“旅するジュエリー”をコンセプトに展開するブランド、PETHICA(ペシカ)。
バックパッカーとして世界50カ国を旅したデザイナーの旅の思い出、そこから生まれるジュエリーの物語を綴るコラムを連載しています。
今回はカンボジアを旅した時のお話です。
カンボジアの子どもたちとの出会い。
カンボジアといえば、寺院巡りが有名です。
デザイナーもバイクタクシーをその日毎にハイヤーして、寺院という寺院をたくさん廻りました。
カンボジアは熱帯モンスーン気候に属するため、年中高温多湿で、とても暑いです。その上、遺跡のあるエリアは、高い建物などもないため日影がなく、昼間は太陽の陽射しをガンガンに浴びることになります。
周りにあるちょっとした木の木陰で休んだり、帽子やスカーフで日除けをしながら廻ることになります。地元の人も遺跡が作る影に座って佇んでいることも多いです。
ただ、遺跡もそこまで高さがあるものではないので、太陽の位置によってほんの少しの幅の影があるといった感じです。だから、遺跡観光をしていると、石の後ろや階段の脇など、ひょんな場所から人が出てきて驚かされたり、迷路のような遺跡の中で昼寝をしているカンボジア人に会ったりします(笑)
ある寺院を巡っていた時のこと。
遺跡の柱の影から子どもが出てきました。最初は、こんなところに小さな子どもが、と思いました。すると、あっちの柱からも、向こうの柱からも…。一人、二人とどんどん子どもが現れてきます。
なんだか少し神隠しのような感覚を覚えています。瞳のかわいい子どもたちが、私の後をついてきて、どんどん増えていくのです。
子どもたちは、かくれんぼ・おにごっこをしていた模様。寺院(遺跡)のそばに学校があったようです。
キャッキャと言いながら、しばらく着かず離れずついてきます。真っ黒に焼けた肌に、キラキラとした瞳。人懐っこくてかわいらしい子たちでした。
すると一人の男の子が、私の前に来て、
「One for you!」(ワン・フォー・ユー!)
と言って後ろにまわしていた手を前に差し出してきたのです。
そこには、小さな野花一輪が。
きゃ!!え?私に??♡♡と心の中で驚き喜びました。こんな小さな男の子なのに、女性にお花を渡してくれるなんて、いっちょ前だなぁ、ロマンチックだなぁ、なんて。
その男の子が少し恥ずかし気にして私を見つめてくる仕草もかわいくて(しかもハンサムな!右の男の子です。)、私は喜んで舞い上がっていました。
「Thank you♡」
とお花を受け取ろうと、私も手を出しました。
すると男の子は、また「One for you!」と言ってお花を持った手を差し出してくるのですが、お花の手を放してくれません。
「Thank you♡」と私はまた言いました。
また男の子は「One for you!」と言いますが、お花はなかなかくれません…
とはいえ、男の子は去る様子もなく、私への一輪の花を渡したい気持ちはずっとあるようです。このやりとりを数回繰り返しました。
ん?ん???
私は男の子の目線にかがんで、「Flower for me??」(お花くれるの?)という感じで尋ねました。
すると、
「One for One dollar for you!!」と。
ん?ん?ん?えーーーーー!!!
なんと、私は子どもにお金をせびられていたのです!
彼の英語がつたなかったのか、私が舞い上がって思い込んで聞き取れなかったのか…。
一輪1ドルだそうです。
まるで小さな王子からお花をもらえるかのように舞い上がって喜んでしまっていたので、とてもショックは大きかったです。それと同時に恥ずかしさも。そして、どうしよう…と。周りにいる他の子どもたちも、少し離れた場所からニヤニヤとずっと私の顔を見つめてきます。
冷静に考え直し、お金は子どもにあげないと決めていたので、
「No money for you.」と断りました。
残念そうでしたが男の子は諦め、また元のように走り回ったりして遊びに戻りました。
旅をしている中で、子どもがお金をせびってくる度に、胸が痛くなります。こういうことで得たお金で暮らす子どもたちは将来どんな人間になるのだろうと。
そんな私の心配をよそに、子どもたちは無邪気にまた私にからんできます。少しだけ持ち合わせていた日本のキャンディーを渡すととても喜んでくれました。
この素直に喜ぶ笑顔を絶やさないで生きていってほしいな。私もなんだか舞い上がって恥ずかしい想いをしたけれど、君たちの笑顔を忘れないで生きていくよ、と心の中で優しい気持ちで思いました。
楽しそうに笑っている彼らにカメラを向けると、いいよーという感じだったので、その地を離れる前に写真を撮らせてもらいました。
ほんとうにかわいい。
そして最後に「One photo for One dollar. 」と言われました(笑)
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PETHICA Designer / Creative Director
世界を回って広大な自然を感じ、さまざまな人と出会い、笑ったり涙したり、耳をかたむけたり。
そうして受けたインスピレーションがひとつにつながって、ストーリーから生まれるジュエリー”旅するジュエリー”をデザインから制作までしています。