透き通った赤を血に見立て、命や長寿の象徴として愛されていた「カーネリアン(Carnelian)」。
紀元前5000年に始まった古代エジプト文明から現代まで、カーネリアンは宝石として、アクセサリーをはじめとするさまざまな装飾品へと加工されていました。
今回は人類の歴史に欠かせない存在であるカーネリアンの基礎知識についてお届けします。
カーネリアンの意味、和名、石言葉は?
カーネリアンの意味と和名
古期フランス語でコーネリアンサンシュユ(cornel cherry)を表す「cornele」が語源。
コーネリアンサンシュユはヨーロッパ中部から西アジア原産の果実であり、日本で見るさくらんぼと比べて細長いのが特徴。
鉱物名は「石英(せきえい)」です。
モース硬度は6半から7、三方晶系の珪酸塩鉱物。
劈開はなし。
カーネリアンの和名は「紅玉髄(べにぎょくずい)」。
玉髄はカルセドニーを表しています。
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カーネリアンの石言葉
カーネリアンの石言葉は「頭脳明晰」。
古くから愛されてきた宝石というだけあり、権威の象徴として神聖視されてきました。
7月の誕生石
カーネリアンは7月の誕生石。日本で誕生石の制定はなく、イギリスとフランスで制定されています。
特にフランスではナポレオンが好んで身に付けた石として愛されていました。
参考記事:知っておきたい!誕生石の一覧と意味(石名の英語表記つき)
カルセドニーって?瑪瑙(アゲート)との違いは?
色と模様によって名前が異なるカルセドニー
エメラルドとアクアマリンがベリルという同じ鉱物であるように、多くの宝石は同一鉱物でも色によって名前が与えられます。
色が異なるのは微量に含まれる不純物が原因。
たとえば、純粋なカルセドニーは白いのですが、ニッケルを含むとクリソプレーズに。
ケイ酸鉄を含むことでブラッドストーンと呼ばれます。
カーネリアンは酸化鉄を含むことによって透き通った赤〜橙を発色します。
また、カーネリアンは単色。
縞模様のものは瑪瑙(めのう)と呼ばれ、カルセドニーとは区別されます。
しかし、その区分は明確でなく、日本ではカルセドニーも含めて瑪瑙と呼んできた歴史があります。
つまり、オレンジ色で縞模様の宝石がカーネリアンとして販売されていることもあるということ。
サードニクスと呼ばれるこの縞模様の宝石は、赤や橙に白が入った半透明から不透明の宝石です。
カーネリアンと混同されやすい宝石としても知られています。
カーネリアンとサードニクスに限らず、カルセドニーを購入する際には、名称だけでなく色や特徴も併せて伝えるとより安心ですね。
そもそもカルセドニーって?
鉱物名が石英であることから、すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれません。
カルセドニーはアメシストやシトリンの仲間でもあります。
カルセドニーは石英のいち変種であり、アメシストやシトリン(水晶と呼ばれる)とは結晶構造が異なります。
アメシストらの結晶がはっきりと目視できる単結晶なのに対し、カルセドニーの結晶は微晶質、または隠微晶質。
つまり、小さな結晶の粒が集まって塊となっているのです。
衝撃を加えても規則的に割れないため、劈開はなしとされます。
また、比較的多孔質のため、カルセドニーや瑪瑙の多くは着色が可能。
密度が高い、通常の光学顕微鏡でも観察が難しい隠微晶質のカルセドニーなど着色が難しいものもあります。
ナポレオンとカーネリアンとの関係
カルセドニーは硬度も十分にあり、またその性質から彫刻を施すのにも適しているため、多様な製品の素材としても重用されてきました。
宝石以外にも、カメオやインタリオ、印章、カップ、嗅ぎタバコ入れ、壺、食器へ加工。
ナポレオン家の八角形の印章もカーネリアンで作られており、またナポレオン本人もカーネリアンを身につけていたと伝えられています。
指導者に相応しい勝利を導く宝石として、中近東で好まれていたカーネリアン。
カーネリアンはナポレオン家を象徴する宝石として現代までも語り継がれています。
また、イスラム教の始祖であるムハンマドもカーネリアンで印章を作ったとされています。
取り扱い時の注意点は?
高温・紫外線で変色の恐れがある宝石です。
冷暗所を選ぶなど、保管場所には注意。
また、多孔質のため染料に浸からせないなどの注意は必要。
日常での着用に問題ないとされる硬度の宝石ですが、衝撃を避けるのはもちろん、保管時には硬度の低い宝石と分けて保管しましょう。
POINT
- カルセドニーの一種であるカーネリアン
- アメシストやシトリンと同じ石英の一種
- 結晶構造が異なり、カルセドニーは微晶質、または隠微晶質
- ナポレオンやムハンマドも好んだ指導者の宝石
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。