ロンドンの家政婦ミセス・ハリスがディオールのドレスを手に入れるためにパリへ!
爽やかな感動を呼ぶ映画「ミセス・ハリス、パリへ行く」(2022年イギリス、アンソニー・ファビアン監督)。
今回は「ミセス・ハリス、パリへ行く」の衣装について。ミセス・ハリスも心射抜かれたディオールの魅惑を堪能しましょう!
ミセス・ハリスの心をとらえたディオールの“魅惑”
ドレス…ディオール…!ミセス・ハリスの心に共感!
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お掃除の仕事をしながら、つつましく生きていたミセス・ハリス(レスリー・マンヴィル)。
雇い主の家でディオールのドレスに出会ったミセス・ハリスの表情!
圧倒的に美しいものに出会った感動、魅せられる心、誰しもが共感する想いですよね!
ミセス・ハリスの毎日のお仕事着も実直でチャーミングなコーディネート。
ミセス・ハリスを演じたレスリー・マンヴィルは自分の母親の1950年代の写真からヒントを得たそう。英国を代表するリバティの花柄プリントは、柄×柄でも品のいい愛らしさ。
チェックのコートやレースアップシューズの足元、花のついた帽子もミセス・ハリスらしいアイテムです。「花」は映画全体を通して大切なキーに。
ミセス・ハリスが心打たれた、花のエンブロイダリーが散りばめられたドレス、RAVISSANTE(ラヴィサント、魅惑)。
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ネーミングも完璧なこの“魅惑”ドレスは、ドレス単独で命を持つような存在感が重視されたそう。
後にミセス・ハリスの台詞に出てくるように、「ディオールはただの服ではない」のです。
美しさ、エレガンス、夢、情熱、憧れ…心を掴む圧倒的な何か。そしてミセス・ハリスのこれからの生き方を考えるきっかけの象徴に。
ディオールのオートクチュールを見事に再現!
1950年代の所作も再現!メゾン・ディオールのファッションショー
チャーミングでたくましいミセス・ハリスは単身パリに旅立ち、ディオールの10周年コレクションへ。(そこに至るまでの経緯や突破力はぜひ映画を観ていただきたい!)
この優美な時間と空間。映画では、1950年代のモデルの動きやポージングも当時の記録映像を参考にして再現したそうです。
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ショーの冒頭に出てくるのはあの有名な「ニュールック」。
1947年、まだ第二次世界大戦の傷がいえなかった世界に、ディオールの発表したコレクションは美しさや豊かさ、生きる喜びを掻き立てる平和の象徴としてセンセーションを巻き起こしました。
テーラード技術を駆使したシンプルで有機的な曲線、生地をたっぷり使ったエレガントなスタイル(戦時中は物資も制限されていましたからね)…ディオールのオートクチュール、そのドレスが生み出す世界観は世界中の女性の憧れの的となっていきます。
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映画では当時のディオールを再現したドレスが次々と登場し、ミセス・ハリスと共に私達も感激。
こちらはCARACAS(カラカス)。
ベビーブルーなどのパステルカラーも、戦争の反動で人気に。斜めに生地を使う手法はディオールの得意としたデザイン。
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ミセス・ハリスがメインビジュアルで抱きしめているドレス「VINUS(ヴィーナス)」は、映画のオリジナルデザイン。非対称な斜めのライン使いが、ディオールの特長をとらえています。
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看板モデル・ナターシャ(アルバ・バチスタ)の着るTEMPTATION(テンプテーション、誘惑)。圧倒的な美しさ。
ディオールが専属モデルのヴィクトワール・ドゥトルロウのためにデザインした真紅のイブニングドレスを基に、映画のために作られたオリジナル。
ナターシャの1950年代モデルらしい動きにも魅了されます。
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(このドレス、実は原作の「誘惑“ユウヤク”」とはまた違うんですよね。小説に書かれた、ピンクや白のシフォンの胸元×ビーズを散りばめた黒ビロードのドレスもちょっと見てみたかったです…。)
衣装デザイン・製作で苦労したこととは?
映画「ミセス・ハリス、パリへ行く」の衣装デザインはジェニー・ビーヴァン。
「眺めのいい部屋」「クルエラ」などでアカデミー賞を受賞している実力者です。
ビーヴァンはクリスチャン・ディオール社の全面協力を得て、アーカイブの情報を駆使しながら衣装を作り上げていきました。
苦労したのは「生地」だっだそう。ディオールのボリュームを出すために大量の生地が必要で、また当時は今より生地が厚く、その高級感のある重みを出すために…ふさわしい生地探し、大変だったでしょうね!
本作は、現在もある実際のディオール社の建物の設計図を元に、1957年のメゾンディオールを完璧に再現している点にも注目。
当時のオートクチュールサロン、メゾン内部の雰囲気が味わえます。
中でも感動するのは、どんな素晴らしいものも、さまざまな職人さん、スタッフといった働き手──ミセス・ハリスと同じような──の地道でたゆまぬ努力、熱意、美学が支えていることが伝わる、裁断室のシーン!
夢をかなえる勇気にあふれた楽しい奇跡のような物語でありながら、戦争の名残や労働問題、実存主義(visible/invisibleの使い方…)といった当時の社会情勢もとらえた味わい深い映画「ミセス・ハリス、パリへ行く」。
パリモード界に本当にいそうなマダム・コルベール(イザベル・ユペール)やイブ・サンローラン似の会計士アンドレ(リュカ・ブラヴォー)も必見(キャッシュで前払い、重要ですよね!)。
すべての働く人を応援するような視点が暖かい。困難な時代にも心励まされる、希望にあふれた映画です。
POINT
- 「ミセス・ハリス、パリへ行く」は、爽やかな感動を呼ぶ映画
- ミセス・ハリスにとってディオールのドレスはただの服ではない。夢をかなえる勇気に心励まされる
- ディオールが全面協力!1950年代のディオールの再現が素晴らしい。ブランドの裏方の描き方も必見
「ミセス・ハリス、パリへ行く」は原作の小説(ポール・ギャリコ)もおすすすめ。
ちなみに「私のハリスおばさんのイメージ、ちょっと違うんだよな…」と思ったら、それはかつての講談社版「ハリスおばさんパリへ行く」上田とし子さんのイラストを見ていたからではないでしょうか?(私です。)
久々に再読したら小説も懐かしくて素晴らしくて。映画と原作の違いを味わうのも醍醐味です。
【パリへ行く&リュカ・ブラヴォーつながり】エミリーの衣装のポイントもチェック!
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。