この夏大ヒット上映中のアニメーション映画、「天気の子」(新海誠監督、2019年7月19日公開)。
「君の名は。」の新海誠監督の最新作で、公開18日で440万人を動員、興行成績60億円突破見込み(8月5日時点)と勢いが続いています。
この映画の中では、チョーカーと指輪が存在感のある小道具として使われています。
「天気の子」は、さまざまな考察ができる映画としても話題ですが、ジュエリー・アクセサリーの意味も改めて考えたくなる映画。
今回は夏休み特別編。通常のジュエリーやファッションの記事とはちょっと視点を変えて、私たちと装身具の関係を探ってみませんか。
映画「天気の子」におけるチョーカーと指輪、そして人間がジュエリー・アクセサリー(装身具)を身に着ける深い意味について考えてみたいと思います。
天から与えられた力の光と影。陽菜の「青い石のチョーカー」
映画「天気の子」とは
「天気の子」は、雨の降り続く2021年の東京を舞台に、自分たちの生き方を選ぼうとする少年少女の姿を描いた長編アニメーション映画です。
「見てくれた誰かと誰かの価値観と価値観がぶつかるような映画でなければいけない」。7月19日に公開された最新作『天気の子』について、新海誠監督にインタビューしました。#新海誠 #天気の子 #エンタメ #nikkeistyle @tenkinoko_moviehttps://t.co/tA3LoK7dFZ
— NIKKEI STYLE (@nikkeistyle) August 6, 2019
チョーカーの意味とは
特別な能力を持つ「晴れ女」の少女・陽菜(ひな)。青い石のチャームがついたチョーカーを身に着けています。
ティアドロップ、しずく型とも言われるペアシェイプの青い石は、雨のしずくや天気、自然の象徴だと感じられます。
青い石は陽菜の母親がブレスレットとしてつけていた、言わば形見の石でした。母からのお守りでもあり「受け継がれる能力」という意味もありそうです。
この石をチョーカーとして身に着ける陽菜は、いっぽうその能力で自分を犠牲にしていくことになります。
チョーカーという名前の意味は、「息をふさぐもの」。視覚的にも首を絞める位置を示すチョーカーは、運命の呪縛を感じさせるアイテムのようにも見えます。
「天賦の才」と言うように、人間の能力は天から与えられたものですが、時にそれが苦悩の元となることもありますよね。
まだ映画を観ていない方は、このチョーカーが最後どうなるのかにも注目してみてくださいね。
【参考記事】「ネックレス」「ペンダント」の違いとは?さらに「チョーカー」との違いは?
指輪だけが残される。帆高と須賀の「指輪」
二人の登場人物にとって重要なモチーフ「指輪」
「天気の子」でもう一つ象徴的だったアクセサリーが指輪です。
主人公の少年・帆高(ほだか)。彼が陽菜の誕生日プレゼントに贈る可愛らしい指輪とその後の展開もドラマティックですが、全編を通して印象的だったのが、帆高と関わる男・須賀(すが)の指輪。
須賀は指輪を重ねづけしていて、物語が進むと、その1つは亡くなった妻の指輪なのだとわかります。これも形見、受け継がれた存在です。
須賀の指輪は事あるごとにクローズアップされます。世慣れた大人として生きる須賀の、心の奥の真実がそこにあるかのように。
帆高の指輪と須賀の指輪は、二人の共通点、二重写しの心を描いているようでした。
自分の存在と他者の存在を確かめ合い、それを繋ぐモチーフ。
互いに交わすことができ、肌身離さず身に着けられ、見て触れられ、劣化しない。そして大切な人を喪ってなお、その存在を形として自分の手で感じ取れる…これは指輪ならではの特性です。
「お互いの存在」「愛」のもっとも適切な形が「指輪」なのかもしれません。
ジュエリー・アクセサリーの意味。なぜ人は「装身」するの?
人類の歴史は装身具の歴史。装身具を身に着ける2つの理由とは。
「天気の子」はさまざまな感情を呼び覚まされる映画で、ジュエリー・アクセサリーの意味についても考察したくなる内容でした。
そもそも、人間はどうしてジュエリーやアクセサリーを身につけるのでしょうか?
さまざまな遺跡や出土品から、人間は古来から装身具を身につけていたことがわかっています。
「ジュエリーの世界史」(山口遼 著)によると、その根源として2つの理由が考えられています。
1つは「お守り」。
未知なるものへの恐れに対してのお守りとしての意味。
世界や自然の驚異に圧倒され、畏怖した人間は、その一部を身に着けることで自然のパワーを感じとったり、身体や心を守る依りどころとしたのです。
もう1つは「アイデンティティー」。
人間は「自分らしくありたい」と「誰かと一緒にいたい、周囲に合わせたい」という矛盾した願望を抱えていると考えられています。
それを表すため、大きな部分では仲間と同じ品物を身に着け、小さな部分では自分なりの個性を出そうとしたという考察です。
(また人間は本質的に美的表現をする感覚を備えている、という点もあげられ、その後身分や階層の区分といった要素が加わっていきます。)
現代にもつながる、ジュエリー・アクセサリーの根源的な意味
現代の私たちはどうでしょうか?
文明は進歩しましたが、私たちの心の奥にも、装身具について古代の人々と変わらない感覚が息づいていると感じる方もおられるのではないでしょうか。
「天気の子」のチョーカーや指輪の意味とも繋がる部分がありそうです。
世界の圧倒的な大きさ、その中を生きる自分の存在と、大切な人の存在を、形にしてとらえる装身具。
アニメーションで視覚的な絵として表現されることで、ジュエリー・アクセサリーの「意味」としての存在感が際立つ点も興味深いですね。
POINT
- 「天気の子」はジュエリー・アクセサリーについても考察できる映画
- 青い石のチョーカー、指輪、それぞれの意味を考えてみよう
- 古来から装身具を身に着けていた人間。「お守り」「アイデンティティ」…根源的な意味がある
映画は雨や光といった自然現象の表現や、東京のリアルな風景も圧巻の映像美。
ストーリーは大人が見るとまたさまざまな感想を抱くと思います。
ジュエリー・アクセサリーの意味を模索したい大人も、この夏「天気の子」観てみてくださいね!
ちなみに「天気の子」の英語の副題はWeathering With You。これは「あなたと共に困難を乗り越える」という意味がこめられているそうです。
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。