映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」(2023年)は、漫画のドラマ化から生まれた映画。
そもそも、荒木飛呂彦先生の大人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」からスピンオフ漫画「岸辺露伴は動かない」が生まれ、2020年末にTVで実写ドラマ化され大きな話題に。
2009年にフランス・ルーヴル美術館のバンド・デシネ(マンガ)プロジェクトのために描き下ろされたフルカラーコミック「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」をドラマのキャスト・スタッフ中心で劇場長編映画に…と、制作過程も不思議な螺旋階段をめぐるような展開ですね。
今回は映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」の衣装について探ってみましょう。
ドラマ版「岸辺露伴」と、泉京香(飯豊まりえ)というキャラクター
ドラマ版「岸辺露伴は動かない」とは?
2020年末にNHKで実写ドラマ化された「岸辺露伴は動かない」。好奇心から奇妙な事件に巻き込まれる漫画家・岸辺露伴の物語です。
カラフルで奇抜な原作ムードを、よりダークで奇妙なイメージへ。
ドラマは原作漫画をリスペクトしつつ、実写ならではの総合的な独自の世界観を築き、大きな反響を呼びました。2021年末に第2期・2022年末に第3期とドラマ化が続いています。
人物デザイン監修/衣装デザインを担当したのは柘植伊佐夫さん。
人それぞれの個性と向き合うヘアメイク出身という希少な経歴で、役者と向き合い、その本人の雰囲気も活かして作品内のキャラクターをデザインしていくというアプローチが興味深い方です。
「岸辺露伴」では、演じる高橋一生さんの持つ個性を引き出し、漫画そのものとも少し異なる、しかし本質をとらえたキャラクターを作り上げています。
ドラマの世界観に惹かれる方が多く、ドラマ「岸辺露伴は動かない」展が開かれるほどの人気に。
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そして上記の写真に登場している飯豊まりえさんこそ、ドラマ版で大きくクローズアップされたキャラクター…露伴の担当編集・泉京香なのです。
飯豊まりえが演じる泉京香というキャラクター
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ドラマ版「岸辺露伴は動かない」で、大きく話題となったキャラ、泉京香。
大きなリボンに巻き髪がトレードマーク、圧倒的に愛らしい衣装は飯豊まりえさんに合わせたオートクチュール!
幻想と現実のエッジを描く作家・泉鏡花からその名を借りたと思われる泉京香。
原作漫画でも、描いているうちに「なんかむかつく」から「この生意気な感じがかわいいなあ」と荒木先生に思わせた奇跡のキャラクター。
ドラマでは露伴のバディ的存在としてより重要な立ち位置になりました。
柘植伊佐夫さんは、原作の持つ記号(ゴス、バロック、スポーティの混在…)と飯豊まりえさん本人の雰囲気を見て、“どんな人も可愛いと思えるように”リデザインしていったそうです。
「泉京香」の存在が岸辺露伴を補完し、際立たせる
柘植さんは、泉京香のことを「(死の匂いのする)露伴を補完する存在」とおっしゃっています。
岸辺露伴が「闇」「幻」「怪」「死」…といった異界のエッジに立つ人だとすれば、泉京香は「光」「現」「常」「生」の人。
露伴の持つ特殊能力“ヘブンズ・ドアー”のことも知らず、天真爛漫で空回りしながら憎めない愛らしさのあるキャラクターです。(それでいて、露伴に奇妙な話を持ち込んだり、ぐいぐい興味を示すのも泉くんなんですよね。)
アヴァンギャルドで不協和音的な露伴先生に対し、クラシックでエレガントな泉京香。2人のコントラストを、衣装はよりはっきり対比させます。
ドラマ化にあたって、泉京香の存在感を強めたことにより、ドラマがより開かれた奥行のある作品に。漫画に興味のない層なども含めた幅広い人々の心をとらえたのかもしれないですね。
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映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」、黒い絵の物語と衣装
映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」は、<黒い絵の謎>がテーマになっています。それも踏まえて、全体にダークで不穏な曇り空を感じる世界観の中の衣装を見ていきましょう。
実写の岸辺露伴はモノトーン
モノトーンでスタイリッシュな岸辺露伴(高橋一生さん)。アシンメトリーな着こなしで露伴の好奇心を表現しているそうです。
独特のヘアバンドは漫画を踏襲し、色は試行錯誤してブラックに。柘植さんによれば、このヘアバンドは岸辺露伴のアイデンティティなので実写化でも外したくなかったのだそうです。
映画では露伴のシャツが印象的。わざわざスタンドカラーをループにして、その中にブラックタイを通しています。
さらに、シャツの裾を見て!切り替えで白黒のバイカラーになっています。露伴らしい裾をアウトする着こなしでも、正装のシャツインに見えるようになっているのです。
ルーヴルに敬意を表しながらもアヴァンギャルドな露伴先生を表現する絶妙なデザインですね!
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「黒」をまとう奈々瀬と、若き日の露伴
映画に登場する謎の女性・奈々瀬(木村文乃さん)の衣装は、映画に通底するテーマ「黒」から黒になったとのこと。
いっぽう若き日の露伴(長尾謙杜さん)は、まだピュアな柔らかさのある白。真っ白ではなく、曖昧で有機的なオフホワイトを重ねて表現しているそう。
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泉京香のエレガントな紫とスタイリッシュな黒、優しいベージュ
最後に、泉京香の衣装を見てみましょう。
ドラマ版ではパフスリーブやパステルカラー、ツイードといった、華のような存在感も魅力的だった泉京香(飯豊まりえさん)。
映画では全体のダークトーンに馴染むように、よりシックでエレガントな衣装になっています。今回も贅沢にほとんどオートクチュールだったとのこと!
オークションや露伴邸のシーンではドレッシーな紫のワンピース。オーバーコートのように重ねている同色のシアー素材の軽やかさが効いていました。
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パリ・ルーヴル美術館での泉京香は、モッサ素材でしょうか、身体を包み込むようなベージュのロングコートの下に、革のショート丈ワンピース×黒タイツを着ています。
飯豊まりえさんの抜群のスタイルを強調するタイツルックは映画でも踏襲されました。
背中にジップアップラインがあるのですが、これは元々フロントジップだったのを飯豊さんの提案で前後逆に着ているとのこと。
ワンピース姿はほぼ全身「黒」ですが、柔らかで温かみのあるベージュのロングコートは、京香のおおらかな優しさ、善良さを表しているかのよう。
(自分の心を明かさないイメージから)重めのスタンドカラーブラックコートを着ている露伴とのコントラストも考えられていそうですね。
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映画の最後の方では、京香の人物背景や優しさが描かれ、彼女の魅力が深まります。けろっと「!」という発言もあり、やっぱり「光」属性…いやもしかして一番の“怪”、露伴の強敵こそ泉くん⁈
POINT
- 「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」は漫画原作、既に作られたドラマ独特の世界観を映画化
- ドラマ版では露伴と泉京香のキャラクター対比が出色。泉京香の衣装も注目された
- 映画は「黒」がテーマ。意味深い登場人物それぞれの衣装も堪能したい
この映画は美術も見事で、舞台となっている建築物も美しく撮影されています。
いつもの露伴の家(葉山の加地邸)、映画の主舞台であるルーヴル美術館はもちろん、横浜ホテルニューグランド、会津若松の旅館「向瀧」…建築好きの方にもおすすめ!
脚本・演出はもちろん、音楽も素晴らしく(特に、邦楽と洋楽の融合は面白い!)独特の世界観が貫かれている映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」。ぜひ観て、この雰囲気を堪能してみてくださいね。
原作「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」フルカラーコミックはこちら。
映画との共通点と違いを楽しんでみるのも面白いですよ。
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。