ヒカリモノガタリ読者の皆様の中には、ジュエリーやアクセサリーの制作や販売に関わる方もおられると思います。今の時代、どうやって売っていけばいいのか…とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今月から「小さなブランド&お店のマーケティング物語」をスタートします。ちょっと気になるマーケティングのことについて、わかりやすくお話します。
物語の舞台ははとある町、小さなジュエリーショップのユイさんが主人公です。ある日、お店の前に不思議な猫がやってきました。
『今、なかなか人が来ないなあ、売れないなあ、と思っていますね。』
「?!この猫、私の心に話しかけてる?」
びっくりしているうちに、猫はお店の中に入ってきました。
『ふうん。ここは路地裏ですが、なかなか素敵なお店ですね。気に入りました』
「不思議だけど、話してみよう。私はユイ。この小さなお店で自作のジュエリーを売っています。でも、なかなか商品が売れなくて悩んでいるんです。どうすれば売れるようになりますか?」
『そうですね…今、あなたは、誰を主語にしていますか?』
主語は誰なのか?
「主語?」
『ユイさんは<私が、誰かに、ジュエリーを売る。>という風に考えています。頭を切り替えて、主語を変えてみましょう』
売れないことで頭がいっぱいになっていたユイさん。ちょっと考えてみました。
「<誰かが、私から、ジュエリーを、買う。>…ですか」
『そうですね。自分という枠から飛び出して、猫にでもなったつもりで、誰かについて想像してみてください』
- 誰か は どんな人?
- 誰か は 今何が欲しい、あるいは必要なのか?
- 誰か は どんな夢や未来を描いているか?何か悩みはないか?
- 誰か は そんな時どんな行動をとるのか?
「誰かの気持ちや立場に立って考える…」
『そう。それが、マーケティングの第一歩です。』
マーケティングとは愛?
「マーケティング!マーケティングって、私、なんだか難しくて苦手で。それに…ちょっとうさんくさいイメージがあるんです」
実はユイさん、マーケティング会社の営業メールに悩まされていたので、ついそんな言い方をしてしまいました。
『マーケティングという言葉は、とても広い概念ですからね。人間はそういう大きな意味合いを言葉にするから面白い。そうだなあ…「愛」という言葉と、よく似ています。』
「マーケティングと、愛が、似てる?」
『はい。私=売る側と誰か=買う側は、価値を交換するという意味では本来対等です。そこで誰かの立場に立って、役に立つものを作ったり、わかりやすく買いやすくなるよう手助けする。これって愛、愛ある行為でしょう?』
「そう…かも」
『ただ愛情の表しかたは皆それぞれ違います。よく知らない人から急に愛を押し付けられたら、ストーカーみたいで迷惑ですよね?さらに、愛という言葉を使って相手をだます人間もいるかもしれません。大きな意味合いの言葉は、いろいろと便利に使われてしまうところがあるようです』
「そうか、なるほど…つまり、問題は言葉ではないと。」
『言葉を使う人間の側の問題ですね。』
「いい感じか迷惑か、誠実であるかそうでないか、全部使う人間次第なんだ。」
ユイさんは、考え込みました。
マーケティングの定義とは。
「じゃあ、そもそもマーケティングって何なの?」
『広い概念を、言葉で定義するとこのような形になるようです。』
マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。(日本マーケティング協会 1990年)
『短く定義している本ですと、例えば<売れる仕組みを創ること><価値交換のプロセス>などと書かれていますね』
「言葉の定義って、難しいんだね…」
ユイさんがため息をつくと、猫は、お店の出窓に駆け上り、窓の向こうを見つめました。
『私は、この世の中が好きです。とても興味深い。この路地裏も、表通りも、港の魚市場も』
「世の中…市場…そういえば、マーケティングって、マーケット+ing だ。」
『マーケットとは市場。人間が生活や取引をしている世の中です。常にうごめき、変わっていく。猫には計り知れないほど、とても複雑で、生き生きと』
ユイさんも想像してみました。言葉ではなく、リアルな、世の中を。たくさんの誰かが毎日思いを抱きながら暮らしている世の中を。
『その変化の中で、誰か=買う側、お客様の気持ちや立場に立って、商品、その伝え方や伝える仕組みを考え、実行し、価値を創造していく。…私が考えるマーケティングとは、そんなところでしょうか。』
「ちょっとだけ、イメージがわいてきたかも…。勉強が苦手だった私でも、何かできますか?」
『はい。マーケティングは考え、実行し、また考える、この繰り返しですから。机上の学問とは少し違います。チャレンジ精神や行動力が大切です』
「Marketingって、現在進行形ですもんね」
POINT
- 自分目線ではなく、誰か=買う側、お客様を主語にして考えてみよう
- マーケティングは愛と似ている
- マーケティングとは、変化する世の中において、誰かの気持ちや立場に立ち、商品や伝え方・伝える仕組みを考え、実行し、価値を創造していくこと(個猫的見解)
「小さなブランド・お店のマーケティング物語」は月1回連載予定です。次回もお楽しみに!
Text by officenovel
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マーケティングディレクター、ジュエリーに詳しいライター、女性メディアライター、ジュエリーデザイナーなどによる専門チーム。