マーケティングを猫との会話で気軽に学ぶシリーズ・第8回です。
前回からマーケティング戦略の中でも大切な4P(と4C)について学んでいるユイさん。小さいお店だからこそ、4Pを自分で考えて実施できる…引き続き、不思議な猫と話し込みます。
「それで、4P戦略を立てるポイントって何でしょうか?」
『ひとつづつ、分解していきましょう。要素をひとつひとつ考えて、またまとめる。ジュエリーをデザインするようなものですね』
戦略に必要な4つの要素を順番に考えよう
【4Pとは】
- Product 製品 (何を売るのか)
- Price 価格 (いくらで売るのか)
- Place 流通 (どこで売るのか)
- Promotion 販促 (どのように知ってもらうか)
Product 製品 (何を売るのか)= Customer Value 顧客価値
「これは、私の得意なところです。良い石を選んで、指輪がいいかペンダントにするか…ですよね」
『マーケティング的には、製品を商品にする、お客様の欲しいものにするという視点が大事です。顧客にとっての価値あるものかどうか』
「誰が買うのか…狙っているお客様の特長やニーズにマッチした商品…」
『Productは、販売するモノだけと考えなくていいんですよ。例えばクリスマス用の期間限定パッケージにする。アフターサービスをする。そういったこともProductです』
「そうか。何となく、メーカーやブランドだけの視点かと思ってしまうけれど、仕入れて販売するだけの人でもProduct戦略は考えられるってことでしょうか?」
『セットで販売する、わかりやすいモデルにして便利なサービスを考えるなど、Product戦略はどんな立場の方でもいろいろ考えられますね』
Price 価格 (いくらで売るのか) =Cost 顧客にとっての経費
「価格を戦略的に考えるって、どういう意味でしょう」
『ジュエリーやアクセサリーの場合、地金の相場など価格を判断する材料が多いですよね。でもその上で繊細に値決めを考えることは、とても重要なのです』
「私の場合、見た目に対して少しお得、お値打ち!と思ってもらえる価格帯がやっぱり売れます」
『難しいのは、お値打ちが激安になってしまうと、瞬間的には売れたとしても結果利益が出なかったり、長い目でブランドの価値を下げたりします。また高いか安いかという心理は、人によって、時代によって、場所によっても大きく変わるものなのです』
「彼女に指輪をプレゼントするとき、激安品だったら嫌われてしまうのか、しっかり者と思われるのか、彼女のタイプによっても違いますよね」
『今の時代は検索で価格比較もできますので、法外な価格というものは設定しづらいです。ただ、ある程度のレンジの中であっても、価格すなわち商品の価値づけとは非常に注意深く考えていく必要がある要素ですね』
「そういう風に価格を考えるという視点だけでも大事なんだなあ」
『また、次の項目につながりますが、価格の内訳も考える必要があります』
Place 流通 (どこで売るのか)=Convenience 顧客の利便性
「場所…といえば、お店?ネット?」
『ITの進歩で、どんなお店もオンラインショップを持てる時代になりました。これは自宅まで届くという物流の進化も含め、まさに流通戦略、顧客の利便性をアップさせた戦略でしょうね』
「ポップアップショップに出展したり、人の集まるカフェに置いてもらったり…販売代行者を探すことも流通戦略ですよね。そうか、さっきの価格決めとも密接な関係がありますね!』
『はい。小売価格だけを考えるのではなく、卸したらどうなるのか、場所代を考えたらどうなるのか…流通戦略は価格の内訳と密接な関係があります』
「私はモノにばかり気持ちが行きがちだけど、とっても大事なところですね」
『流通とは、<商いの流れ>です。最近はオンライン、リアル、多彩な流通ルートがありますから、この流れを知ったり開拓していくのは重要ですね。今、小さなお店が勉強するとオンラインショップの話ばかり出てくるかと思いますが、リアルでも考えられる戦略はいろいろありますよ」
Promotion 販促 (どのように知ってもらうか)=Communication 顧客とのコミュニケーション
「このPromotionがマーケティング戦略かと思っていたけど、こう考えてくると、販促とか宣伝は本当に一部だし、最後なんですね」
『はい。市場や顧客を分析し、商品や価格や流通といった要素の戦略を考え、はじめて最適なプロモーション戦略が立てられるのです』
「前回、売るぞ~感が強いプロモーションよりコミュニケーションの方が今どきに合っている気がする…って話しましたけど、その方向はいいのかな?」
『ええ。例えばSNSでの小まめでパーソナルな発信は、低コストな点も含め、小さいお店やブランドにはとても有意義なプロモーション戦略方法のひとつですね』
美しいマーケティング戦略のデザインとは?
夢中になって話しているユイさんを、猫は優しく見つめました。
『さて、4Pの戦略を考え、まとめて実行していく際にも重要なポイントがあります。』
「何でしょう?」
『その戦略は美しいか、ということです』
ユイさんは少しびっくりしました。ずっと固い話をしてきたつもりが、美しい…とは?
『例えば、高価な色石を使ったジュエリーが、汚いお店で激安シールを貼られて売っていたらどう思いますか?』
「…ちょっとがっかりするし、本物じゃないのかもと思うし、そこで買うのは心配かも」
『商品戦略と価格戦略がガタガタで不安になりますよね。商品と価格と流通、そしてプロモーションの見え方がバランスがとれていて美しいか…言い方を変えれば、どこをとっても狙っている顧客が惹きつけられるような魅力があるか。この総合力、統一感が実はけっこう重要なのです』
「…それって、ジュエリーデザインと同じなのかも…あ、最初に言ってましたね!」
『はい。高級でステータス感のある美しさ、素朴で作家性の高い美しさ、手軽でポップな美しさ…方向性はいろいろあってよいのですが、マーケティング戦略もデザインしてみてください。それによって商品から売り方、SNSの文体まで全部変わってくるのです。個人や小さな組織で行う方が、バランスを崩さず美しい戦略が実行できます』
ユイさんは大きくうなずきました。勉強し続けて、最後に自分の知る世界に戻ってきたような気がしています。
POINT
- 4PのProductは、モノだけではなくサービスなど広く含めた「顧客価値」
- PriceとPlaceには深い関係がある。PromotionはCommunicationを意識しよう
- 総合的なマーケティング戦略を美しくデザインしよう
「小さなブランド・お店のマーケティング物語」は月1回連載予定です。次回もお楽しみに!
Text by officenovel
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。