コラム

【旅するジュエリー】宝石の採掘現場って?──スリランカのサファイア採掘を訪ねて

“旅するジュエリー”をコンセプトに展開するブランド、PETHICA(ペシカ)

バックパッカーとして世界50カ国を旅したデザイナーの旅の思い出、そこから生まれるジュエリーの物語を綴るコラムです。

今回は、ほとんど知ることのできない「宝石の採掘現場」。勇気あるデザイナーの貴重な体験記!

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「採掘現場をどうしてもどうしても見たいんです」

と、その時泊まっていた宿の人に、話してみる。

すると、「バルコニーから見えるよ、あそこよ。」と。

当時、ドキドキしながらも、日本人も一人もいないような田舎町、森の中にぽつんとある安宿へ行き、せっかくここまで来たのだから….という負けず嫌いなのか貧乏性なのか、根性を引っ張り出して、勇気を振り絞ってきいてみたのがこの会話でした。

そう。私はサファイアの有名なスリランカのとある村に行き、ついに採掘現場を見ることができたのです。今回はそんなストーリーをお届けします。

勇気で心がつながった。サファイア採掘の現場を探訪

バルコニーから見えたものの、森を下りてあそこまではどうやって行くのだろう?道ある?という風景だったので、不安になったのですが、親切な宿の人が「車で送っていってあげるから」と翌日連れていってくれたのです。
しかも、採掘場のオーナーと!!

採掘場のオーナーと、採掘現場で働く人々はやっぱり階級が違う雰囲気がしました。

車でそばまで行き、そこから数百メートル歩いて採掘現場まで近づく。
オーナーの案内のもと、近づくに連れて、現場の男たちは「あ、ボスが来た」みたいな空気が一瞬流れるのでした。(私の勘違いでなければ)

オーナーは採掘の権利を買っているのです。その権利は2年ごとに更新され、更新毎にお金が必要になります。そして採掘したい労働者を雇うのです。

リアルに見た・感じた、宝石の採掘という労働

採掘現場で働いているのは男性だけ。
女性が訪ねてきたことに不満もあるのか、私のことをジロジロと上から下まで見て、無言。本来は女性が入ってはいけないテリトリーのような印象を受けました。

私としては、邪魔をしてはいけないから「こんにちは」と最小限の挨拶とともに笑顔だけ作っていたのですが、彼らの視線はとても鋭く痛かったです。もしかしたら、もの珍しかっただけかもしれませんが。

でも、そりゃそうでしょう、ふんどし一枚で汗水流して働いている姿を、言葉も通じない小娘が好奇心むきだしで覗いてくるなんて、そりゃぁ嫌に決まっていますよね。
今思い返すと理解できるのですが、当時はそんなこと想像もしていなかったし、勇気と好奇心ばかりがあって他のことを考えられていなかったように思います。

炎天下の中、籠一つで土や泥をふるいにかける彼ら。

水も、かけごえかけながら、汲み渡していく姿。

初めて見た時は、太古へタイムスリップしてしまったかと思いました。こんなにも身体を使って採掘していると思っていなかったからです。もっと機械があるのかと思っていました。ある機械といえば、地底深くから水を組み上げるモーターのみです。それ以外はほぼ人力。

ただただ、あっけにとられ、命がけで働いている姿に感動しました。

こんなに過酷な労働で、一日中働いても、サファイアが出る時と出ない時があるそうです。なんて凄まじい世界!

採掘場の労働者とオーナーを結ぶもの

労働者は、サファイアを掘り出したら、オーナーに渡します。
それをオーナーが買い取って市場で売り、労働者に賃金が払われます。オーナーは採掘現場に毎日いるわけではありません。

では、掘り出たかどうかを、どうやって把握するのでしょう?小さな石ころみたいなものだから、ポケットに入れて盗むことなんて簡単にできます。

このことをオーナーに訪ねると、「信用でなりたっているんだよ」との一言。

採掘現場って、なんだか搾取したり搾取されたり、という良くないイメージもあったのですが、なんとなく、このオーナーの一言がとても温かみがあったのを覚えています。

それから、このオーナーは、自分もかつて若かりし頃は、現場での労働者だったそうです。
「お昼休みに、みんなでお弁当を食べて、歌ったり踊ったりするのが大好きなんだ。今でもたまに一緒に交じってするんだよ。」と話してくれました。

本当の現実は私が知る由もないですが、なんとなく、この現場は心が通い合ってるオーナーと労働者たち、信頼関係もきちんと存在しているんだろうな、と1日滞在してみて思ったのでした。

美しいサファイアも秘めている、宝石の価値の理由

スリランカ産のサファイアは世界中で人気です。昨今では、イギリスのキャサリン妃の婚約指輪となったことから、婚約指輪としてもメジャーな石となりました。大きさや色味、カラット数によって、お値段もピンキリです。

私もサファイアの作品を制作しますが、ひとつのサファイアが出来るまでの、過酷な労働、一連の作業をこの目で見てからは、価格の安さを求めなくなりました。

もちろんお客様にはリーズナブルにご提供したいと思いますが、美しいサファイアがそれだけのお値段するのにはワケがあるのです。

何人もの汗水流した努力が、一石に込められているのです。

宝石にはパワーがあると言われていますが、地球が生み出す奇跡と、それを見つけてこの世に生み出す奇跡、それが揃ってこそ美しさがあるのです。だから、そんなサファイアのジュエリーを身に着けると、心も美しくなれるのだと思います。

なかなか普通の観光でこの森の奥地まで訪れることは難しいと思いますが、少しでも訪れた気分になっていただけたら….。

 

【個展のお知らせ】

PETHICAが3日間限りの個展・オーダー販売会を開きます。サファイアのリングも揃います。デザイナーは毎日在廊予定。どなたさまも、ぜひ旅のお話とともに楽しみにいらしてくださいませ。

◆日時 ※個展は大型台風予報のため、10月から11月に日程変更させていただきました。

    11月2日(土)12時~20時

    11月3日(日)11時~20時

    11月4日(祝・月)11時~18時

◆場所:Gallery and shop山小屋

    東京都渋谷区恵比寿1-7-6 (恵比寿駅から徒歩3分です)

詳細はこちらをどうぞ→ PETHICA個展

 

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