コラム

「チープ・シック」とは?今こそ1970年代の名著にファッションを学ぶ

おしゃれにかけるお金がない…何をどう着ればいいかわからない…

そんなおしゃれ迷子気分の時、ふと気になるのが「チープ・シック」という考え方です。

「チープ・シック」とはどういう意味?本の内容は?お金をかけないでファッションを楽しめるって本当?

今回は1970年代の名著で今もロングセラーを続ける「チープ・シック」から、おしゃれのヒントを学んでみましょう。

そもそも、シックとは?「チープ・シック」の革新性

シックの意味とは?「チープ・シック」とは?

シック(chic)とは「上品で洗練されているさま」「しゃれた、垢抜けた」「スタイリッシュさ」を指す言葉。フランス語が語源です。

シックなファッションには、やはりそれなりのお金がかかるのでは、ラグジュアリー(豪華)な生活でなければ無理なのでは…いつの時代もそう思われがち。

1975年、アメリカの二人のジャーナリストによって書かれた、斬新なファッション哲学ともいうべき本が出版されました。

チープ・シック ──お金をかけないでシックに着こなす法」。

2年後には作家の片岡義男さんの翻訳で日本にも紹介されます。

ベーシックを土台に、マイスタイルを作ることで賢くおしゃれを楽しもうというコンセプト。当時の若者のファッションに革新をもたらしたと言われています。

「チープ(安い)」と「シック」という相反するような言葉をひとつの概念にした点でも、この本は画期的ですね。

今では、「チープ・シックとは、お金をかけずに安いものをシックに着こなすこと」と、一般的な用語としても認識されています

「チープ・シック」と「ファストファッション」「プチプラ」の違いとは?

「チープ・シック」の考え方は、低価格がよいということではありません。
長く使えるベーシックアイテムを軸に、自分らしいスタイルを組み合わせて作っていこうというファッション哲学。その分、無駄に買うことがなくなる、というわけ。

どちらかというと大量生産ファッションに振り回されることへのアンチテーゼです。

ファストファッション(生産・販売を短いサイクルで速く回すファッション)も、プチプラ(プチプライス=低価格商品)も、作り手側から生まれた言葉。

「チープ・シック」は、圧倒的に「着る自分」側の視点を重視した表現なのです。

「チープ・シック」から学ぶ、ファッションのヒント

「チープ・シック」は、“あなた自身の生活や生き方、そしてあなたの個性とのハーモニーを生み出すような着こなしのヒントが、本いっぱいにあふれています。”

ぜひ手に取って愛読してほしい一冊ですが、少しだけエッセンスをご紹介。

ベーシックが大事!

第一章、心に飛び込んでくるのが「ベーシックという、とても大事なもの」というタイトル。

ジーンズ、Tシャツ…自分にとってのベーシックアイテムをそなえることがチープ・シックの第一歩。
“自分がなにを着ているか忘れてしまってほかのことにエネルギーを注ぎこむ心地良さ”をもたらすような、自分の基本となるウェアを考えてみましょう。

クラシックを取り入れよう

時を超えて生き残るクラシックな服や靴、ジュエリーも“長い目で見れば、とても安くつく”もの。
長く使える品質の良いものを1点取り入れることで、コーディネート全体が魅力的になり、自分らしい個性も際立っていきます。

発想を柔軟に!

アンティークを掘り出したり、スポーツウェア、ミリタリーやワークウェアを取り入れる、民族衣装のエッセンス、一枚の布を活かす…といった自由奔放な発想にあふれた「チープ・シック」。
「これは現代では取り入れられているなあ」と感じたり、「1970年代らしい!」「今また新鮮かも?」と感じたり…既成概念にとらわれず、自分らしいファッションに彩りをもたらすアイディアを再発見。

おしゃれは、人それぞれ

デザイナーのイブ・サンローランや「ハーパーズ・バザー」「ヴォーグ」の編集長ダイアナ・ヴリーランドのような著名人から一般人まで、さまざまなお洒落ピープルのインタビューが散りばめられているのも「チープ・シック」を読む面白さ。
片岡義男さんのビビッドな訳で、それぞれが独自のお洒落ポリシーを生き生きと喋っています。

「チープ・シック」は自分のライフスタイルとおしゃれを改めて考えるヒント

この「チープ・シック」を読んで、結局答えは何?とわかったようなわからないような気持ちになる人もいるかも。

それぞれの発言やスタイルはそのひと固有のもの。決まりきったルールやノウハウを得る本ではありません。

でも“「服ってエンタテインメントなのよ」”“「たとえ同じ服を着ていても、着こなしは自分だけのものにしていたい」”といった、リアルな感情にあふれた内容は、何度読み返しても発見があります。
掲載写真はすべてモノクロですが、鮮やかなのです。

答えが集約されるのではなく、可能性が広がっていくような感覚。

自分のスタイルを持つには、まず自分を信じなくてはいけません(イブ・サンローラン)”

自分のおしゃれに途方に暮れてしまったとき、普遍的なファッションへの愛や、自分は自分らしくあればいいのだという勇気の手がかりになる「チープ・シック」。

40年以上の時を超えて、若き日のイブ・サンローランや画家やエディター、オフィス・ワーカーや女子学生たちが、あなたの心に話しかけてくれますよ。

POINT

  • 「チープ・シック」は1970年代に生まれたおしゃれ哲学のロングセラー本
  • ベーシックを軸にマイスタイルを作る…自分のファッションを見つめ直すヒントが満載
  • インタビューも充実!自分らしいおしゃれを楽しむさまざまな人の考え方を参考にしよう

「チープ・シック」は40年以上前の本だからこそ、今改めて読むことで「何が本物として残り続けるのか…?」という発見がある点でもおすすめです!

※文中の“”内の文章は「チープ・シック」(C・ミリネア+キャロル・トロイ 著 片岡義男 訳 草思社)からの引用です。