フランス皇帝、ナポレオン・ボナパルト。
自ら王となる選択をした「英雄」は虐殺を行った「悪魔」でもあり、彼の躍進から衰退までを描いた作品が2023年12月1日から公開されています。
そして映画でフィーチャーされているジョセフィーヌは、ナポレオンを語るに欠かせない人物。
安寧とはいえないふたりの人生には、数々の逸話が残されています。
今回は彼らの人生を彩ったジュエリーをご紹介。
ナポレオンとジョセフィーヌにまつわる、3つのジュエリーの逸話をお届けします。
戴冠式の王冠とティアラ
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映画「ナポレオン」にも登場する月桂樹の王冠。
戴冠式でナポレオンが被った王冠が見事に再現されており、実物はゴールドで作られた葉が生き生きとみえる荘厳な王冠です。
この王冠は戴冠式のために制作されたもの。
代々受け継がれた位ではなく、その手で王位を掴んだナポレオンには権威を象徴する宝飾品の数々はありませんでした。
そのため、新体制を代表するものとして、多くの宝石をあしらったジュエリーを制作させたのです。
王冠もそのひとつであり、古代から「勝利」「栄光」を象徴する月桂樹を取り入れたとされています。
2017年にはその葉の一枚がパリで開かれたオークションに出品。
62万5000ユーロ(約8270万円)で落札され、予想をはるかに上回る落札額となったのだとか。
この月桂樹の葉、冠が重過ぎるため取り除かれた6枚の葉のうちの1枚であり、葉脈の一本一本が浮かび上がっているのが見えるほど精密な造り。
一方、ジョセフィーヌにもティアラを制作。
このティアラを手がけたのは「ショーメ(CHAUMET)」であり、この戴冠式からショーメはナポレオンお抱えジュエラーとして活躍。
260カラットものダイヤモンドをあしらったティアラ。
数にしておよそ1040石。
輝く透明な宝石が、ゴールドやシルバーの貴金属で留められています。
現代でもショーメはジョセフィーヌをメゾンのミューズとし、2010年より「ジョセフィーヌ」コレクションを展開。
シャルルマーニュの護符(タリスマン)
歳上の未亡人であったジョセフィーヌ。
ナポレオンと離婚してからも社交界の華として君臨し続けました。
もちろん結婚生活中もその魅力にナポレオンは惹かれ、時には悩まされていたのだとか。
ナポレオンが遠征中に、ジョセフィーヌが浮気をしていたことは国民にも知られた大スキャンダル。
そんなジョセフィーヌにナポレオンが贈ったのは「シャルルマーニュの護符(タリスマン)」。
別名「カール大帝の護符」の中央に留められていたのは「皇帝の石」と呼ばれるサファイア。
カボションカットのサファイアが留められたこのタリスマンは、持つものを必ず皇帝にするという力を秘めていると信じられていたもの。
しかし、ナポレオンはこれをジョセフィーヌへの贈り物としました。
これはジョセフィーヌが強く所望したからとも、ナポレオンが「サファイア」にある効果を期待したからともされています。
その効果とは「浮気防止」。
ジョセフィーヌは何人もの愛人を作り、ナポレオンはそのことで頭を悩ませていたとされています。
当時、サファイアには「浮気を封じ込める」効果があると信じられており、現代でもサファイアの石言葉に「誠実」「愛情」であるのはきっとその名残ではないでしょうか。
ジョセフィーヌはこの「シャルルマーニュの護符(タリスマン)」を贈られてから浮気性が治ったと伝えられています。
サファイアの効果があったのか、はたまたナポレオンの気持ちが伝わったのか。
それとも別の要因があったのかはわかりませんが、きっとナポレオンは「サファイア」の効果と思ったのでしょう。
そのしるしに「シャルルマーニュの護符(タリスマン)」以外にも、ジョセフィーヌは複数のサファイアジュエリーを所有していたとされます。
アメシストのパリュールジュエリー
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現代でこそアメシストは気軽に身につけられる宝石のひとつ。
しかし、ダイヤモンドの価値が認められたのが最近であるように、宝石の価値は時代や土地によって変わってきました。
アメシストは中世ヨーロッパでとても人気があり、19世紀のフランスでも希少で人気の高い宝石だったのです。
スウェーデン王室が所有するアメシストのティアラも、その頃制作されたジュエリーです。
15 石ものアメシストが輝くこのティアラ、元はジョセフィーヌのコレクションであったとされています。
イヤリングとブレスレット、ネックレスからなるアメシストのパリュール(セット)ジュエリーは、ジョセフィーヌから義娘であるアウグステ・フォン・バイエルンへと贈られました。
そしてその娘であるユセフィナ・アヴ・レウクテンベリに引き継がれたのです。
ナポレオンとジョセフィーヌの孫にあたるこのユセフィナが、スウェーデン国王であったオスカル1世と結婚することで、スウェーデン王室がこのアメシストを所有するに至ったのです。
元々はティアラはなく、ネックレスが作り変えられたものが、現在ティアラとして王室の女性に身につけられています。
POINT
- ナポレオンの戴冠式のために王冠とティアラなど数々のジュエリーが制作
- 一説によるとカール大帝の護符はジョセフィーヌの浮気防止を願って贈られた
- スウェーデン王国が所有するアメシストのティアラは、元はジョセフィーヌのネックレスだった
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。