あらゆる岩石に見られる「カルサイト(calcite)」。
地球上で最もありふれた鉱物「石英(せきえい)」と並ぶポピュラーな鉱物です。
ジュエリー・アクセサリーとして仕立てられた姿をみることの少ないカルサイトですが、ダイヤモンドと間違われたという逸話もあります。
今回はカルサイトの基礎知識についてお届け。
カルサイトの意味と和名、「複屈折」とはどんな性質?
カルサイトの意味、和名、石言葉は?
カルサイトの意味と和名
ラテン語で「石灰」を意味する「calx」が由来の「カルサイト(calcite)」。
「ite」はラテン語で「石」を意味し、アイオライトやタンザナイトのように多くの宝石の名にみることができます。
モース硬度は3。
三方晶系の炭酸塩鉱物。
とても脆い性質からファセットをつけられることは少なく、彫刻や建造物の外壁素材として用いられてきました。
カルサイトが粒状集合体になったものが大理石。
カルサイトというと馴染みのない存在のようですが、大理石というと私たちの生活にとても身近な鉱物と感じるのではないでしょうか。
劈開は三方向に完全。
和名は「方解石(ほうかいせき)」。
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主な産出地はアイスランド、アメリカ。
透明度の高いカルサイトはアイスランドで産出し、その中でも品質が良いものは「アイスランドスパー」と呼ばれます。
カルサイトの石言葉
カルサイトの石言葉は「希望と成功」。
想像意欲を高めたり、気分を明るくすると信じられてきました。
カルサイトとダイヤモンドヘッド。複屈折とは?
「ダイヤモンドヘッド(Diamond Head)」の由来となったカルサイト
常夏の島、ハワイのオアフ島にある「ダイヤモンドヘッド(Diamond Head)」。
ハワイのシンボルであり、随一の観光名所ともいえるこの火山。
「ダイヤモンド」の名を冠しますが、「ダイヤモンドが産出するから名付けられた」のではありません。
ではなぜ「ダイヤモンド」ヘッドなのでしょうか。
かつて赤い宝石はすべてルビー、青い宝石はすべてサファイアとされていたように、火口付近で輝くカルサイトをダイヤモンドと勘違いしたため、「ダイヤモンドヘッド」と名付けられたという説があります。
鑑別技術が発展している現在では起こりえない間違いと思うかもしれません。
しかし、ファセットをつけられた後のルース(裸石)と比べ、ダイヤモンドの原石が目をみはるような輝きを見せないことを知っていれば、外観でその鉱物の出自を判別する難しさを理解できるのではないでしょうか。
また、透明〜白色のイメージが強いカルサイトですが、黄色や青色、ピンクもあり、意外にもカラーバリエーションが豊富な鉱物です。
カルサイトと複屈折
カルサイトには「複屈折率」が高いという性質があります。
「複屈折」とは光が物体を通過した際、二方向に分かれる性質のこと。
カルサイト以外にジルコンやペリドットでみられます。
この「複屈折」によってどのような現象を確認できるでしょう。
文字を書いた紙の上に板状のカルサイトを置くと、文字が二重に見えます。
ジルコンは、ファセットカットを施したルースのテーブル面から内側を観察すると、ファセットが二重に見える現象を確認できることでしょう。
これは「ダブリング」と呼ばれ、宝石を鑑別する要素のひとつとなります。
この性質を活かし、宝石鑑別器具のひとつである「二色鏡」の素材としてカルサイトが用いられることも。
取り扱い時の注意点は?
モース硬度3、劈開も三方向に完全のカルサイト。
手入れの際は「超音波洗浄器を使用しない」ことはもちろん、衝撃を避けるよう注意しましょう。
爪のモース硬度は2半。
モース硬度3はそれより少しだけ硬いだけなので、保管時も他の宝石と接触しないよう気をつけてあげてくださいね。
POINT
- あらゆる岩石に見られるカルサイト
- ハワイ島のダイヤモンドヘッドの名前の由来となった説がある
- 複屈折率が高く、科学機器に用いられることもある
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。