2023年7月19日~20日、東京・港区のフランス大使公邸で「フレンチ ウォッチ&ジュエリー デイズ 展 」が開催されました。
今回はプレスセッションの模様と、歴史ある工房から新進気鋭のデザイナーブランドまで…多彩なアイデンティティを持つ、出展ジュエリーブランド6社をご紹介します。
まだ日本では知られていないフランスのジュエリーブランドに注目してみましょう!
「フレンチウォッチ&ジュエリー デイズ展」とは
「フレンチウォッチ&ジュエリー デイズ in東京」は、プレス・ビジネス向けの時計・宝飾品の展示会です。
主催は在日フランス大使館のフランス貿易投資庁-ビジネスフランス。フランセクラ(フランスの時計・宝飾・テーブルウェア等の経済開発委員会)が協力しています。
フランスの時計とジュエリーの魅力をより多くの方に知ってほしいという認知度の向上と、日本での販売代理店探しなどの新規顧客開拓を目的として開催されました。
伝統あるフランスの時計・宝飾業界
19日のプレスセッションでは、フランセクラ国際部長クレール・ヘニマンさんのレクチャーで、フランスの時計宝飾産業の伝統と最近の傾向についてお伺いすることができました。
フランスの“アール ド ヴィーヴル”(生きるすべ、といった意味。フランス的なライフスタイル)に欠かせない、ファッションやデコレーション、美食などのクリエイティブな文化と製品。それを支えるのが高い技術力と品質です。
特に宝飾産業は、カルティエ:トリニティ、ヴァンクリーフ&アーペル:アルハンブラ…などアイコン的な製品を持つ世界的なブランドが多く存在し、卓越した専門技術が開発され続けています。
時計産業はフランスにおいてはスイスに近いブザンソン地方を中心に発達してきました。
フランスの時計・宝飾産業の最近の傾向
現在、フランスの時計・宝飾産業は活気ある産業セクターでもあります。
2022年の売上高は宝飾品産業:対前年比31%増の約46億ユーロ(約7176億円)、時計産業:対前年比12%増の約3億8000万ユーロ(約593億円)。雇用数も拡大しています。
ジュエリーにおいては、フランスの製品は日本の宝飾市場の20%を占めているそう(2022年)。
そしてビジネスの視点で“新しい波(ヌーヴェル・ヴァーグ)”が来ています。
- 新しいビジネスモデル…特にインターネットやSNSを活用したプロモーション
- 新しいジェネレーション…家族経営の代替わりや変化、リブランディング
- 「フランス」重視…フランスの“アール ド ヴィーヴル”の提唱、地元の雇用拡大への貢献など
また最近のジュエリーデザインの大きな特徴としては、以下の4つのポイントをピックアップ。
- タイムレス…ゴールド、ダイヤモンドなどを使った普遍的なジュエリー
- 自然からのインスピレーション…自然の草花や虫、動物、波などのモチーフ
- パールへの回帰…真珠専門店以外のブランドが取り組む新しいデザインパールジュエリー
- タリスマン(お守り)…メダイやイーヴィルアイ(魔眼)など、お守り要素のデザイン
今回のセッションではフランスの時計宝飾産業の歴史と現状の全体像を聞く貴重な機会が得られ、とても勉強になりました。
フランスからやって来た注目のジュエリー6ブランド
「フレンチウォッチ&ジュエリー デイズ in東京」には、時計ブランド6・ジュエリーブランド6 計12ブランドが出展しました。
今回は6つのジュエリーブランドにフォーカスしてご紹介しますね!
MAD Joaillerie (Alix Dumas) マッドジョアリー(アリックス・デュマ)
MAD Joaillerie(マッド ジョアリー) は、アーティスト兼熟練した宝石商アリックス・デュマさん によって近年設立されたばかりの会社です。
フランスの高級ジュエリーのノウハウ・卓越性と、アーティスト兼彫刻家のアリックスさんならではのアプローチの融合です。
アリックスさんは年間限定数の作品を制作し、環境および社会に配慮した基準に従って、アトリエでデザイン、手作業による製造をしています。そのため、ユニークな作品や限定版のみとなります。
まるで彫刻作品のような、唯一無二の美しい作品たちに感嘆!
今回の記事のアイキャッチ画像にも使用させていただいた、マグノリアの花をかたどった精巧なブローチ。
6月にラスヴェガスで行われた「ヴェガスジュエリーウィーク2023」でベスト・イン・オートクチュール賞を受賞しました!
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アリックスさん自身のハンドメイドで、サファイアなどを散りばめた花に、美しいダイヤモンドの雫がぶら下がっています。
どことなく「和」も感じる作風なのですが、アリックスさんにお伺いしたところ、彼女は「ライン」を大切にしているのだそう。
「日本も書道など、ラインを重視しているでしょう。だから出来上がったものを見るとどこか日本的なのです」と答えてくれました。
“北斎の波”リング(Hokusai wave Double ring)も、アリックスさんの世界観を伝えてくれます。
アリックスさんの作品はかなりボリュームがあるのですが、実際に身に着けるとジュエリーは身体にフィットして、付け心地の良い作品である点も魅力的です。
また裏から見ても美しい!「すべてを見せる、隠すところがない」ように作るのもフランスのジュエリーの伝統的な視点なのだそうです。
NO MUSE PARIS ノーミューズ パリ
シンガーソングライターだったHelin Bird(ヘリン・バード)さん。2017年にパリでジュエリーの学校に通い、NO MUSE PARISを2018年に設立しました。
NO MUSE PARISはすべての女性が自分の居場所を持てるエレガンスの世界を提供するブランド。派手すぎない輝きを放つ、パリの新時代を象徴するエレガンスです。
女性の耳などのパーツの美しさを引き立て、個性を表現するアーティスティックなジュエリー。
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「NO MUSE 」というブランド名についてヘリンさんにお聞きしたところ、「完璧なミューズである必要はない。独立していて、自分らしく自由でいていい」という、ヘリンさんのメッセージなのだそうです。
このブランドコンセプトには共感!素晴らしい視点ですね。
ディスプレイも含めたイメージの演出もウィットに富んでいて個性的ですし、ジュエリーも「自分らしいお守り」として毎日身に着けられるようなデザイン。
個人的にはヘリンさんのパーソナリティも感じるカセットテープのペンダントが気に入りました!好きな文字を入れることができるのだそうです。
MATHON PARIS マトン・パリ
フレンチ・ジュエリーの伝統に忠実なMATHON PARIS(マトン・パリ)の工房は質の高い個性的なジュエリーを作っています。
1971年にブランド設立。工房の優れた技術が評価され、2007年にフランス政府から「無形文化財企業」(EPV)の認定を受けました。
マトンのジュエリーは卓越したジュエリーに付与される品質保証ラベル「ジョワイユリー・ド・フランス」(フレンチ・ジュエリー)を取得しています。
このラベルは、フランス国土の六角形の形の中に認証を表す刻印と工房の刻印が押されたもので、それぞれのジュエリーがフランス製ジュエリーの品質規格を満たして製造されたことを証明するものです。
もともとアトリエは1937年から続いているそうで、家族経営のブランドは現在4代目!
カラフルで精巧、心が晴れやかになるジュエリーの数々に見とれます。
草花、虫など自然からインスピレーションを受けたモチーフのジュエリー、アールデコ調のモダンなデザインのシリーズもあって幅広い品ぞろえ。
ブランドイメージはブラウン×グリーンに大きな樹、これは自然のイメージを表しているそう。
「マトン・パリ ジャパンのInstagramがありますよ!」と教えていただきました。日本語で説明があるのでぜひチェックしてみてくださいね。
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Martineau マルティノ
Martineau(マルティノ)は1906年に創業した金属および貴金属加工を専門とする企業です。「不思議のメダイユ教会」のメダイ正規製造元でもあります。
1世紀以上に渡り引き継がれてきた伝統的な製法と技術力を生かし、意味を持ったメダルやチャームに加え、金属製の小物やアクセサリー、またOEMでの企業・団体向けグッズやバッヂ等の幅広い商品を制作しています。
同社はフランス政府が優れた工業・手工業の企業に対して発行する「無形文化財企業」(EPV)に認定されています。
すべてフランスの職人が製造しているメダイやチャームは、“お守り”としても信頼感の高い製品。素材も真鍮からシルバー、ゴールドと幅広く扱っているそうです。
Celinni セリーニ
1967年以来家族経営のCelinni (セリーニ)。6代に渡るダイヤモンドのスペシャリストで、ブライダルジュエリーに強いブランドです。
メゾン セリーニは、フランスのエンゲージおよびウェディング市場だけでなく、ダイヤモンドイヤリング、ペンダントなどでジュエリー市場の主要なリーダーとして位置付けられています。
アントワープダイヤモンド取引所の特権的なメンバーであるメゾンは、仲介業者なしで、最大の国際ディーラーから直接ダイヤモンドを購入しています。
パリのダイヤモンドジュエラーとして15年以上の経験を持つCelinni。現在、フランスだけでなく、モロッコ、スイス、エジプトのさまざまなショールームで顧客対応をしています。
王道ともいえる美しいダイヤモンドリングの並ぶ様子はまさに圧巻でした!
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JAUBALET PARIS ジョバレ・パリ
2008年、誰もが憧れるパリ・ヴァンドーム広場の中心でスタートしたブランド、JAUBALET PARIS(ジョバレ・パリ)。
創業者のパトリック・バリュエルさんは、長年のキャリアを活かし、革新的な技術と秀逸なフランスの伝統的なノウハウが調和した世界を創り出しています。
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ジョバレの一番の魅力は、お客様のご要望と想像力に叶ったジュエリーをパーソナライズする力。インターネットを活用してオンラインでオーダーをすることができます。
宝石のカラーから金属、芸術的な創造に至るまで、ジョバレではオーダーメイドの創作の過程でお客様に寄り添い、唯一無二のジュエリーを形にしていきます。
幻想的な冒険のように、ユーザーが自分のジュエリーをバーチャル上でデザインすることができるのです。
ジョバレ・パリ Webサイト(日本語) https://www.jaubalet.jp/
今回、展示会でクローズアップしていたのはクロコダイルレザーを組み込んだメンズジュエリー。
社長のバリュエルさんは長年エルメスでお仕事をされていたとのことで、エルメスと同等のクオリティの革などを採用しているそうです。
幅広いデザインを揃えているジョバレ。カクテルリング(大振りで、宝石がセットされたリング)も得意だそうです。
見せていただいたモルガナイトのリング、大迫力でした!
POINT
- 歴史と卓越した技術を持つフランスの時計宝飾産業
- 昨年以上に活況を見せている分野。インターネットの活用など“新しい波”が起きている
- クリエイティビティや伝統の継承など、出展ブランドの多彩なアイデンティティにも注目
夢のようなオートクチュールから手頃なチャームまで、見応えのあるフランスのジュエリーを堪能した1日でした。
今回ご紹介したジュエリーブランドは、これから日本での取組先を探すブランドなど、ビジネスの状況はさまざま。それぞれのブランドのWebサイトやSNSをチェックしてみてくださいね!
【時計ブランドも充実していました…】
マクロン大統領も愛用するフランス最古のウォッチブランドLIP(リップ)を始め、時計のラインナップも充実していた本展示会。
出展ブランドの中でファッションの視点で興味深かったのが、機能的でスタイリッシュな時計を製造するHELBELIN(エルブラン)の注目モデル・アンタレス。
ベルトが80種類から選べます!カラーコーディネート用のブレスレット感覚でも活用できますね。
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。