「ジュエリーのデザインを選ぶ」というと、装飾的なことばかりに目が向いてしまいますが、石留めや金属加工といった技法にもデザインは活きています。
石の留め方ひとつにしても、ブランド、デザイナー、そして職人の技が光るのです。
「さっき見たのと同じようなデザインのリングだけれど、このリングはどこか違う」
もし、そう感じたことがあるのなら、石留めに注目してみてはいかがでしょう。
ジュエリーの基本デザイン中編である今回は、「石留め」についてお届けします。
前編はこちら:ジュエリーの基本デザイン:宝石の配置・モチーフ編
石留めデザイン:爪留めの種類と名称
石留めは大まかに「爪留め」「彫り留め」の2種類と、そのほかの石留めに分けられます。
参考記事:石留めとは何?実は豊富な石留めの種類
ここでは「爪留め」の種類をご紹介。
立爪
おもに一個石の宝石に用いられる石留めの方法で、婚約指輪のデザインに多く用いられています。
光を取り込みやすいため、カラットの大きなダイヤモンドには欠かせません。
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1886年にティファニーがこの立爪を開発したため、6本爪のものは「ティファニー・セッティング」とも呼ばれます。
また、立爪は爪の形状によって印象が大きく変わります。
丸爪や丸線爪、平爪やけん爪、ふくろ爪、鬼爪、おがみ爪といった種類があり、石のカットや種類、ジュエリーのデザインごとに適した爪があります。
メレ(小粒石)の爪留めは大きく分けて線爪、割爪、板爪の3種類。
フクリン(覆輪)留め
「ベゼルセッティング」や「ふせ込み」とも呼ばれ、石の周囲を爪で覆うように留める方法。
石のガードルを覆うため、レール留めや彫り留めと同じく爪にものを引っ掛けにくいのが特徴。
ミルグレイン
「ミル打ち」とも呼ばれる、地金から起こした小さな金属の粒で石を留める方法。
たくさんの小さな粒が光を反射して輝くため、華やかな印象を与えます。
石を留めるだけでなく、装飾としてリングの淵などの地金部分に施されることも。
レール留め
「チャンネル・セッティング」や「溝留め」とも呼ばれ、2本の地金面で石を留める方法。
石と石の間に地金がなく、バゲットなどの四角いカット石に施されます。
石留めデザイン:彫り留めの種類と名称
地金に穴をあけて石をはめ込んだ後、石の周りの地金をタガネで彫り起こして留めるのが「彫り留め」。
一般的には、爪留めよりも高い技術力が必要です。
チョコ留め
一見覆輪留めのように見えますが爪はなく、石のガードル部分を地金で留める彫り留めの一種。
照り返し部分とラウンドの石があいまって、「猪口(ちょこ)に注がれたお酒」のようにみえることから名付けられました。
マス留め
四角形のマスを作ってから四隅の地金を起こし、そのなかにラウンド・メレを留める彫り留めの一種。
石と石の間に地金があり、一文字のリングやバータイプのネックレスに採用されます。
五角形・六角形のマスなら「亀甲留め」、マーキース型のマスなら「レモン留め」と呼ばれます。
パヴェ留め
フランス語で石畳を表す「パヴェ」のように、隙間なく石を敷き詰めたデザインで、「ペイブ・セッティング」とも呼ばれます。
石と地金の間に隙間を作らないよう密に留めるパヴェ留めは彫り留めだけでなく、爪留めも含まれます。
玉留め
パヴェは隙間を作らないよう石を配置しますが、玉留めは石と石の間の地金をミルタガネで玉状にします。
そのため地金自体が輝き、石が少なくてもボリュームがあるように見えます。
作った玉は泡のように見えることから「アワ留め」とも。
五光留め
「後光留め」や「星留め」とも呼ばれます。
石の周囲に光が差し込んだかのような筋を彫り、石の輝きをより引き出すデザイン。
石留めデザイン:その他の石留めの種類
ジュエリーショップなどでは「爪留め」「彫り留め」のジュエリーを目にする機会が多いかもしれません。
しかし、爪や彫り以外でも、石を留めることができるのです。
芯留め
片穴のルースに用いられ、主に真珠を留める技法。
留めるといっても爪を倒すのではなく、穴に芯を通して接着剤で固定します。
爪がないため、ルースそのもののフォルムを損なわないセッティングが可能です。
リングやネックレス、ピアスとさまざまなジュエリー・アクセサリーでみられるデザイン。
ミステリー・セッティング
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芯留めと同じく正面から見たときに爪がないため、石の美しさを存分に堪能できる留め方。
石自体に加工を施し、セッティングをするため、高度な技能を必要とします。
ヴァンクリーフ&アーペルが開発した、ブランドを象徴するデザイン。
テンションセッティング
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地金の張力を利用して石を留めるため、アームにボリュームがあるデザインです。
石の側面が見えるため、まるで石が浮いているかのような印象を与えます。
ニーシングが開発した、モダンなデザイン。
はさみ留め
爪を使わず、彫り留めでもないはさみ留めは、その名の通り地金に作った溝に石を挟んで留めます。
テンション・セッティングのように見えますが、石座があるため張力で留めているのではありません。
同じカット、色、大きさの宝石も、どの石留めを選ぶかで随分と印象が変わるので、これからジュエリーを見る際には意識してみてはいかがでしょう。
どの石にどんな石留めが合うか、想像してみるのもおすすめです。
POINT
- 石留めは大まかに分けると「爪留め」「彫り留め」の2種類
- 宝石の種類やカット、デザインによって、適した石留めが異なる
- ティファニーやニーシングなど、ブランドが生み出した石留めがある
【あわせて読みたい】ジュエリーの基本デザイン:つづいて後編は金属加工・仕上げについて!
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。