マーケティングを猫との会話で気軽に学ぶシリーズ、第9回です。
前回、美しいマーケティングという視点で、自分のブランドを統一感をもって提案し始めたユイさん。少しずつ、ブランドのファンが付いてきているのを感じています。
そんな中、ちょっとまた悩みが…。ちょうど路地裏を通りかかったいつもの猫に、声をかけてみました。
「猫さん。これまで学んできたことって、基本的に新しいブランドを始める時とても必要だと思うんですけど…その先ってどうすればいいんでしょう?」
猫は首をかしげて言いました。
『先、と言うと…お客様を繋ぎとめるには、といった話でしょうか?』
「そうそう、それです!うちの店に興味を持って来てくれた方に、その後何もできていなくて…何かしたほうがいいでしょうか?」
空間の軸と時間の軸…顧客生涯価値とは?
『そうですねえ。まずこの世界って、空間と時間でできているらしいですね。猫にはよくわかりませんが』
いきなり壮大な話になったので、ユイさんはちょっと返事ができません。たしかに、空間と時間…その中に生きているけれど?
『空間、つまり世界を<いま>あるいは<この世の中の、とあるマーケット>という横軸で切った場合。どの程度のビジネスをしているか、というのはシェア、市場占有率という言葉で表されます』
「シェア…業界内のシェアの奪い合い、といった話ですよね」
『はい。ユイさんのジュエリーが昨年より売れているということは、ジュエリー市場で売り上げシェアを伸ばしたという表現にもなります』
「0.0001%くらいですけど…」
『いっぽうで、時間、つまり世界を<常に流れる時間>という縦軸で切った場合。ひとりの人間あるいは1世帯の生活、人生を想像してみてください。その人は、人生の中でいつジュエリーと関わるでしょうか?』
「例えば…誕生日?就職して、ボーナスが入った時?婚約する時?…」
『そこで見えてくる価値についての考え方が、ライフタイムバリュー(LTV)、顧客生涯価値です』
LTVを意識すると、顧客対応も変わってくる
- LTV=ライフタイムバリュー(Life Time Value)=顧客生涯価値
- 顧客生涯価値=ある顧客が生涯を通じてある企業にもたらす価値
『まあ実際には生涯全部というより、ある一定の期間(顧客登録をしてから退会するまでなど)を見てLTVを測ることが多いのですけど』
「お客様の価値を測る…って、なかなかシビアな話ですね」
『もともとLTVは、通信販売などダイレクトマーケティングの視点から生まれた考えです。顧客情報を把握して年齢や生活ステージの変化に合わせて提案をしていこうという発想です。基本的な算出方法もあります』
- LTV=平均購買単価×購買頻度×継続購買期間
「なるほど…データと計算、また私の苦手な感じになってきました」
『そこまで厳密に数値分析するかどうかは、経営者の考え次第ですので。それより大切なのは時間という軸、LTVという視点を意識することです』
「そうですね。視点を学ぼう」
ビジネスを継続させていく2つの方法とは?
『このシェアとLTVという考え方は、ビジネスを継続させていく2通りの視点でもあります』
「継続したいです!…継続のための2通りって?」
- より多くの人に購入してもらう。
- 一人の人に何回も購入してもらう。
『人数を増やすか、回数を増やすか。大きくはこの2つの方法だと思いませんか?もちろんこの中で、アイテムを増やす、価値=単価を上げるといった方策を組み合わせるわけですが』
「…たしかに!」
『よりたくさんの誰かと新たに出会って、価値を伝えたい場合は、広告などのマスコミュニケーションを活用します。今ならWebサイトやSNSの発信なども有効ですね。一方で特定の誰かの人生の変化も考えながら、価値を伝え、語りかけるには、顧客リストの整備やリピートのためのタイミングの良い提案力が大切になります』
「うちはまだまだ小さなお店だから、どっちも大切ですね。一度気に入って購入してくださった方へのアプローチも前向きに考えます。やることがいっぱいだけど、新規顧客とリピーターになってくださる方の両方を意識して、バランスを取りながら発信し続けしていくことが大事なんですね」
『WebサイトやSNSの力もうまく活用しながら、お誕生日や記念日にアプローチをして店頭イベントなどリアルで再び触れ合う機会を作るといいのではないでしょうか。…実際、私もここに何度となく来ているわけだし』
ユイさんははっとしました。猫さんこそ、最大のリピーター!
「いつもご来店、ありがとうございます!」
POINT
- LTVとは、顧客生涯価値のこと
- 空間軸=シェア、時間軸=LTVの2つの視点を持ってみよう
- 新規顧客だけでなくリピーター顧客への発信も意識しよう
「小さなブランド・お店のマーケティング物語」は月1回連載予定です。次回もお楽しみに!
※2018年の記事公開は本日で最終です。2019年もよろしくお願いいたします。
Text by officenovel
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。