希少で硬く、美しさも備えた「皇帝の宝石」アレキサンドライト(alexandrite)。
四大宝石(ダイヤモンド・ルビー・サファイア・エメラルド)にアレキサンドライトを加えて「五大宝石」と呼ぶこともあるほど、宝石のなかでも特別な存在です。
ところでアレキサンドライトといえば、どんな色を思い浮かべるでしょうか。
緑?それとも赤?
今回は変色性(カラーチェンジ)という性質を持つ宝石・アレキサンドライトについての基礎知識をお届けします。
アレキサンドライトの意味、和名は?いつの誕生石?
アレキサンドライトの意味と和名
19世紀中頃、ロシアのウラル山脈で発見されたアレキサンドライト。
最初はエメラルドかと思われていましたが、採掘後光を当てて見てみると緑の宝石が赤く変化したため、クリソベリルの一種と判明。
「緑」と「赤」はロシア帝国のシンボルカラーでもあったことから、当時の皇太子アレキサンダーⅡ世(Alexander)にちなんで名付けられました。
また、アレキサンダーⅡ世の誕生日に発見された宝石だからといった説もあります。
鉱物名は「天然クリソベリル」。
クロムを含むアレキサンドライトは、変色性を示さない鉄やバナジウム由来の緑色クリソベリルとは区別されます。
モース硬度は8半で、斜方晶系の酸化鉱物です。
アレキサンドライトとクリソベリルの和名は「金緑石(きんりょくせき)」。
参考記事:宝石の和名が知りたい!名付けに役立つ宝石の名前や漢字のヒント一覧
石言葉
アレキサンドライトの石言葉は「秘めた思い」「高貴」「出発」。
白熱灯やロウソクの光の下で顔を覗かせる赤色に、情熱を感じたのかもしれませんね。
6月の誕生石
メジャーではありませんが、アレキサンドライトは6月の誕生石。
その色味と個性豊かな佇まいは、同じ6月の誕生石であるパールやムーンストーンとは一味違った個性をかなえてくれます。
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アレキサンドライトはなぜ色が変わる?
光源によってその姿を変えるアレキサンドライト。
発見当初は色が変化する理屈がわかっていなかったため、神秘的なパワーが宿った宝石として信じられていました。
しかし、現在でも宝石の特性によって色の変化が起こると理解できていても、実際はいまいちピンときませんよね。
いったいなぜ色が変化するのでしょう。
アレキサンドライトに含まれる「クロム」
アレキサンドライトの変色は、含まれている微量のクロムによって引き起こされます。
鉱物は結晶になる過程で不純物を取り込むことで、無色であってもさまざまな色を表します。
たとえばクロム。
コランダムに取り込まれるとルビーの赤色を。
ベリルに取り込まれるとエメラルドの緑色を。
そしてクリソベリルに含まれると、その両方の顔を持つアレキサンドライトが生まれるのです。
アレキサンドライト中の微量なクロムは黄色を吸収し、自然光下では青緑色を反射、白熱光下では赤紫色を反射。
つまり、この変色性が見られなければアレキサンドライトではないということ。
色が変化しなければ緑色であってもクリソベリルと呼ばれ、アレキサンドライトとは区別されるのです。
良質なアレキサンドライトはロシア産とされていますが、現在は産出もごく限られています。
そのほかブラジル、スリランカ、マダガスカルといった国でも産出しますが、決して供給量が多い宝石とは言えません。
宝石がカラーチェンジする「変色性」とは
変色性を持つ宝石はアレキサンドライト以外に、サファイアにスピネル、アメシストにガーネットが挙げられます。
なかでもアレキサンドライトの緑から赤へのカラーチェンジは特にわかりやすいため、変色性を「アレキサンドライト効果」と表すことも。
色の変化が大きいほど価値が高いとされ、劇的な色の変化を示すアレキサンドライトは「昼のエメラルド」「夜のルビー」と称えられます。
また、インクルージョンを平行に隙間なく含む鉱物にカボションカットを施すと、光が当たった際に猫の目のように見える「シャトヤンシー効果」を示すものがあります。
このシャトヤンシー効果が現れ、かつ変色性も示すクリソベリルは「アレキサンドライト・キャッツ・アイ」と呼ばれ、さらに希少性が高い宝石です。
その色味とカラーチェンジが魅力のアレキサンドライト。
緑と赤、光源で変わる色からは時間の流れも感じることができそうですね。
ひと味違う表情を見せてくれるアレキサンドライトですが、合成石も多く市場に出回っています。
合成とわかって購入するなら良いのですが、天然をお探しの際にはご注意ください。
POINT
- アレキサンドライトは五大宝石に数えられる「皇帝の宝石」
- 自然光下では緑、蛍光灯下では赤を示す「変色性」が特徴
- 合成か天然か、購入時には注意が必要
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。