イミテーションパールにガラスの宝石。
緻密な造形に目を惹くデザイン。
きらびやかな輝きを帯びたコスチュームジュエリーは、時に「本物」を超える存在感をも放ちます。
1920年代に誕生したコスチュームジュエリー。
「ジュエリー」というカテゴリーにユニークさや遊び心を取り入れ、表現の幅がぐっと広がった時代でもあります。
今回はコスチュームジュエリーについて。
コスチュームジュエリーの定義や有名なブランドをご紹介しますね。
コスチュームジュエリーの誕生
コスチュームジュエリーの定義とは
「コスチュームジュエリー(costume jewelry)」とは、ファインジュエリー(貴金属や宝石で作られたジュエリー)に対し、素材を限定せずデザイン性やファッション性に価値を求める装飾品を指します。
コスチュームジュエリーは、大きく二種類に分けられます。
「本物」に似せることを目的としたものと、コスチュームジュエリーならではの表現を重視したもの。
前者は、主にダイヤモンドにサファイア、ルビーやエメラルドなどの高価な宝石を模しており、本物らしさを安価に楽しめるといったメリットがあります。
後者は、ガラスや化学繊維、合成樹脂などの開発が盛んになり、それらの素材の特性を活かしたデザインが特徴的。
素材の価値自体に重きをおくのではなく、素材の特性を活かしてデザインされるのがコスチュームジュエリーなのです。
コスチュームジュエリーの誕生と1920年代アメリカ
第一世界大戦後、アメリカは「大量生産時代」に突入。
好景気はライフスタイルやファッションに変化をもたらし、女性に職を持つ機会を与えました。
ファッションもコルセットを着用するような装飾性優先のファッションではなく、歩きやすい膝丈のスカートなどの機能性を重視。
シルエットも直線的、ウエストの細さや胸の豊かさを強調するのではなく、ローウエストのワンピースが流行。
その中で財産的な意味を持つファインジュエリーではなく、新しさを纏ったコスチュームジュエリーが流行したのは自然な流れともいえますね。
時代を牽引したコスチュームジュエリーブランド3選
素材・製造年代にとらわれず、自由な発想でデザインを楽しむコスチュームジュエリー。
現代でも様々なブランドがありますが、コスチュームジュエリーを語る上で外せない3つのブランドをご紹介。
CHANEL(シャネル)
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フランス生まれのハイブランドといえば、ファッション好きなら誰でも思い浮かべる「シャネル」。
自立した女性のため、自由を掴み取る女性に向けて生み出された数々のコレクションは、当時の女性たちに勇気と希望を与えました。
洋服だけでなく、コスチュームジュエリーも手がけた「ココ・シャネル(Coco Chanel)」。
イミテーションパールのネックレスを好んで身につけた話は有名ではないでしょうか。
「大切なのは洋服にマッチしたジュエリーを身につけること」を公言していたシャネルにとって、ジュエリーとは富の象徴ではなく自身を表現するツールのひとつだったということ。
ジュエリーを資産的価値のあるもの、権威の象徴としてみなす風潮が根強い当時のヨーロッパで、いち早く新しい価値観を提唱していたのがシャネルだったのです。
Miriam Haskell(ミリアム・ハスケル)
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1926年、アメリカ発祥の「ミリアム・ハスケル」。
創業者の名を冠したブランドは、海を越えてヨーロッパでも絶大な人気を誇っていました。
ブランド立ち上げ前にはコスチュームジュエリーの輸入販売を行っており、取り扱いブランドのなかにはシャネルのジュエリーも。
「ミリアム・ハスケル」のジュエリーは、職人による手作業によって生み出されていました。
接着剤を用いず、本物の宝石と同じように爪で留められたハスケルのジュエリーたちは、現在でも高い評価を得ています。
パーツの付け替えで幾通りもの付け方を楽しめる機能性。
流行の最先端であったフランスを意識したデザイン。
世界中から仕入れた一流の素材。
ミリアム・ハスケルのコスチュームジュエリーたちが、衰えることのない人気を博し続けている理由はハスケルの惜しみない情熱があってこそ。
Trifari(トリファリ)
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1912年にスタートした「トリファリ」。
アメリカで最も注目を集めたコスチュームジュエリーブランドのひとつで、「ラインストーンキング」の異名を持ちます。
1930年に加入したデザイナー「Alfred Philippe(アルフレッド・フィリップ)」の存在により、トリファリの存在感はさらに強まっていきました。
カルティエ、ヴァンクリーフ&アーペルといった錚々たるブランドを顧客として持っていたフィリップが生み出すデザインは、一目でトリファリとわかるような洗練されたものばかり。
使用する金属には繊細な表情がつけられており、マハラジャの宝石をイメージしたトゥッティ・フルッティシリーズはブランドを代表するシグニチャとして、今もなお人々の心を掴んで離しません。
コスチュームジュエリーの魅力はその独創的なデザインに留まりません。
流行のジュエリーとはまた違った存在感があるからこそ、「ジュエリーを身につける楽しさ」をあらためて教えてくれることでしょう。
POINT
- 素材の価値にとらわれず、素材の特性を活かすコスチュームジュエリー
- コスチュームジュエリーは大量生産時代のアメリカで発展
- 富の象徴であったジュエリーに新しい価値観を投げ入れたのがシャネル
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。