マーケティング

小さなブランド&お店のマーケティング物語 第6回:STPとは?

マーケティングを会話形式で気軽に学ぶシリーズ・第6回です。
ジュエリーショップを経営するユイさん、今日は自社のデータとにらめっこ。そこへいつもの猫が現れました。ユイさんは猫に聞きたいことがあるようです。

「…うちの場合、ご来店の方とWebサイトからの問い合わせ、お客様のタイプがいろいろいるような気がするんですよね。それぞれに対応しているといつも慌ただしくて…どうしたらいいのかな」

『それはいいところに気づきましたね』

猫は、ユイさんを見つめました。

「誰か」にもいろいろなタイプがある?そしてSTPって何?

『一番最初に、マーケティングとは<誰か>の気持ちや立場に立って考えること、という話をしたのを覚えていますか』

「はい、だいぶ意識するようになりました」

『その<誰か>にも、いろいろな人がいますよね。性別や年齢はもちろん、属性やキャラクターが違う。当然、欲しいものや必要なものも違う』

「そうなんですよ」

『…さて、ちょっとまた勉強してみましょうか。STPって、聞いたことありますか?フィリップ・コトラー博士が提唱したマーケティングの手法の一つです』

STP?ユイさんはちょっと身構えました。横文字を聞くと苦手意識が出てしまうのです。

STPとは?

  • S Segmentation セグメンテーション(市場の細分化)
  • T Targeting ターゲティング(狙う市場セグメントの決定)
  • P Positioning ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)

猫はユイさんの顔を見て、やれやれといった表情を浮かべました。

『難しく考えすぎですよ。市場を切り分ける、狙いを定める、それに対して自分の立ち位置を明確にする、この流れを英語で言っているだけです。それにSTPは、ユイさんのような小さな組織が伸びるためにもヒントになるマーケティング手法です』

「本当に?」

ユイさん、ちょっとSTPのことが気になりはじめたようです。

STP・3つのステップとは?

『STPは、マーケティングの基本戦略とも言えますね。広い世界でいろいろな声に振り回されて走り回るのではなく、自分の側から線を引いて仕切り、勝てるフィールドを作っていくというイメージです』

  • S:セグメンテーション…市場を切り分ける

『まず、市場を分類、セグメント化してみましょう。セグメントとは分割された一つの要素、かたまりといった意味です。人々の特長やニーズごとに切り分けてグループ化してみましょう』

「どうやって分ければ?」

『年齢、性別、地理的条件、仕事や趣味、収入、日頃の行動パターンや価値観など…複数の切り口で軸をつくると分類しやすいです』

「例えば、年代と生活状況はどうでしょう。ブライダルと自分のためのジュエリーでは買う目的や欲しいものが違いますよね」

『良いと思います。他の人や競合が気づいていない、独自の切り口を探すことも重要です。さまざまな調査データも活用してみましょう』

  • T:ターゲティング…狙いを定める

『さっき切り分けたセグメントの中で、自分が参入すべき市場を決めるのがターゲティングです』

「…ターゲットは標的、的(まと)ですよね。的を絞る感じですね」

『はい。特に、ニッチ(隙間)マーケットと呼ばれる、大手では入りこめない特定の市場セグメントや、潜在的ニーズはあるのにまだ誰も手を出していない市場セグメントなどに注目すると、小さい組織ほど身軽さや機動力を生かせます。その市場セグメントにある程度の成長性があるかも考えながら、フォーカスしていきます』

「なるほど。狙いたいお客様のタイプを、自分から決めていくということか…」

『より深堀りするには、ペルソナ設定という、かなり具体的な<誰か>=仮の人物像を設定する方法もあります。名前をつけ、家族構成・生活パターンや悩みなどを具体的にあげていく方法です』

  • P:ポジショニング…立ち位置を明確化する

『さて決めたセグメントに対して、今度は自分がどんな良い価値、お客様の利益(ベネフィット)を提案できるかを考えていきましょう。他とは違う点を打ち出したいですよね』

「ポジショニングとは?」

『狙いのお客様たちは、主にどんな行動をとり、その時ユイさんのお店とどこを比較するでしょうか?ポジショニングマップなどを作り、自分と他のライバルの位置づけ、何が自分の強みや個性なのか、何を強調すればいいかを考えていきます』

「3C分析からさらに、特定の<誰か>に向けて、自分の特長を際立たせるんですね」

『小さい組織は、独自の切り口で見出した市場セグメントに対して、他と差別化できる<刺さる提案>をしていくことが成長のきっかけとなりえます。ポジショニングはそのためのフレームワークです』

ユイさんは腕組みをしました。狙いたい特定のお客様のタイプ、お店のコンセプトをもっとブラッシュアップしてその層に伝わるようにするには…いろいろと考え出したのです。そんな様子を、猫はちょっと頼もしそうに見上げました。

『さまざまなお客様に育てていただくという意識も大切ですが、こちらから特定の市場やお客様層を育てていく意識を持つと提案力が高まりますよ。STPの考え方を活用してみてください』

「がんばってみます!」

POINT

  • STPは、マーケティング基本戦略のひとつ
  • S=市場を切り分ける・T=狙いを定める・P=立ち位置を明確化する
  • 小さな組織はSTPの手法活用が成長への一歩(個猫的見解)

「小さなブランド・お店のマーケティング物語」は月1回連載予定です。次回もお楽しみに!

Text by officenovel