地球が生み出した美しさのひとつ、宝石。
色も透明度も抜群に美しく、傷のない天然宝石は希少価値も高いことで知られています。
しかし、多くの天然宝石は処理によって美しさが引き出されているもの。
そのなかでも「色」を変化させる処理は最もポピュラー。
今回は天然宝石に施される処理に関して。
どんな種類がある?「処理石」とは、その価値は?
色を変化させる処理方法やそれぞれの特徴をお届けします。
大きくは二通りある「宝石の処理」
宝石の色を変化させる処理は、大きく二通りに分けられます。
ひとつが宝石の色自体を変化させる方法。
もうひとつが表面や傷部分など一部分のみ処理を施す方法。
それぞれに代表的な処理方法は3つ。合計6種類の宝石の処理方法をタイプ別にご紹介しましょう。
宝石の色自体を変化させる3つの処理
色自体を変化させる方法は、宝石の持つ性質を変化させます。
加熱処理
原石の状態で行われることが一般的で、明度や透明度に変化をもたらします。
宝石の色を変化させる代表的な処理であり、ダイヤモンドをはじめとする多くの宝石に施されます。
たとえば黄味のあるピンクトパーズは加熱によって黄色が除去され、インペリアル・トパーズの華やかなピンクが出現。
タンザナイトは褐色からバイオレットブルーへ、またサファイアやルビーは加熱によりアステリズムを生み出すことも。
放射線照射処理
放射線による色の変化は自然界でも起こり得ますが、数百万年の時間を数時間に短縮。
永続的なものではなく、時間経過により元の色に戻ったり退色のおそれもあります。
ダイヤモンドやトパーズで頻繁に見られます。
漂白処理
おもに多孔質の宝石に対して行われる処理。
色を明るくするだけでなく、染色の前段階として漂白が行われることも。
パールやカルセドニー、コーラルは色を明るく均一に。
翡翠は褐色部分を取り除くために漂白されます。
漂白処理を施された宝石は脆くなるため、耐久性向上のため含浸処理も併せて行われます。
宝石の見た目の色を変える3つの処理
染色処理
天然の着色成分や顔料を用いて宝石本来の色を強調したり、反対に天然ではありえない色味を楽しむ目的があります。
多孔質の宝石やインクルージョンのある宝石に施されます。
染料によっては退色しやすさ、耐久性に差が生じます。
宝石自体の色を変えているわけではないため、長時間アルコールや日光に晒さないように注意。
コーティング処理
宝石の表面をコーティングすることで、色や反射率を変える処理。
比較的簡易に行え、剥げやすいのが特徴。
宝石全体、もしくはガードルなど一部分のみに施します。
ミスティックトパーズなど、コーティング処理でしか楽しめない宝石も。
含浸(がんしん)処理
油浸(ゆしん)処理とも呼ばれ、ガラスやオイル、ワックス、樹脂を用いる方法。
インクルージョンが多い宝石に施され、ヒビを埋めることで外観の改善と耐久性の向上を目的とします。
※ただし、充填素材により耐久性は異なる
ほとんどのエメラルドに施されており、ダイヤモンドやルビーにも見られる処理です。
含浸処理に使用される充填素材は多くの場合無色。
充填により傷が見えづらくなることで、宝石の色味や透明度の向上が期待できます。
傷がなくなるわけではないため、超音波洗浄器は厳禁。
また、アルコールや紫外線に長時間晒すことは充填素材の変質につながるため避けて。
処理によって宝石の価値は変わる?購入時の注意点は?
ほどんどの天然宝石が何らかの処理を施されていると言われています。
だからこそ「非加熱」など無処理であることは高い価値を持ちますが、そもそも処理石とは?
天然宝石に分類される処理石
何らかの処理を施された宝石は「処理石」と呼ばれます。
人工宝石や合成宝石ではなく、天然宝石に分類。
エメラルドやサファイアのように処理が前提となっている宝石であれば、基本的に宝石の価値が下がることはありません。
※処理の種類により例外があります。
販売者はしっかりと「処理」の有無に関して消費者へ情報を開示することが求められます。
処理の有無がわからない、と言う販売者からは、高額になるほど積極的な購入はおすすめしません。
※費用面での兼ね合いで鑑別に出さない価格帯の宝石であれば、処理の有無が不明のまま販売されていることもあります。
ただし、処理の有無によって宝石の「価格」が変動することはあります。
基本的に宝石本来の美しさを引き出す処理であれば価値が落ちることはなく、むしろ処理のおかげでその宝石の持つ美しさを堪能できるのです。
エメラルドの含浸処理はその代表的なものといえるでしょう。
「処理がなければ」は「処理がない状態でこの美しさであれば」という希望的観測であり、処理がない状態で販売されていたならむしろ価格が低くなることもありえます。
模造宝石に注意
処理石を購入する際、最も注意が必要なのが「模造宝石」の存在。
染色やコーティングによって、より人気のある宝石に見せかけて販売されることもあります。
このような印象が強いため、処理石に関して良いイメージがないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
宝石本来の美しさを引き出すために行われているのか、価値を偽るために行われているのか。
処理石の価値は、どのような目的で行われているのかが重要といえるでしょう。
POINT
- 宝石の色を変える処理は大きく6つ
- 石自体の色を変化させる方法と、表面や一部に処理を施す方法がある
- 多くの処理は宝石のポテンシャルを引き出すことを目的に行われ、処理石だからといって価値がすべて落ちるわけではない
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。