「自然が生み出した美しい石」、宝石。
実際には天然で産出する天然宝石以外に、合成宝石や人造宝石と呼ばれる人の手で生み出された宝石もあります。
ラボグロウンダイヤモンドは合成宝石の一種ですね。
「天然」「合成」のように、宝石の前に冠する言葉のひとつに「模造」があります。
この模造宝石はどのような宝石を指すのでしょう。
今回は模造宝石について。
合成宝石・人造宝石との違いや、「貼り合わせ」「ガラス」など模造宝石の種類をご紹介します。
模造宝石とはどんな宝石を指す?
宝石を模して造られたものを「模造宝石」、または「イミテーション(imitation)」と呼びます。
外観は似ているものの物理的性質は全く異なり、みかけのみ天然宝石と酷似しています。
その種類も多岐にわたり、天然と見紛うほど精巧に作られたものも存在します。
模造宝石の材料として用いられるのは、おもにガラスやプラスチック。
つまり、「合成ルビー」であれば性質が「天然ルビー」と似ているのに対し、「模造ルビー」は赤いガラスやプラスチックが素材なので、「天然ルビー」とはまったくの別物なのです。
「天然宝石」「合成宝石」「人造宝石」「模造宝石」の違いについては、下記記事もご参照ください。
模造宝石の種類
外観を天然宝石にみせる方法はいくつかあり、似せたい宝石によって用いられる方法も異なります。
ここでは代表的な模造宝石をご紹介しますね。
- ダブレット、トリプレット
「貼り合わせ」とも呼ばれ、二つの素材を貼り合わせたものを「ダブレット(doublet)」、三つの素材なら「トリプレット(triplet)」。
石を大きく、色を美しく見せるほか、薄い宝石の強度を高めることを目的とし作られます。
たとえばオパール。
強い遊色効果を引き出すため、薄いオパールの欠けらを黒いプラスチックに貼り合わせ、ブラックオパールに見せかけます。
上面だけでは判断が難しく、側面から確認する必要があります。
また、模造宝石の素材としてガラスやプラスチックが一般的と述べましたが、天然宝石や合成宝石も素材となります。
石の上部を天然宝石、下部は合成宝石やガラスといったように、そのまま使用するのではなく組み合わせてダブレットやトリプレットに仕上げるのです。
先ほどのオパールを例に挙げると、黒いプラスチックの代わりにオニキスも使用されます。
- 練り
宝石やそのほかの素材を細かく砕き、樹脂などで成形したもの。
ターコイズやラピスラズリなど、不透明石の模造宝石を作る際に用いられ、練ターコイズや練ラピスと呼ばれます。
ターコイズの粉末や破片を樹脂で固めた練ターコイズなどは、一目で判断するのは難しいとされています。
- 染色
その宝石が元々持っている色を強調するため、施される染色。
パールや珊瑚、ターコイズ、カルセドニーなどに古くから施されています。
しかし、染色によって宝石の種類を偽るものも存在するのです。
たとえばハウライト。
白く多孔質で染まりやすい性質を持っており、ターコイズに似せるため青色に染められます。
- ガラス
ラインストーンやスワロフスキー社のガラスのように、それ自体にバリューがあるガラスもあれば、宝石を模したガラスも作られています。
ダイヤモンドやクオーツ(水晶)のほか、アクアマリンやエメラルド、サファイアなどの色石もガラス製を天然と偽って販売するケースも。
天然と模造。誤って購入しないためには?
模造宝石は見分けられる?
宝石の種類にもよりますが、ここを見れば必ず天然か模造かを見分けられる!と断言するのは難しいです。
特にジュエリー・アクセサリーに仕立てられているダブレットやトリプレットの場合、接着面が見えないため貼り合わせと知らずに購入してしまうケースもあります。
では誤って購入しないためにはどんなことに気をつければ良いのでしょう。
ひとつは信頼のおける鑑別機関が発行した鑑別書の有無を確認すること。
鑑別書があっても知らない機関が発行している場合には、その機関についてよく調べてみてください。
もうひとつは、適切な知識を身につけ、購入時に不明点を明らかにすることです。
合成も模造もまとめて偽物とされることがありますが、その原因のひとつが「合成」や「模造」を売り手が明記せず、あたかも「天然」であるかのように販売しているため。
天然宝石、合成宝石、模造宝石それぞれに適正価格があります。
本来であれば売り手側がしっかりと伝えるべきこと。
しかし、良心的な販売者ばかりではないのも事実です。
何も書いていないから「天然」と判断するのは危ないので、必ず販売元に確認をとりましょう。
天然、合成、模造。それぞれの宝石の魅力とは
モザイクオパールのように模造宝石ならではの魅力を持っているもの。
アンティークジュエリーに用いられ現存しているものなど、模造には模造の楽しさがあります。
天然や合成、模造と、それぞれの特性を知ることは自衛の手段となるだけでなく、楽しみ方の幅も広げてくれます。
ジュエリーや宝石を楽しみ世界を広げる、ヒントのひとつとなれば幸いです。
POINT
- 模造宝石とは、天然宝石の外観に似せたもの
- 素材は天然から合成、ガラスなど多種多様
- 天然、合成、模造それぞれの特性を知ることで、自衛だけでなく楽しみ方も増える
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。