人が宝石の美しさに干渉できるのはカットだけ、ではなく例外もあります。
合成ダイヤモンドに合成ルビー、合成サファイアに合成エメラルド。
人の手によって生み出されるのが合成宝石です。
自然が生み出した天然宝石とはどう違うのでしょう。
今回は合成宝石について。
天然宝石や人造宝石との違い、合成宝石の種類や作り方についてお届けします。
購入時のヒントのひとつにしてくださいね。
天然宝石以外の3つの宝石。合成と人造の違いは?
何億年もの時を経て生成される天然宝石に対して、数週間や数日で生み出される宝石があります。
合成宝石、人造宝石、模造宝石。
人の手によって生み出されるこの3つの宝石は、天然宝石とは区別されます。
合成・人造・模造。3つの人工宝石とは
合成宝石、人造宝石、模造宝石にはそれぞれの特徴があり、天然にはない魅力や利点を持つものも存在します。
では、その違いとはどういうものなのでしょうか。
- 天然宝石(天然石)
天然に産出した鉱物のなかでも、「美しさ」と「希少性」、「耐久性」を持つものを宝石と定義します(真珠や珊瑚といった鉱物以外の素材も含まれる)。
同じ宝石でも産地によって個性があり、色や結晶の形・大きさ、インクルージョンなどの違いがみられます。
参考記事:宝石とは何?宝石と鉱物との違いとは?宝石の基本、定義と種類
- 合成宝石(合成石)
合成宝石は天然と同じ成分を用いて作られた宝石。
基本的には天然宝石と同じ化学組成や結晶構造をもっているため、外観だけでなく性質も天然宝石と酷似しています。
比較的不純物が少なく、安定した供給が可能なため、宝飾用以外に工業用としても利用。
天然宝石と比べ安価ですが、時間とコストがかかる合成宝石も存在します。
デビアスが展開するLightbox(ライトボックス)では、合成ダイヤモンドの特長を生かしたブランディングを行うなど、「合成」を明示したブランドも登場。
参考記事:「合成ダイヤモンド」「ラボグロウンダイヤモンド」とは?作り方や今後の市場動向
- 人造宝石(人造石)
自然界に存在しない化学組成や結晶構造をもっているのが人造宝石。
代表的な人造宝石は、CZ(キュービック・ジルコニア)やGGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)。
- 模造宝石(模造石)
宝石の外観を模して作られた模造宝石は、プラスチックやガラス、天然宝石の一部を用いて作られます。
性質的には宝石と呼べるものではなく、ガラスパール、スワロフスキーも模造宝石の一種。
合成宝石と人造宝石の違いは「成分」
人造宝石はその名の通り、人が作り出した宝石のことを指します。
でも、合成宝石も人が作り出した宝石では?と疑問が残りますよね。
合成と人造、ふたつの違いは成分。
「合成」がつけられる宝石は自然界に存在する宝石であり、天然宝石と成分が同じ。
対して、人造宝石は自然界には存在せず、ダイヤモンドの模造品として扱われることの多いCZは合成ダイヤモンドとは呼ばれません。
合成宝石の種類と作り方。天然との見分け方は?
天然宝石と合成宝石は成分が同じで、違いは生成時に人の手が加わっているかどうか。
管理された環境で生成されるため、合成は天然に比べて傷や不純物が少ないとされています。
とはいえ、パッとみただけで天然か合成かの判断はできません。
まずは、合成宝石にはどんな種類があるのかをみていきましょう。
代表的な合成宝石一覧
英語でシンセティック・ストーン(synthetic stone)と呼ばれる合成宝石。
すべての宝石が作れるというわけではなく、合成できない宝石もあります。
- アレキサンドライト
- アクアマリン
- モルガナイト
- エメラルド
- オパール
- クォーツ各種
- ルビー
- サファイア
- スピネル
- ダイヤモンド
合成ルビーや合成サファイアは市場にも多く出回っており、合成クォーツは時計や通信機器にも用いられています。
合成宝石の作り方
合成宝石が作られる際、おもに3つの方法が用いられます。
- 融液法
火炎溶融法(ベルヌーイ法)
結晶引き上げ法(チョクラルスキー法)
フローティングゾーン法
- 溶液法
フラックス成長法
熱水成長法
高圧高温法(HPHT)
- 気相法
化学気相蒸着法(CVD)
宝石の材料を結晶化し、成長させる過程で用いる機械や素材によって分類されます。
生じる結晶の成分だけでなく、結晶化を促すために異なる化学成分を加えることも。
また、宝石によって最適な合成方法も異なります。
熱と圧力を加える方法や、溶かした材料をゆっくり冷やし結晶化させる方法など、さまざまな方法があるのです。
さいごに、天然宝石と合成宝石を見分けるのが可能か。
それは宝石の種類により異なります。
カットや結晶が成長する際の成長線、不純物の形状を顕微鏡で確認できるものもありますが、素人目では難しいのが実際のところ。
そのため、購入の際にはしっかりと確認したいものです。
合成宝石のメリットのひとつに、天然では手に入らないようなサイズや色を気軽に楽しめるといった点があります。
それぞれ違う魅力を持つ天然宝石と合成宝石。
どちらを購入するにしても納得して購入できるよう、信頼できるブランド・ショップを選びましょう。
POINT
- 合成宝石は天然宝石と同じ化学組成や結晶構造を持つ
- 人造宝石は自然界には存在しない、人が生み出したもの
- 合成できる宝石は限られている
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。