質。
たとえば「劈開が一方向に完全」は、「その方向から力が加わった時に板状に綺麗に割れる」ということを指します。

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つまり、お手入れの際には劈開の有無と、どのように割れるかといった劈開の強さを知る必要があります。
劈開のある宝石のお手入れは、基本的に乾拭きかぬるま湯での洗浄の二択

上記で挙げた以外にも、劈開のある宝石の超音波洗浄機の使用は厳禁と覚えておいてくださいね。

劈開 宝石名」で簡単に検索ができるほか、主要な宝石の劈開の有無はヒカリモノガタリの「ジュエリーの種類」記事内で記載しておりますので、ぜひ調べてみてください。

【宝石の種類】宝石の名前と意味・豆知識─五十音順(あいうえお順)宝石の一覧

POINT

  • 超音波で水を振動させ、生じた「気泡」が弾ける衝撃で汚れを剥がす「超音波洗浄機」
  • 石外れを防ぐために、小さな袋に入れてから洗浄を行うのがおすすめ
  • インクルージョンがある・劈開がある宝石は超音波洗浄機の使用厳禁

ジュエリーや宝石ごとの特性を理解することで、超音波洗浄機に限らずさまざまなお手入れのアイテムを使用できます。

しかし、よくわからない、壊してしまうかもしれないといった恐れがあるうちは、宝飾品の専門家にメンテナンスを任せることもひとつ。

大切なジュエリー・宝石を長く使用するために、あなたのスタイルに合うお手入れ方法を見つけてくださいね。

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