目を見張るほどの美しき色。
青々とした植物や湖面に喩えられるのは「フォスフォフィライト(Phosphophyllite)」。
「宝石の国」で一躍注目を浴びたこの宝石は、小指の先ほどの大きさの結晶すら希少。
今回はフォスフォフィライトの基礎知識についてお届け。
多くの人を惹きつけるフォスフォフィライトとはどんな宝石でしょう。
フォスフォフィライトの和名。耐久性は高い?
フォスフォフィライトの和名と硬度。劈開は完全
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ギリシャ語でリンを意味する「phosphoru」と、葉を意味する「phyllon」の合成語であるフォスフォフィライト。
リンは植物にとって必要不可欠な栄養素であり、食品添加物にも使用されるなど私たち人間にとっても身近なもの。
鉱物名、和名は「燐葉石(りんようせき)」。
英語の語源をそのまま漢字に当てています。
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主な産出地はアメリカ、オーストラリア、ドイツ。
60年以上前に閉山したボリビアはポトシのセロ・リコ鉱山のものがいっとう美しいとされています。
現在目にする、カット済みで美しいフォスフォフィライトはほとんどがセロ・リコ鉱山のものだとか。
スペイン語で「宝の山」を意味する鉱山は、16世紀半ばから銀の採掘地としても有名な土地でした。
モース硬度は3から3半、単斜晶系のリン酸塩鉱物。
爪や岩塩のモース硬度が2半、それより少し硬い程度というとフォスフォフィライトの脆さが想像しやすいのではないでしょうか。
劈開は完全。
どの方向からの衝撃にも弱い鉱物なのです。
フォスフォフィライトの色と価値。原石は高価?
フォスフォフィライトのカラーバリエーションと希少性
「宝石の国」1話目で「薄荷色(はっかいろ)」と称されたように、ミントグリーンの印象が強いのではないでしょうか。
フォスフォフィライトはグリーンだけでなく、淡いブルーやカラーレスも産出。
歴史もまだ浅い宝石で、最初に発見されたのは1930年代。
その価値が認められ出したのが1950年代半ばから。
ボリビアのクラウス脈で発見された結晶はそれは美しく、同じくらい大きく美しい結晶はそれ以降見つかっていないと伝えられています。
産出量も少なく、産出しても色が薄すぎたりインクルージョンが多かったりと、宝石質のフォスフォフィライトを手に入れるのはとても困難。
基本的には通常鉱物標本としてキープされるか、コレクターが手にするかなので、原石はおろかカットが施された高品質のルースとなると入手難度はさらに高くなります。
それゆえ、フォスフォフィライトは宝石の中でももっとも希少で入手が難しく、高価な宝石とされているのです。
フォスフォフィライトの耐久性
宝石といえば、美しく耐久性があり、ジュエリーとして身に付けるのに困らない強度を兼ね備えている。
そうした印象が強いですよね。
ダイヤモンドはその最たる例であり、宝石についてあまり詳しくなければダイヤモンドは壊れないと信じている人も多いのではないでしょうか。
現に、鉱物が宝石として扱われる条件として「希少性」「美しさ」「耐久性」が挙げられます。
しかし、宝石の耐久性は硬度や劈開の有無、靭性など様々な要因から成り立っています。
ダイヤモンドの硬度は最高値である10ですが、劈開があるため耐久性が完璧という訳ではありません。
フォスフォフィライトは色味は美しく、希少性も高いのですが、耐久性の面をみると宝石の基準を満たしてはいません。
その扱いづらさは、カットを施すと3割しか成功しないと言われるほど。
そのため、大きな結晶が産出してもルースに仕立てられることは稀。
1ct以上の結晶を見る機会はなかなかありません。
原石のまま保管、または販売される傾向にあります。
取り扱い時の注意点は?
とにかく硬度が低い上に、劈開が完全なのであらゆる衝撃から避けてください。
また、軽くこするだけでも傷がつくため、流水で軽くゆすぐ程度に留めておくのが良いでしょう。
基本的には触らず、観賞用ケースに入れて保管することをおすすめします。
日常生活で硬度3以上のものは数多くあるため、触れる際にはくれぐれも注意を払ってくださいね。
POINT
- フォスフォフィライトはモース硬度が3から3半の宝石
- 良質な産地であったのはボリビアのセロ・リコ鉱山
- 現在では1ctを超える結晶の産出は稀
- ルースへの加工が難しく、基本的には原石のまま保管される
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。