コラム

朝ドラ「ブギウギ」衣装:スズ子のカラーは赤…だけじゃない?波乱万丈の物語にズキズキ・ワクワク!

2023後期NHK連続テレビ小説、通称朝ドラ「ブギウギ」は戦後を明るく照らしたスター歌手の物語。
昭和の歌手・笠置シヅ子さんをモデルにした福来スズ子(趣里さん)の人生を軸として、人間ドラマと日本のエンターテインメント黎明期~戦後復興期を描くドラマに毎朝魅了されています。

今回は「ブギウギ」衣装について、特に福来スズ子と茨田りつ子のテーマカラーに注目してみました。

スズ子のテーマカラーは「赤」…だけじゃない?

スズ子のテーマカラー「赤」とさまざまな色のコントラスト

「ブギウギ」主人公・スズ子(趣里さん)のテーマカラーは「」。少女時代(澤井梨丘さん)から赤い着物が印象的でした!

もうひとつのポイントが「コントラストの強さ」。

趣里さんご本人とスズ子のキャラクターに、コントラストのはっきりした柄や色合いが似合うところからだそう。

赤いスカート、赤いコート…私服でも「赤」を印象的に使いつつ、白いブラウス合わせや水玉柄のカラー使いなどメリハリをつけていますね。

舞台衣装ではさらにひとひねりした赤のコントラストの表情を見せています。

USK(梅丸少女歌劇団)で歌のソロを任された「恋のステップ」の衣装は、大胆な赤と黒のバイカラー

スズ子が出生の秘密を知った後なのですよね。皮肉にもそれが歌の表現力を深め、その後のステップにつながることになる重要なステージ。
赤だけでない、くっきりとした陰影をともなう衣装が、スズ子とステージ全体のスタイリッシュな迫力をもたらしました。


その後、出世作となる「ラッパと娘」の衣装は赤×白
白いレースには“娘”らしい愛らしさもありますし、スズ子にとって「白」はピュアな思い、恋の色なのかもしれません。

戦時中の慰問巡業では白いワンピース姿が印象的だったスズ子。
さまざまな制約を受けた戦中。国防色と言われたカーキ色に塗り込められ、色を失っていく世界の中で、必死に生き、歌い、恋をするスズ子の内面を表しているようでした。

ちなみに戦後、待望の公演を再開した時の「ラッパと娘」衣装。

同じ赤×白の組み合わせでも、戦前の身体に沿った斜めのラインを活かしたデザインと、戦後の衿やボウタイ、カフスやベルトでかっちりしたメリハリを効かせたデザイン…ファッショントレンドの変化がわかりますね。

最愛の人・愛助さん(水上恒司さん)との日々は、クリーム色やパステルグリーンなど柔らかいカラーの私服が多めだったスズ子。

そして愛助さんの忘れ形見となる愛子ちゃんを宿しての「ジャズ・カルメン」ではのドレス。
この衣装は、あえてお腹の大きさをごまかさないよう作られたそう。
現実に恋の渦中にあるスズ子の状況を活かしてさらに超越する、堂々としたプロフェッショナルさを印象づけた舞台でした。

(スズ子の波乱万丈の人生は、ほとんど笠置シヅ子さんの人生の史実に沿っているよう…笠置シヅ子さんご自身が本当に凄い方だと改めて驚嘆します!)

ちなみにスズ子を育んだ「はな湯」と母・ツヤ(水川あさみさん)、愛助の母・トミ(小雪さん)も紫の着物の印象があります。
「ブギウギ」においては、「紫」は“母”なるイメージの色なのかもしれないですね。

ブルースの女王・りつ子の青き存在感

りつ子のテーマカラーは「青」

一方、スズ子と同時代を生きた歌手、“戦友”ともいえる茨田りつ子(菊地凛子さん)。モデルは淡谷のり子さん。

ブルースの女王・りつ子のテーマカラーは「」。
美しい青、そして黒…夜空のようなカラーレンジを基調に、帽子やスカーフ、アクセサリーまでこだわって、一本筋の通ったりつ子らしさを際立たせている衣装。
菊地凛子さんの演技プランとの総合力が素晴らしいです。

スズ子が明るくチャーミングならりつ子はエレガント、スズ子はエンターテイナーだしりつ子は歌い手としての純度が高い…ふたりのコントラストがドラマをより一層魅力的に。

個人的には、りつ子のモデル・淡谷のり子さんが戦時中「化粧やドレスは贅沢ではなく、歌手にとっての『戦闘服』」と命を懸けたおしゃれをしていたことや、特攻隊の方々の前で歌った史実をドラマでもしっかりと描いていたことに感動しました。

ステンドグラスのような装飾のワンショルダードレス…祈り、覚悟と揺らぎ、さまざまなりつ子の内面を思わせる(かつ、戦中の厳しさと巡業に持ち運べるようなシンプルさも感じられる!)美しい衣装。

「青(ブルー)」は「ブギウギ」に欠かせない

ところで「ブルース(blues)」は悲しみ・憂鬱の感情がブルーの色で例えられることに由来。

またジャズブルー・ノート(憂鬱な音色)を使うことがひとつの特徴です。

ドラマ内では作曲家・服部良一先生をモデルとした羽鳥善一先生(草彅剛さん)が逸材・スズ子と出会って取り組んだジャズ
そしていよいよ戦後の日本で花ひらく「ブギウギ」──このドラマのタイトルでもあるリズムも、明るく開放的ではありますが元々はブルースやジャズの中で生まれたフレーズ。

「ブギウギ」には、スズ子だけでなくりつ子も青(ブルー)も欠かせない音色なのですね。

さまざまな色彩が重なり合う「ブギウギ」の世界

赤も青も、喜びも悲しみも。パワフルな「ブギの女王」誕生へ

朝ドラ「ブギウギ」は、現実の人間の複雑さ──善良さもエゴもひっくるめた個性と人間模様を描く一方、劇中のエンターテインメントの舞台も本気で徹底的に作り込んでいる点が魅力的。奥行のあるつくりとなっています。

序盤から蒼井優さん、翼和希さんとOSK(日本歌劇団)のプロフェッショナル達が、スズ子が人生を賭けたくなる世界を圧倒的な迫力で魅せてくれました。

これが東京の梅丸歌劇団にも引き継がれ、戦時中の苦しい時期を経て、今後繰り広げられる戦後のステージへ…もう期待しかありません。

ここでちょっと「ブギウギ」のロゴを思い出してみましょう。

レトロ感を演出する、印刷物の版ズレを意識したデザインが使われています。

それと同時に、赤も青もある…いろいろな色がある…さまざまな色彩が重なり合ってこそ、この生き生きした世界が在るというイメージを表現しているのではないでしょうか。

”人生は「うれしいこともつらいこともある。うれしい時は気持ちよく歌って、つらい時はやけのやんぱちで歌う。僕たちはそうやって生きていくんだ」”

(羽鳥先生は徹頭徹尾「音楽馬鹿」な感じが素晴らしい…草彅剛さんの魅力が弾けてますね!)

USKは「泥臭く、艶やかに」。

ラッパと娘は「楽しいお方も、悲しいお方も」。

東京ブギウギは「心 ズキズキ・ワクワク」。

そう、スズ子の再起と日本の復興を願って生まれる「東京ブギウギ」は、悲しみや苦労もパワフルな明るさに変換して、人々に勇気と希望を与えていきます。

スズ子の「東京ブギウギ」衣装は白地に赤と青の花柄…レトロなワンピースを参考に、エネルギー全開で歌って踊るスズ子のために制作したそうです。

喜び、悲しみ、さまざまな色彩をその身にまとって。間もなく誕生する「ブギの女王」、佳境に入る「ブギウギ」を応援していきましょう!

POINT

  • 朝ドラ「ブギウギ」は歌手・スズ子の波乱万丈な人生の物語。エンターテインメントの描き方も魅力的
  • スズ子のテーマカラーは「赤」と「コントラストの強さ」。「青」りつ子の存在も欠かせない
  • さまざまな色が重なり、生き生きと。日本の復興と重なる「ブギの女王」スズ子にも期待!